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再会

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聖十字歴300年深緑の月十八日・ヴェストラント・カイロネイア平地


渚が屠龍や各種機材と共に異世界へと迷い込んだ翌日、渚は屠龍の御披露目飛行の為にナディアやマリア、ヴェルシーナ、エレノアと共に馬車でカイロネイア平地へと移動した。

馬車が渚の迷い込んだ場所に到着するとそこには屠龍や各種機材を風雨から守る為に巨大な天幕が張られており、その前では警備をしていたリリナとサジタリオ女子爵家騎士隊のハーピー族の騎士達が到着した一同を出迎えた。

リリナ達の出迎えを受けながら馬車を降りたディアナは渚にリリナの事を紹介し、渚とリリナは互いの雰囲気に好感を感じ合いながら笑顔で挨拶を交わした。

「はじめましてリリナ様、旧大日本帝国陸軍中尉、風魔渚です、宜しくお願い致します」

「こちらこそはじめまして渚殿、私はリリナ・フォン・ティフォーネだ、宜しく頼むぞ」

「リリナは子爵家に準ずる地位を持つ王国騎士だったんだけど、あたしがこの島に行く事になったのを聞くやその地位を惜し気無く放り捨ててあたしに従ってくれたのよ」

渚とディアナが挨拶を交わし終えるとディアナが微笑みながらリリナに関する追加説明を行い、リリナは恥ずかしげに頬を赤らめながら口を開いた。

「……ディアナ様、私は、私の信念に従って行動したまでです、おのが力量を過信し増上していた私の目を醒まさせて下さったその時から私はディアナ様を仕えるべき御方としたのです」

リリナがそう言いディアナが頷いていると乗馬服姿の女性が騎乗した馬が2頭天幕の近くに到着し、それに気付いたディアナはその方を示しながら渚に声をかける。

「渚、今到着したのがマリアと一緒にこの島に来てくれた学友の令嬢達よ、昨日は北部の開拓村で泊まりがけで開拓作業を視察して貰ってて昨夜魔法で連絡してこちらに来て貰ったのよ」

「そうなんですか、何だか申し訳無い話ですね」

ディアナの説明を聞いた渚が恐縮しながら言葉を返していると2人がディアナ達の所へと到着し、ディアナは2人の方を示しながら口を開いた。

「渚、彼女達はあたしの元学友でイリアス・フォン・フォッケとシスティーナ・フォン・ヴォルフよ、イリアスはフォッケ伯爵家の令嬢で、システィーナはヴォルフ伯爵家の令嬢よ」

「お初にお目にかかります渚様、わたくしはイリアス・フォン・フォッケ、フォッケ伯爵家の次女をしておりましたが今はディアナ様の御手伝いをさせて頂いておりますわ」

「はじめまして渚殿、私はシスティーナ・フォン・ヴォルフ、ヴォルフ伯爵家の三女だったが今はこうしてイリアスと共にディアナ様の手伝いを行っている」

ツインテールに纏められたエメラルドグリーンの髪と琥珀色の瞳の美貌とスレンダーな肢体が魅力的なイリアスと黒に近い紫紺のショートヘアに鳶色の瞳の凛々しい美貌に長身でメリハリの効いた肢体が印象的な美女システィーナはディアナの紹介の言葉に続いて丁寧に一礼しながら渚に挨拶を行い、渚は深々と一礼した後に口を開いた。

「イリアス様、システィーナ様、お初に御目にかかります、旧大日本帝国陸軍中尉の風魔渚と申します、黒い霧によってこの世界に迷い込み現在はナディア様に庇護して頂いております。宜しくお願い致します、それと、様づけで呼ばれるのは些かこそばゆいのでどうか呼び捨てでお呼び下さい」

渚が行った自己紹介を受けたイリアスとシスティーナは微笑を浮かべて頷く事でそれに応じ、その様子を見ていたナディアが穏やかな表情で口を開く。

「挨拶が終ったわね、それじゃあ天幕に入って渚と一緒にこの世界に迷い込んで来た品々を確認して見ましょう」

ディアナの言葉を受けた一同は頷く事でそれに応じ、それから一同はディアナを先頭に天幕の中へと入って行った。

天幕の内部は魔力の照明によって照し出されており、中央では渚にとって見馴れた愛機、屠龍が魔力の照明を浴びて淡い輝きを放っていた。

「……屠龍」

渚は感慨深げに呟きながら淡い輝きを放つ愛機の傍らに歩み寄るとジェラルミン製の機体に右手を重ねてその感触をしっかりと確め、その傍らに歩み寄ったディアナは穏やかな眼差しで渚を見詰めながら口を開く。

「……間違い無い様ね」

「……はい、この機体は間違い無く私の愛機、屠龍です」

ディアナに声をかけられた渚はそう答えながら屠龍から手を離し、ディアナは頷いた後に屠龍の後方に置かれている布に覆われた物品やドラム缶、各種機関銃砲を示しながら言葉を続けた。

「あそこに置かれている物品類も確認して貰えるかしら?」

「はい、勿論です」

渚は頷きながらディアナの言葉に応じるとディアナと共に物品類の所へと移動し、ディアナと渚のやり取りを見ていたマリア達もそちらの方向へと移動した。

全員が物品類の所に移動するとイリアスとシスティーナが手近な所にあった物品を覆っていた布を外し、布の下からは屠龍に搭載されている発動機ハ―102(集合排気菅方式)が姿を現した。

「……これは屠龍に搭載されている発動機、ハ―102ですね、屠龍にはこれが2基搭載されています」

「もう1つの布の下にも同じ物が入っています」

渚がディアナ達にハ―102の名を告げているとシスティーナが隣の布を捲ってその下にもハ―102が鎮座している事を報告し、システィーナの傍らにいたイリアスは興味津々と行った面持ちでハ―102を見詰めながら口を開いた。

「ハ―102のこの形状、エルジスト王国が実用化させた飛空艇が搭載している魔導駆動エンジンを彷彿とさせますわね」

「イリアスとシスティーナは魔法機械工学を専攻していて、エルジストの飛空艇計画にも物凄く興味を抱いていたのよ」

「そうなんですか」

(……それだったら部品とかは案外何とかなるかもしれないわね)

イリアスとシスティーナが示している興味津々といた様子に関する説明をディアナから聞いた渚がその耳寄りな内容に内心で頷きながら応じているとリリナとマリアが別の物品を覆っている布を外し、その下からは渚の愛機に搭載される予定だった盟友ドイツから供与された航空機搭載型電探FuG―218ネプチューンV―1と低空気抵抗型アンテナ、モルゲンシュテイルン2が出現した。

「……これは、我国の同盟国より供与された航空機搭載型電探、FuG218ネプチューンV―1とそのアンテナですね、電探と言うのは電波探信儀の略でレーダーとも呼ばれています、電波を発射してその反射波を探知して相手との距離を判断する夜間戦闘機用の装備です、その際にはアンテナを装備しなければならないのですが大きなアンテナだと空気抵抗による速度低下が著しいので空気抵抗の低いアンテナとして開発されたアンテナも供与され、それがこのアンテナです、確かモルゲンシュテイルン2と言う名称だった筈です」

「なるほど、原理的には魔力捜索と同じ原理ですわね、戦闘の際に索敵が重要なのは世界が変わっても同じなのですわね」

(……マリア様のその言葉、帝国陸海軍には結構耳が痛いですね、これにしたってドイツから供与された物ですし)

渚の説明を聞いていたマリアは得心の表情で呟き、それを聞いた渚が苦笑しながら頷いているとリリナが並べられた機関銃砲類を興味深げに見詰めながら問いかけてきた。

「渚殿、昨夜これ等を見ながらその正体について考えていたのだが、これは銃の一種では無いだろうか、我が軍でも魔力によって弾丸を発射するマジックマスケットや火薬で弾丸を発射するマスケット銃等が存在しているがこれ等の物品の細長い筒がそれ等が備えている銃身に似ている様な気がするのだ」

(銃の概念もあるみたいね、全くその概念が無いよりは説明の手間が省けるわね)

リリナの問いかけを聞いた渚は銃の基本概念が存在している事に安堵しながら頷き、その後に並べられている機関銃砲類の所に移動して説明を始めた。

「リリナ様が想像なさった通りこれ等は銃の一種で機関銃や機関砲と言い毎分数百発単位で弾丸を発射出来る連発銃です、屠龍等の航空機はこれ等の機関銃砲を主要武装として使用しています」

「毎分、数百発、だとっ!?」

「凄まじいわね、マジックマスケットは魔力の高い者なら連発可能だけどあたしで毎分50発程度よ」

渚の説明を聞いたリリナとディアナは驚きの表情で感想をもらし、渚は頷いた後に手近な所にあったMG―81Z連装七・九二ミリ機銃を示しながら説明を続けた。

「この中で最も発射速度が高いのがこの銃でMG―81Zといいます、毎分1400発から1600発の発射速度を持つMG―81を連装型にした物で発射速度は毎分2800から3200発になります、航空戦用の機銃で私の乗っていた屠龍、つまり、今ここにある屠龍にも搭載されています」

「……凄まじ過ぎて実感の湧かない数字だな」

MG―81Zに関する説明を聞いたリリナは感嘆と呆れが混ざった笑みを浮かべながら感想をもらし、渚は頷いた後にドラム缶の所へと移動した。

ドラム缶には漢字で揮発油八十七と言う文字が書かれておりその横には発動機用の潤滑油が入った小さな缶も4つ程置かれており、それを確認した渚は大きく頷いた後にドラム缶を軽く叩きながら説明を始める。

「この大きな缶はドラム缶と言って屠龍等の航空機が空を飛ぶ為に必要な燃料揮発油八十七が入っています。空を飛ぶためには潤滑油も必要ですがそれはあの小さな缶に入っています、ですからドラム缶の揮発油八十七が無くなるまでの間ですが屠龍は空を飛ぶことが出来ます」

「……そう、飛べるのね、良かったわ」

渚の説明を聞いていたディアナは屠龍の飛行が可能な事に安堵の表情を浮かべながら呟き、それを聞いた渚は昨夜のディアナとの会話を思い出し微笑みと共に頷いた。


ヴェストラント沖南方750リーク・高度2500メルス・エルジスト王国飛空艇「グラーフ・ツェッペリン」艇長室


渚が愛機屠龍との再会を果たしていた頃、世界唯一の実用型飛空艇「グラーフ・ツェッペリン」はヴェストラントの南方750リークの洋上を時速200リークにて飛行中であり、その艇長室では艇長のナターシャがクーリアとナターシャの随伴武官でG計画技術副主任のダークエルフ族のティナ・フォン・カムフーバー大佐とテーブルを囲んでいた。

「先程本国からの魔力通信でブリガンティス王国が1個防空魔女戦隊の編成を完結したと報せて来たわ」

ナターシャは本国から報された緊急通信の内容をクーリアとティナに伝え2人が表情を厳しくさせながら頷くとナターシャも同じ様に表情を厳しくさせながら言葉を続けた。

「……ブリガンティスの予知夢は実現するまでの期間が一定では無いから龍群の活動開始が何時になるかは不明よ、ただし、ブリガンティスで予知夢が発生するのは相当規模の事件や事態の時だけだから龍群の活動開始は確実だろうと言うのが本国の意見で私もその意見に賛成よ、そしてブリガンティスはこのG計画に関しても並々ならぬ興味を持っているわ」

ナターシャはそこで言葉を区切ると目の前に置かれたティーカップへと手を伸ばし、クーリアは厳しい表情のまま口を開いた。

「ブリガンティスが興味を抱くのも無理はありません、ですがG計画では龍群と正面切って戦うのはかなり厳しいと言わざるを得ません、この「グラーフ・ツェッペリン」は最大時速240リーク、最大上昇限度4000メルス、過去の龍群の情報を基に算出された龍群の推定時速350リーク、推定上昇限度5000メルス以上に遠く及びませんし、平均20メルスの龍に対して本艇は150メルスと大きく機動性も雲泥の差です」

「……クーリアとも何度か検討しましたが本艇をはじめとしたG計画で制作される飛空艇は捜索魔法可能な者を乗せて早期に龍群の接近を把握する早期警戒任務や魔女達を乗せて龍群の近くの空域まで彼女達を運んで出撃させる魔女母艦としての運用に使用するのが適当と思われます、もっとも母艦任務には相当な危険が伴いますが」

クーリアの言葉に続いてティナが厳しい表情のまま説明を続け、ティーカップを傾けながらそれを聞いていたナターシャはティーカップを戻すと厳しい表情のまま言葉を重ねる。

「練達の魔女や獣人、ハーピー族でさえ最大時速は300メルスで上昇限度は5000メルス、しかも龍群が襲来してくるのは夜間が殆ど、厳しいとしか言い様が無いわね、龍群が活動を始めるまでに龍に対抗出来る手段を早急に見付ける必要があるわね」

ナターシャは厳しい表情のまま呟き、クーリアとティナも同じ様な表情を浮かべながら頷いた。



異世界に迷い込んでから一夜が開けて迎えた屠龍の御披露目飛行の日、ディアナと出逢った地カイロネイア平地に到着した渚はその地にて愛機、屠龍との再会を果たす。

そして、その頃、ヴェストラントへと向かうエルジスト王国の飛空艇「グラーフ・ツェッペリン」の艇上では艇長のナターシャが部下と共に迫り来る脅威に対する手段を模索していた……


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