新しい出会い
やはり私は不幸だ。というか水溜まりの中に吸い込まれること自体おかしい…。私は平和そうな森の中に来てしまった。いっしょに入ってしまった友達は隣にいたので少し安心した。水色の髪の少女と周りを見てみる。
「ここはどこ?」
「わかりませんが少し歩いてみましょう」
そう言って少し整備された道に沿って歩いてみることにした。
「こはは何があったと思う?」
少し無理がある質問だが聞いてみた。こんな状況だがあだ名を使っていることは少し嬉しい。
「信じられないですが多分小説のようにどこかに飛ばされた可能性が高いと思います」
「それを確かめるためには誰かに会ってみないといけないね」
そこまで話したところで前に木でできた家が見えた。あれ?いつもなら切り株で転ぶぐらいするのに…とにかく行こう。
「あそこなら誰かいるかも!」
そう思って近づいてみると少し背の低い10歳ぐらいの少女が家から出てきた。
「あの、少しお訪ねしたいことがあるんですが…」
心春は動揺せずにその少女に聞いてみせた。日本語が伝わるのかと心配したが、問題なく伝わったようだ。
「わかりました。どうぞ中へ」
言われたどおりに中へ入るとそこには木組みの家にありそうな素敵な内装があった。
「それで聞きたいことってなんですか?シェラはシェラって言うの。よろしくなの」
どうやら一人称はシェラらしい。日本語で外国っぽい名前なので、やはりここは本当に異世界なのかもしれない。
「私は楓。こっちはこは。よろしくね」
「心春よ。よろしくね、シェラちゃん」
あいさつが終わったので本題に入る。
「わけあって私たちはここにいるんだけどここらへんのことが知りたいの」
やさしい少女は答えてくれた。
「ここらへんはシルウァ区と言って木がたくさん生えているところで、中心区のバリングタウン南側にあるんだけど、今はここで武器作成と魔法伝授の練習をしているの」
間違いない、ここは異世界………
『魔法?!』
「知らないの?使える人は使えるよ」
魔法には興味があるから使えるのなら使ってみたい。こはも同じように思っているはず。
「使えるかどうかはどうやって調べるんですか?」
心春は不思議そうに聞いてみた。するとシェラは何かの紙を持ってきた。
「この紙に手をかざすとステータス、魔法適性などが出てくるよ。ちなみにシェラは職人的なことが得意だったから今はそれをやってるの」
まずは心春からやってみることにした。心春は手をかざすとなにやら文字が出てきた。それをシェラに見せた。
「どれどれ、ステータスは普通ぐらい、…え?!魔法適性がすごく高い!これならほとんどの魔法が使える!……でも強化魔法だけって書いてある…」
心春は、この意味のわからない縛りに疑問を抱いたが、それでも魔法が使えるなら嬉しかった。次は楓がやってみた。
「ステータスは平均以下、魔法適性なし…」
やっぱりこうなると楓は思っていた。生まれた時から不幸なので慣れてはいるが、こうしてみると少し悲しい。と思ったらシェラは続きを読み上げた。
「なにこれ?スキル幸福?初めて見た…。これによって運がすごく上がってる…」
楓にとって異世界に来たよりも驚くことを少女は言った。幸福?私が?そんなはずはない。じゃんけんで一度も勝ったことがない不幸な私のスキルが幸福……。試してみよう。
「こは、じゃんけんしてみていい?」
心春はうなずきじゃんけんをする。
『じゃんけん、ぽん!』
私がチョキで心春はパー……。この時私は生まれて初めてじゃんけんで勝った。
「このスキルは本物だ!」
楓はすごく嬉しかった。喜んでいるとシェラは思い付いたことを言った。
「考えた魔法に、自身の運に依存して能力が発揮する強化魔法があるんだけど、この運と心春さんの強化魔法があればあの大会にだって行けるかも!」
『あの大会?』
「大会優勝のペアには1つ願いが叶うという大会。」