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最弱ゴブリンは気がつかない [工事中]  作者: しゃぼてん
4章は、これから書き直す予定です
101/170

4-40 プップのとまり木

 おれたちは、〈世界の中心〉をめざすため、まずは、オホシミ山のふもとまでおりた。

 だけど、おれには、さっきから、ちょっと、気になっていることがあった。


 プップ……プップッ……


 なんか、へんな音がするのだ。

「おい、ゴブヒコ。さっきから、ヘ、こきすぎだぞ。サツマイモ食いすぎたのか?」

と、リーヌがおれに言った。

 どうやら、この音は、おれの空耳とか幻聴とかではなさそうだ。

「イモなんて一口も食べてないっす。今日はそのへんになってた果物しか食べてないっす」

「なるほど。オナラの実を食ったのか」

と、リーヌは言った。

「え? そんなちょっと悪魔の実みたいな名前だけど、よく考えるとしょうもない下ネタな実があるんすか?」

 リーヌはあっさり言った。

「アタイは聞いたことねーけどな」

「ないのか! てか、この音は、おれじゃないっす。リーヌさんこそ、実はただのカエルじゃなくて、オナラカエルって種族なんじゃないっすか?」

「ああ? んなわけあっか」

「じゃ、実は、ホブミか?」

「ちがいます。それより、レディーに罪をなすりつけようとする、ゴブヒコさんのそのデリカシーのなさと卑劣さ、万死に値しますよ?」

「そだな」

と、リーヌが同意したとたん。

「では、処刑します」

 ホブミが杖をかまえた。

「ギャーーーーーッ!」

 おれが逃げ回っていると、また、音が聞こえた。


 ププッ


 なんか、ちょっと笑っているように聞こえたのは、気のせいだろう。

「てか、おれたちじゃないなら、プップじゃないっすか?」

「なに? プップがいるのか? プップはどこだ?」

 リーヌは空を見上げた。

 おれも空を見上げた。

 でも、空にプップらしき姿はない。プップは水色だから、空と一体化しちゃうんだけど、それにしても、まったく、見あたらない。

「見えないくらい、空高くにいるんすかね? でも、だったら、声なんて聞こえないよなぁ。木のかげにかくれてるのかな……」


 プッププッ


 また、音がした。

 おれは、空だけじゃなくて、右も左も、あちこち見た。

 その時、頭の向きをかえるたび、なんとなく、ちょっとだけ、だれかに髪の毛を引っ張られたような、頭皮がひきつった感じがした。

 でも、おれの近くには、誰もいない。

 だけど、なんとなく、頭の上が、もふっとしていて、なまあたたかいような……。

 おれは、頭の上に手をやった。

 ゆびが、なにか、もふっとしたものにぶつかった。

「なんかあるぞ……?」

 頭の上に、なにか巨大な、もふっとしたものが乗っかってる。ほとんど重さは感じないけど。

 おれは頭の上にのっていた、空気みたいに軽い物体を、両手でつかんで目の前にもってきた。

 おれの両手のあいだにいたのは……。

「プップ!? なんでプップがおれの頭の上に!?」

 やっぱり、プップだった。


 おれの声を聞き、リーヌとホブミはおどろいた顔で、おれを見た。

「な、なにぃ! ゴブヒコの頭の上に、プップだとぉ!?」

「まさか!」

 おどろいている二人を見て、おれは、おどろいて叫んだ。

「どうやったら、気がつかないですむんすか!? おれを見れば一目でわかるはずっす!」

 なにしろ、プップは、近くで見ると、けっこう大きい。

 両腕で抱えきれないくらいに大きい。

 おれの頭の数倍はある。

 しかも、あの、「プップッ」て音、実は山頂付近から、ずっと、してたんだよな……。

 てことは、下山中、ずっと、プップがおれの頭に乗っていたってことだ。


「気がつくはずがありません。私は、なるべく、ゴブヒコさんの顔を視界にいれないようにしているのですから」

と、ホブミは、それが当然のことのように、言った。

「ひどすぎるだろ! おれを処刑しようとかしてたくせに! 見てもいなかったのかよ! もうちょっとで、えん罪事件だぞ!」

 おれがホブミに猛抗議していると、リーヌは不可思議なことを言った。

「アタイはちゃんと見てたぜ」

「え? 見てた?」

「アタイは、『ゴブヒコ、ずいぶん顔がでけぇな。なんか、いつもより顔がかわいくみえるぞ。でも、青ざめてるな。だいじょうぶか?』って、ずっと心配してたんだぜ?」

 おれは、あぜんとした。

「なんで、そこで気がつかないんすか!? 見てたのに気がつかない方が、ふしぎなんすけど!? 心配してくれるのは、ありがたいんすけど。それ、リーヌさんの頭のほうが心配っす! これが、おれの顔なわけないでしょ? どう見ても、プップでしょ? てか、おれの顔はその下にあるでしょ?」

 だけど。

「あの変な光線銃のせいだなって思ってたんだよ」

と、リーヌが言うを聞いて、おれは、納得してしまった。

「たしかに、リーヌさんがカエルになるくらいっすからね。おれの背が急にのびて、おれの首に目鼻口耳がついていて、おれの顔が、つぶらな瞳とちっちゃなくちばしがかわいい、まんまるで大きなもふっとした顔に見えるくらい、あってもおかしくないっすね」

「だろ?」

「納得いかないけど、納得したっす」


 それから、おれは、しみじみと、おれの目の前にいる、巨大なもふっとした風船みたいな、謎の生き物を眺めた。

「にしても、このプップ、なんで、おれの頭に?」

 リーヌは、さらっと言った。

「おまえ、緑だからな。木とまちがえたんだろ」

 おれは、さらっと、指摘しといた。

「そう言うリーヌさんも、今は緑っす」

「ぐはぁっ。せっかく忘れてたのにぃ!」

 精神的ダメージを受けたリーヌは、地面にひざをついた。

「忘れんの早っ!」

「おぼえてたら生きていけねぇー!」

 とかいう会話をしていたら、おれの両手のあいだで、

「ププッ」

と、プップが、オナラみたいな音で、鳴いた。……鳴いているんだと、思いたい。

 なんとなく、尻の方から風が出ていた気がするのは、気のせいだろう。なんか、フレッシュでさわやかな香りがする気がするけど。


 リーヌは、デレッとした顔で、おれが両手に抱えているプップを見た。

「かわいいな……。もふもふ風船ー……。アタイにもさわらせろ」

 リーヌが、こっちに手をのばした。

 おれは、リーヌの魔の手からプップを守るため、体の向きをかえた。

「だめっす。リーヌさんは、ちょっとまちがえると、プップなんて、簡単に殺しちゃうっすから。絶対、近づいちゃだめっす」

 リーヌはブーブー言った。

「ブーブー。ゴブヒコだけ、モフっとかわいいの抱っこしてて、ずーるーいー」

「おれは、激弱っすから。おれが、どんなにプップをたたこうがヘディングしようが、まるでふわふわクッションでたたかれたように、プップはノーダメージっすから」

 リーヌは、とても、くやしそうな顔をした。

「くそっ。こんなに、誰かをうらやましいと思ったのは、はじめてだぜ。アタイも激弱になりてぇ!」

「おれが、うらやましがられる日がくるとは!」

 といっても、おれはプップに好かれても全然うれしくないんだけど。人間の美少女に好かれたいー。

 てか、おれは、モフモフとかいらないから、最強になりたいんだけど。

 あーあ。リーヌとおれの能力の交換ができたら、いいのになぁ。


 なにはともあれ、おれは、プップを自由の身にすることにした。

「じゃ、リーヌさん。プップは放すっすよ。やっぱ、野生モンスターは野生にかえすのが一番っすから」

「おう。しかたねーよな。それがモフモフのためなら。アタイは、がまんするぜ」

 おれが手をはなすと、プップは、プップーッと後ろから空気をふきだして、ふわふわと青空に舞いあがっていった。


「さぁて、じゃ、出発するっす。〈世界の中心〉てとこに行くのは決まったけど、そもそもそれ、どこにあるんすか?」

「うむ。アタイはいつでも世界の中心にいる気がするぜ。だって、どっちを向いても、おなじくらい遠くまで見えるからな」

と、リーヌがアホなことを言うと、ホブミが即座に言った。

「もちろん、リーヌ様がいらっしゃる場所が、本当の世界の中心です」

「ホブミ。ちゃんと、〈世界の中心〉に案内してくれないと、リーヌは永遠にカエルのままだぞ」

と、おれが言うと、ホブミはおれをギロリと見てから、説明をはじめた。

「通称〈世界の中心〉と呼ばれている場所は、ここからは少し離れています。一度南に向かった方がいいかもしれませんね」

「南か。よし。南ってことは、あっちだな」

と、リーヌが指さした方を見て、ホブミは言った。

「もちろん、そちらが、南です。ですが進む方向は、ちょうど反対方向です」

「つまり、リーヌがさしているのは、北なんだよな?」

と、おれが言うと、ホブミは言った。

「いいえ。リーヌ様が指している方向が南です。この地図が、まちがっているのです。人々は北と南をまちがっているのです」

 こいつ。意地でも、リーヌ全肯定を続ける気か……。


「そういや、ミンナノハウスも、そっちにある気がするな」

と、リーヌは、本当の南を見て言った。

「では、一度、シャバーさんのいる孤児院をたずねてみては、いかがでしょうか? 今のリーヌ様のお姿なら、賞金稼ぎに正体がばれることはないと思いますよ?」

と、ホブミに言われ、おれは、気がついた。

「たしかに。どっからどう見ても、カエルっす。これなら、誰も気がつかないっす。見事な変装っぷりっす」

 やっぱり、カエルになることにも、メリットはあったんだな。

「もっと、かわいい変装がいーいー。カエルはいやだぁー」

と、リーヌは言うけど。

 おれは、ブサイク転生の先輩として、リーヌに言っといた。

「そんなこと言ってないで。リーヌさんも、前向きに生きてくれっす。おれを見習って……」

 おれが、そこまで言ったところで、音がした。


 プップッ


 リーヌはうなずいて、おれに言った。

「おまえを見習って、前向きにオナラをするんだな?」

「ちがうっす!」

 おれは頭の上をさわった。

 やっぱり、プップがのっている! 

 さっき大空にリリースしたはずのプップが!

 空気みたいに軽いから、まったく気がつかなかったけど。

「なんでプップ、おれの頭に舞い戻ってんだよ。おれの頭にすわってないで、大空に飛びたてよ。ほら、広大で自由な空が、待ってるだろ?」

と、おれは、プップに言った。

 だけど、プップは、まるで、「空を飛ぶなんてつかれることは、ぜったい、いやだ」というように、しっかり、もっふり、おれの頭に、すわっている。

 おれが頭をふっても、手でおしても、もふっとした巨大風船は離れない。てか、プップが足でがっしりおれの髪の毛をつかんでいるので、おれの髪の毛が抜けそうになる。


 ホブミは、おれとプップのことなんて気にせず、言った。

「では、シャバーさんのいる孤児院に向かいましょう」

「おう。アタイは正体をかくして、こっそり見に行くぞ!」

 こうして、おれ達は、孤児院にむかうことにした。

 ちなみに、プップは、まだ、おれの頭に乗っている。このプップ、どうやっても、自力で飛びたとうとしない。やる気のなさが、おれ並みだ……。


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