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最弱ゴブリンは気がつかない [工事中]  作者: しゃぼてん
4章は、これから書き直す予定です
102/170

4-41 プリンセス

 シャバーのいる孤児院をめざして荒野を歩きながら、おれは、ふと気がついた。

「そういえば、見た目からはバレなくなったっすけど、リーヌさんの名前をよんだら、たぶん、正体がバレちゃうっすね」

「じゃ、偽名をつかおう」

と、リーヌは言った。

「ケロケロリーヌとか?」

と、おれが提案すると、リーヌは口をとがらせて文句を言った。

「もっとかわいいのがいいー。もっとプリンセスっぽいのー」

「プリンセス・ケロケロリーヌ?」

と、おれは、すんごい安直な提案をしてみた。「プリンセスつければ、いいってもんじゃないだろー」と心の中で自分につっこみながら。

「うむ。バッチリ、プリンセスだな」

と、リーヌは満足げにうなずいた。

 プリンセスつければ、よかったらしい。


「でも、プリンセス・ケロケロリーヌって、長すぎるっす。略してプリケロでいいっすか?」

と、おれがたずねると、ケロケロリーヌは、上機嫌で言った。

「プリプリ☆プリスターみてぇだな。よし、許そう」

「あ、たしかに、『プリプリ☆プリケロ』って感じっす」

 「プリプリ☆プリスター」は、おれが人間なあっちの世界で放映されている、女児向けアニメなんだけど。

「でも、プリケロさん、プリスターなんて知ってるんすか?」

 プリケロは、かっこよく断言した。

「おう。乙女のたしなみだぜ」

 どうやら、こっちの世界でもプリスターは放送していたらしい。

 でも、あれ、小学生くらいの女の子向けのアニメなんだけど。

 リーヌは、プリスターを見てるのか……。



 さて、荒れ地の向こうに孤児院らしき建物が見えてきた。なんにもない場所に、ぽつんと一軒だけ建物がたっている。

 外では、誰かが薪割りをしているようだけど、まだまだ遠すぎて、おれにはよく見えない。

「シャバーだ」

と、言って、ケロケロリーヌが、おれの後ろに逃げ込んだ。

「なにしてんすか?」

「だって、シャバーに見つかるだろ」

「プリケロさん、シャバーにも、正体をかくしとくつもりだったんすか?」

 リーヌは、ぼそりと言った。

「……シャバーには、バカにされたくねーんだよ」

 おれは力強く、言い切った。

「だいじょうぶっす。ばれないっすよ。どっからどう見てもカエルっすから。堂々と、旅の途中の、不思議なカエル王国のお姫様、プリンセス・ケロケロリーヌと名乗っておけば、絶対、だいじょうぶっす」

「そ、そうか?」

 そこで、ホブミがおれに言った。

「ですが、ゴブヒコさん。あなたと私は、そのままですが?」

「ホブミはホブゴブリンになれよ。おれは、だいじょうぶ。頭にプップがついてるから。新種モンスターのプップゴブリン、略してプップリンだから」

と、おれは適当に言っといた。


「では、私は変身しましょう」

 ホブミは、呪文を唱えた。

 一瞬で人間姿のホブミは消え、なぜかメイド服姿のゴブリンがあらわれた。

 ホブミはかん高い声で、しゃべりだした。

「姫様。ホブミは姫様のメイドとして、しっかりと姫様におつかえするのです。よろしくおねがいしますですー」

 そう言っておじぎをしてから、ホブミはおれの方を見て、低い声で続けた。

「ダメダメ下僕のプップリン先輩は下僕らしくふるまうですぅー。下僕のくせに、いっつも態度がでかいんですぅー」

「いやいや、おれは、下僕じゃなくて、カエル王国の将軍っす。それか、宰相とかもいいかもー」

と、おれは、設定の希望を出したんだけど。

「ホブミがメイドなら、ゴブヒコは下僕だろ」

と、自称プリンセスに、あっさり断言されてしまった。 

「下僕で感謝するのですー。先輩は、奴隷でも、もったいないくらいなのですー」

と、ホブミは言うし。

 それにしても、久しぶりにホブミがゴブリンバージョンになると、なんか、テンションが高すぎる。

「ホブミ、しゃべりかたは、いつも通りでいいんじゃないか?」

と、おれは言ってみたんだけど。

「なんのことですかー? ホブミはいつもどおりのしゃべり方ですー」

と、あっさり言われてしまった。

 ホブミは、変身すると、キャラが変わるらしい。


 なにはともあれ、これで3人、いや、3匹、全員グリーンで統一された。

「これで、ばっちりっす。ぜったい、バレないっす。おれたちは旅の途中で今夜の宿を探している、とってもグリーンなお姫様一行っす」

「よし、じゃあ、行くぜ」

 おれたち3匹は、堂々と、孤児院にむかって歩いて行った。

「たのもー。たのもー。おれたちは今夜の宿を探しているプリンセス・ケロケロリーヌご一行っすー」

と、おれが言うと、シャバーがふりかえり、さわやかに言った。

「よくきたな、リーヌ。新しいモンスターを2匹、仲間にしたのか? ホブゴブリンと、……こっちは、見たことのないモンスターだな。新種か?」

 おれは、叫んだ。

「バレとるーーーー! しかもプリケロだけ正体バレてて、おれ達はバレてなーい! ぶっちゃけ、プップリンは無理があると、おれ、思ってたのにー! なんで? なんで、おれ、バレてないの!?」

 リーヌは、ちょと気まずそうに、

「おう」

と一言だけ、あいさつした。

 シャバーは、小首をかしげた。

「どこか、雰囲気かわったな。髪でも切ったか?」

 おれは叫んだ。

「そんな、ささやかな違いじゃないっす! 完ぺきにカエルになってるっす!」


 だけど、ホブミはおれに言った。

「先輩、髪型の違いは、ささやかじゃないのですー。乙女にとって、とてもだいじなことなのですー」

「え? おれ、髪切ったくらいじゃ、違いに気づかない自信あるぞ? そりゃ、髪の色が激しくかわったり、ロングヘアから坊主刈りになったら、気づくけど。数センチ短くなったくらいじゃ、見た目、かわらないじゃん」

 母ちゃんが「美容院に行ってきたのよ」って言ってる時とか、なんど見てもまったく違いがわからないからな。

 ホブミ、叫んだ。

「キャーー! このゴブリン、乙女心を踏みにじる気満々ですー! 乙女が『この髪型どう?』って聞いた時に、『なにか変わった?』って言う気満々ですぅー。いつもいつも乙女心をふみにじっている、この乙女の敵がぁー!」

 ホブミは、おれにむかって、腕をふりまわした。

 一見、ゴブリンがじゃれているだけに見えるかもしれないけど、たぶん、おれは、ホブミにたたかれたら、相当のダメージを受ける。

 おれは、とりあえず逃げながら、言った。

「てか、もう、正体バレたんだから、ホブミは元にもどれって」

「ホブミの正体は、まだバレてないのですー」

 この賢者、このキャラを気に入っているらしい。

「にしても、シャバーは、ちゃんと目、見えてるのかな? プリケロさんはどこをどう見ても、カエルなのに。金髪くらいしか、人間リーヌと共通点ないんだけど」

と、おれが言うと、ホブミはうっとりとした様子で言った。

「愛の力で、どんな姿になっても気がつくのですー。感動ですー」

「正体に気づくとかいうレベルじゃなくて、違いに気づいてないじゃん。てか、髪型に気づかないのが乙女の敵なら、シャバーはなんなんだよ。あれじゃ、全身整形したって、着ぐるみきたって、ちがいに気づかないぞ?」

 そう言うおれに、ホブミは言った。

「愛で盲目だからですー。美しい愛の絆なのですー」

「イケメンに甘すぎ!」


 さて、おれとホブミがそんな会話をしている間に、リーヌはシャバーに、カエル化した事情をすっかり説明していた。

「そうか。ま、元気そうでなによりだ。きっと、みんな喜ぶぞ」

と、シャバーは、リーヌの姿が変わったことを、全然、気にしていないようすで言った。 

 リーヌは、なんだか、もう、吹っ切れた様子で、いつもの調子で言った。

「おい、シャバー。アタイは、リーヌじゃねぇぞ。カエル王国から来たプリンセス・ケロケロリーヌだ。ちゃんと、アタイをお姫様あつかいしやがれ」

「わかったよ。あいつらには、そういうことにしとくさ」

と言うシャバーに、リーヌはふんぞりかえって命令した。

「プリンセスと呼べ」

「わかったよ。プリンセス」


 その後、シャバーは、

「それにしても……」

と言いながら、おれを、いや、おれの頭上のプップを、じっくりと見た。

「こいつは、なんだ? 人型モンスターみたいに見えるが。こんな亜人やモンスター、見たことがないな」

 リーヌは、自信満々に説明した。

「プップリンだ。ゴブヒコが進化したんだぜ。超レアな新種なんだ。レアっつっても、生焼けじゃねぇぞ」

「プップリンか……見たことも聞いたこともないな」 

(そりゃ、そうだ。プップリンって、おれが、さっき思いつきで言っただけだもん! てか、おれ、プップを頭にのせてるゴブリンでしかないから! 進化してないし、ほんとは新種でもないし!)

と、おれは言おうとしたんだけど、言えなかった。なぜかというと、ホブミが、こっそり、後ろからおれに沈黙魔法をかけたから。

 いくらがんばって声をだそうとしても、おれの声は、ただのフゴフゴした音にしかならない。

(なにすんだ、こいつ!)

 というおれの心の声が聞こえたかのように、ホブミは小声で言った。

「先輩が姫様の邪魔をしないようにしてるのですー」

 そして、リーヌとシャバーの会話は続いた。

「プップリンは、超レアだけど、超よえーぞ。ツッコミいれたら死ぬから、気をつけろよ」

「わかったよ。しかし、すごいな。そんなにレアなモンスターに進化させるなんて。育てるのは、大変だったろ?」

「おう。苦労したぜ。ゴブヒコは超よえーからな。あと、すんげぇ、うるせーんだ。文句が多くて、食わず嫌いだからな。なかなか食わねーんだ」

 おれは、ものすごく言いたいことがたくさんあるんだけど。ホブミのせいで、何も言えない。でも、ひとつだけ、心の中で言わせてもらおう。

(おれ、ふつうの人間が食べるものは、なんでも食べるから! 食べないのは、カブトムシとかコウモリとかだけだから!)

「たいしたもんだな」

と、シャバーにほめられ、リーヌはうれしそうに、いつものセリフを言った。

「アタイはテイマーだからな」


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