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最弱ゴブリンは気がつかない [工事中]  作者: しゃぼてん
4章は、これから書き直す予定です
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4-46 ウェスタ

 プップが向いている方向にむかって歩いていたら、おれたちは、じきにチョコボルの森を抜けてしまった。

「森から出ちゃったっす。やっぱプップはなにも知らなかったんすかね?」

と、おれが言うと、リーヌは、おれの頭上のプップを見て断言した。

「んなことねぇ。この顔を見ろよ。すべて知ってる顔だぜ」

 プップは、いつでも頭の中からっぽそうな顔だと思うんだけど。


 シャバーはプップの向いている方向を見ながら言った。

「森を抜けて、別の場所に行ったのかもしれない。この先には、ウェスタ町があるはずだ」

「なーんだ。町で遊んでて、おそくなっちゃっただけっすか。じゃ、心配することなかったっすね」

と、おれは言った。

 でも、シャバーの表情はけわしい。

「いや、町の方が危ない。ウェスタの人間は、俺達、ミンナノハウスの人間を嫌っているんだ」

「え? なんで?」

と、おれがきくと、シャバーは言った。

「ミンナノハウスにいる子どもは、ウェスタの人間から見れば、怪物みたいな存在だ」

「ふつうの子ども達だったっすけど?」

 おれをプロレスの練習台にしてた悪ガキ以外は、みんないい子たちだったけど。


 シャバーは険しい表情で言った。

「ああ。みんな、ふつうの子どもだ。だが、ウェスタの人間は、あいつらをふつうだと思わない。ミンナノハウスにいるのは、亜人や魔族との混血、特別な力を持つ者、めずらしい特徴を持つ者、ウェスタの人間から見て、ふつうじゃない子どもばかりだ」

 言われてみれば、やたらと犬歯が長い子とか、角がはえてる子や、皮膚がウロコな子もいたような。でも、「ここ、異世界だから、こんなもんだろ」って、おれは思ってたんだよな。だって、全身メタルな羊がいる世界だし。

 シャバーは続けた。

「だから、ハウスはあんなへんぴな場所にあるのさ。最初はウェスタの近くにあったのが、追いやられたんだ」

 それから、シャバーは、付け足すように、おれに忠告した。

「亜人や人型モンスターも、ひどく嫌われる。おまえが歩いていたら、殺されるぞ。人並みの心をもってようが、友好的だろうが、あいつらは、容赦しないからな」

「こわっ! ゴブリン差別はんたーい!」

と、おれが言ってると、シャバーは言った。

「ちょっと行けば、亜人が多い町もある。ヒガシャ町なら、おまえみたいに、丸くてでかい頭のやつだって、歓迎してくれるさ」

 おれの頭は、丸いけど、でかくはない。丸くてでかいのは、もちろん、プップの全身だ。


 そして、シャバーは説明を続けた。

「パスコルはウサギみたいな耳がはえている。アリスは、見た目はふつうの人間とかわらないが、魔族とのハーフだ。ロビーは、突然変異で赤ん坊の頃から宙に浮いて漂っていたから、気味悪がられて捨てられた。小さな町だ。あいつらの顔を知ってるやつだっている。ウェスタに行ったんなら、見つかって、トラブルになったのかもしれない」

「じゃ、早く行こうぜ。ガキどもを救出しねぇと」

と、リーヌは即断した。


 それから、たぶん15分くらいで、おれ達はウェスタ町のはずれについた。

 ウェスタは、なんだか、西部劇っぽい、古き良きアメリカ風な町だった。

 ちょっと町の中に入って観光してみたい感じだけど。でも、人間以外が町に入ると大変なことになるらしいから、おれとリーヌは、町のはずれの廃屋のかげで待っていることにした。

 今のおれは、テイマーの仲間モンスターっていう言い訳すら、きかないからな。

 なんてったって、その自称・テイマーが、カエルだから。


 さて、ホブミは、町の中に入るために、呪文を唱え、人間の姿になった。

 人間になったんだけど、メガネとメイド服はそのままだった。

 つまり。ブサかわいいメイドゴブリンがいた場所に、突然、ガチにかわいいロリ巨乳メガネっ娘メイドが出現したのだ!

 ギャップが激しいもんだから、もう、モエモエキュン死レベルの衝撃だった!

 しかも、このメイド、どことなく、色っぽい。おもわず、ムヒヒな妄想炸裂しそうな色っぽさ。ムヒヒッ。

 でも、ホブミだからな。

 ホブミは、どこからか出したフライパンを手に、おれにむかって、メイドスマイルでにこやかに言った。

「それ以上、1秒でも、いやらしい目でこちらを見たら、その目を目玉焼きにしますよ」

「ギャーーー! そんなグロい目玉焼き、許されるかー! 恐怖のホラーメイドカフェでもやる気かーー!」


 おれがそう叫んで逃げようとしたその時、なぜか、おれのまわりの地面に、たくさん白いたまごがあらわれた。そして、カパッと割れては、おいしそうな目玉焼きになっていった。……怪奇現象だ。

 シャバーが言った。

「メダマヤキ茸がたくさん生えているな。今まで、気がつかなかったが。毒キノコだから、気をつけろよ」

 どうやらこれは、たまごみたいなキノコらしい。

 今はまるで、お花畑のように、おれの周囲一面に、目玉焼きにしか見えないキノコが生えている。さっきまで何もなかったのに。

「美しい光景ですね。めずらしいメダマヤキ茸がこんなに。触れるだけで火傷をしますから。メダマヤキに焼かれてしまってください」

と、美少女メイドなホブミが笑顔で言った。

「そんなに強烈な毒なの!? 足の踏み場もないんだけど!? なぜか、おれのまわりだけ!」

「自業自得の天罰です」

と、ホブミは涼し気に言った。

「まさか、これ、ホブミの魔法なのか?」

「私に、あらゆる法則をねじ曲げ自然現象を操るほどの天才的な魔法は使えません。私は、しがないサポート特化型の賢者ですから。ああ、美しい奇跡です」

 ホブミが、うっとりと言うのを聞いて、おれは、リーヌを見た。

「てことは、これ、プリケロさんのいたずらっすか?」

 遠くを眺めて口笛を吹いていたリーヌは、そっぽを向いたまま、言った。

「あん? なんで、アタイが、んなことしなきゃなんねーんだよ」

 うーん。なぞだ。



 さて、シャバーとホブミだけが、町の中に入っていって、5分くらいがたった。

 リーヌは、つまらなさそうに、ぶらぶら歩きまわっている。

「あー。ひまだなー。ひますぎてマヒマヒー」

と、つぶやきながら。

 早くも、リーヌは、待つのにあきたらしい。

「プリケロさん、そんなにうろうろしてちゃ、誰かに見つかっちゃうっす」

 リーヌは、ぼーっと、目の前の廃屋をながめた。

「あー。ひまだなー。こんな家とか、ぶっとばしちゃっていいんじゃねーか? ひつまぶしみてーに、細かくしといたほうが、うまそうだろ」

「なにその危ないひまつぶし、ってか、ひつまぶし!? ひまだからって、破壊しちゃ、だめっす! まぁ、持ち主にとっては、解体費用の節約になるから、それもひとつの親切かもしれないっすけど。おれたちが、かくれるところがなくなっちゃうんすから」


 リーヌは口をとがらせた。

「だって待ってんの、つまんないんだもーん。もう行っちゃおうぜ? 堂々と行けば、きっと、だいじょうだぜ」

「いや、堂々と行ったら、なおさらだめじゃないっすか? おれたち、どっからどう見ても、ふつうの人間じゃないんだから。プリケロさんは、完全にカエル人間だし、おれは……ナゾの生物を頭にのせたゴブリンだし」

 でも、リーヌは、いつも通り、おれの言うことなんて聞いていない。

「よし、行こう。今、行こう」

「ちょっと。プリケロさん? ほんとに行くんすかー?」

 プリケロは、堂々と、町に歩いて入っていった。しかたがないので、おれも堂々と、後をついていった。

「おれは、人間だ。どこからどう見ても、人間だ」

と、つぶやきながら。


 その結果。

 ぜんっぜん、だいじょうぶじゃなかった!

 約3分後。おれ達は、町の人たちの絶叫の中にいた。町は、大パニック状態だ。

 たかがカエル人間と変種ゴブリンが入ってきただけで、こんなになるんだな。

 まるで大怪獣か怪人が攻めてきたかのような反応だ。まぁ、おれたち、見た目、怪人っぽいし、リーヌの破壊力は怪獣並みだけど。

 リーヌはおれに振り返って、言った。

「ほら、だいじょうぶだろ?」

「ぜんっぜん、だいじょうぶじゃないっす! みんなホラームービーみたいな叫び声あげて逃げていくっす。そして、なんか、ぶっそうな銃をもってこっち狙ってる人達がーーー! ギャーーー――! プリケロさんは撃たれてもだいじょうぶだけど、おれは死ぬーっ! 今は、蘇生魔法使えるホブミもいないんだからーー! 殺されるーーー! 本当に殺されるーーーー!」

 銃声がとどろき、おれは、恐怖でパニックになって、走りだした。

「おい、ゴブヒコ、どこ行くんだよ?」

という声が、後ろから聞こえていたけど、パニックになったおれは、銃声が鳴り響く中、とにかく走って逃げた。


 そして、たぶん10分後くらい。おれは、ひとり……正確にはプップと二匹で、物置小屋みたいなとこにかくれていた。

 何も考えずに、というか考えるよゆうもなく、ここまで逃げてきたおれは、今、猛烈にあせっていた。

(まずいぞ。敵陣まっただ中で、リーヌと、はぐれちゃったぞ)

 おれは、今、この町のどこか、たぶん、町の真ん中あたりにいるのだ。

 おれを見たら、銃で撃ち殺そうとする人間たちのただ中に。

 激弱で、なんのスキルも魔法もない、おれが、たったひとり。

 しかも、この世界、RPG風ゲーム仕様だから、たぶん、腕とか足にかすっただけで、一定のダメージを受けるだろう。

 ふつうのゲームの主人公だったら、「銃で撃たれまくってんのに、ちょっとしかダメージ受けてないぞ。こいつら、すごすぎ。非現実的だなー」って状態になるんだけど。

 やたらと防御力が低くて最大HPが少ないおれは、きっと、非現実的に、ちょっと腕にかすっただけで、死ぬ!

 つまり、見つかったら、ほぼ死亡確定。

 そんな条件で、おれは、どうにかして、自力でこの町から脱出しなきゃいけない。

 突然、超高難度ステルス脱出ゲームになってしまった。

 おれ、メタギアとか、わりと苦手なんだよな。

 こんな脱出ゲーム、もうムリゲーだぞ。どうしよう……。


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