プロローグ
私の人生は、意外にも充実してたと思う。
幼き頃から、色々な趣味に没頭する日々……。
多くはないがそれなりに大切な友達もいた。
成人し、職場にも恵まれ決して裕福では無いが普通に暮らしていた。
……それに、夢もあった。
でも、結局叶わなかった。突然発覚した、「癌」。
別に、身体弱いとかそんなんじゃ無かったし........
全然気づかなかった。気付いたら、「末期」だった。
余命宣告ってほんとに言われるんだって
頭の中真っ白になりながらも医者の話を聞き、初めに思った事。
帰り道の夕焼け空が、異様に綺麗で自傷気味に微笑んだ。
若干……26歳春の某日。
そして、僅かな余命は大いに楽しむ為自宅で過ごす事にした。
病気になってから毎日が尊くて儚くてキラキラって言う感じに
見えた。
大好きな趣味の数々、数人の友人と出掛けたり、旅行に行ったり
しながら私は思考した。
余命あと1ヶ月に差し掛かって、仕事も退社し自分の最後の為に準備を始めたんだ。
友達宛てに手紙を書き……大好きな料理のレシピ本を徹夜しながら書き……他の趣味も本にした。
両親は20歳の時に他界したけど手紙を書くことにし、
お墓のあるお寺の住職さんに託したんだ。
最後は旅行に行った時に決めていた。
桜の木がある庭の一軒家...今までの貯金をはたき買った。
準備は整った……もう1つの夢は叶えられなくて悔しいが
これが、俗に言う「運命」ってやつなのかもしれない。
そして、余命当日に迫るに連れて段々体調も不安定になって
外出困難になっていた。
余命前日の夜……不思議な夢をみた。
見知らぬ真っ白な空間に無重力なのか浮いている自分
見知らぬ男……そいつと何か会話してたのをぼんやりしか思い出せず
はっきり記憶に残った言葉がある……「助けて」だ。
そこで目が覚めた。
不思議な夢だなと思ってボーッと思い耽っていたら
急に息が苦しくなった........
ふと、庭が気になり立ち上がってフラフラしながら庭の桜の木に向かった。
幹に凭れ掛かる様に座り、何故か時期には少し早いと言うのに満開の桜の花を見上げた……。
とても神秘的かつ綺麗で目を見開いた。
耳を澄ませば……早朝を示す様に小鳥の囀りが聴こえる。
段々と苦しさが分からなくなって来て……
「最後」を示している。
霞む視界で今世の事を思い涙が伝う。
その時……夢に出た見知らぬ男が見え手を差し出している。
不思議にも手を伸ばし……その手を掴んだ……気がした。
これが……日本と言う国に生まれ過ごし「最後」にみた視界だった。