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トクソー犯罪ファイル002

センターが終わった記念で、3作品を1話ずつ更新します。これと、ラブコメ作品の『行き遅れと死にたがりの恋愛黙示録(アポカリプス)』と、長らく完結扱いにしてきた、『魔導書使いの調伏師』の3つです。お暇があればどうぞ。


「お父さんッ!お母さんッ!しっかりしてよ!」


あれ…ここどこだっけ?


「目、覚ましてよ!」


誰だ?この小さい子供は…。それに、誰か死んで…?


「僕を一人にしないでぇ!お願いだからぁ!」


泣き叫ぶ少年の顔は、まぶたは腫れ、親の血で赤く染まり、泣き声をあげ続けた喉からは、親と同じように血が出ていた。そしてその顔は、幼さはあれど、確かに俺_葛城睦月のものだった。

そこで睦月は悟る。


ああ、これは俺の記憶。死んでいるのは、俺の親。


「うう…うわあああっ!」

「うわあああっん!」


今の睦月と過去の睦月。二人の声が、ハーモニーを奏でる。さながらレクイエムが如く、演奏を奏でる二人の心は一つだった。

これがこの世の地獄、と。


「…つき、睦月、睦月!」

どこからか声がする。レクイエムはフィナーレを迎え、世界は終演を告げた。




「睦月!起きなさいってば!」


「くはっ!はぁはぁ…。おはよう、はぁ、暁…。」


俺の目の前にいるのは、ツインテールにツンデレ、まるでラノベキャラみたいな俺の仲間、間宮(まみや) (あかつき)。つり目に、金髪ツインテ。こんな見た目だが、日本人だ。母方に欧米人と国際結婚した人がいて、先祖帰りしたらしい。生まれてきた当時は、家中大騒ぎだったそう。


「大丈夫?結構うなされてたみたいだけど。落ち着いたら降りてきなさいよ、朝食ができてるから。」


そう言って、暁は部屋から出ていった。


「ああ、サンキュー。しっかし、朝からひどい夢だ…。汗かいちまった。シャワーでも浴びてくっかな…。」


俺は、階段を降りて風呂場に向かう。風呂場は結構広くて、俺のお気に入りだ。


洗面所で服を脱いで、風呂に突入、シャワーをひねる。熱いお湯が、俺の体を清めてくれる。これぞ至福、これぞ人生の幸福ってね。


キュッキュ


シャワーを止めて、タオルを取りに洗面所へ出る。もちろんすっぽんぽんだ。この家には、ご存じの通り、女性も住んでる。鉢合わせなんぞしたら…。


ガラガラ


「キャーーッ!」


「何だ、睦月か。どうした、女みたいな悲鳴をあげて。」


「いやいや、何じろじろ見てんだよ!年頃の女の子が、そんなことしちゃいけません!」


「何って…ナニを見ているんだが?」


「止めろぉ!朝から18禁発言すんな!朧は、もうちょい恥じらいってものを…。」


「何を言っているんだ、嬉しいくせに。世の男子は、皆ラッキースケベに憧れているのだろう?こうして夢を叶えてやっているのだ、感謝してほしいものだな?」


「いやいや、裸なの俺だけだから!辱しめ受けてんの俺だから!」


はぁ…一番イヤな奴と鉢合わせちまった。間宮 (おぼろ)。お察しの通り、暁の姉だ。スタイルは良いし、顔立ちもシャープな美人。サラサラの黒髪を伸ばしており、大和撫子を体現したような女性だ。黙っていても、男が向こうから寄ってくる。いや、むしろ黙っていないと寄ってこない。何せこいつは、極度の下ネタ好きなのだ。この家で共同生活を始めて、早1年。お互いの好みも癖も分かってくる。分かりたくはなかったが、こいつの視線は、いつも人体の下の方を見ており、口からは、流れるように下ネタや性知識があふれでる。しかもドヤ顔でだ。信じられるか?最初は、俺をからかってんのか、とも思ったよ。でもな、1週間ずーっと、マジでずっと口を開けば、事務的なこと以外は全部下ネタ!もう慣れたが、あれは苦行だった。俺と暁は、その時固く誓った。こいつを一人で、外に出してはいけないと。


「~~~が×××して△△△で…。おい、聞いているのか?」


まだしゃべってたのかよ!


「騒々しいわね…。って!?ちょっと、睦月!早く服着なさいよ!」


様子を見に来た暁が、顔を真っ赤にして、目を背ける。


「お姉ちゃんも、何を堂々と立ってんのよ、離れなさいよ!」


「フッフッフ、暁よ、嫉妬は見苦しいぞ?お前が睦月をす…。」


「あーあー!それ以上言ったら、ブチ殺すわよ!」


怖え…。だがこの隙にと、いそいそとパンツを履く。その時、俺の背中に柔らかいモノがくっついてきた。それこそムニュウって感じで。


「どうだ妹よ?素直になれば、こんなスキンシップもできるのだぞ?」


背中に当たっていたのは、案の定というかなんと言うか、朧の巨大なメロンだった。朧は服を着ているが、こちらは裸。温もりが直に神経を刺激する。


暁は口をパクパクさせながら、こちらを睨み付けている。何か抗議したいのだろうが、あまりのことに思考が追い付いていない。


「ちょっ、あかつ…。」


「睦月のバカ!変態!もういい!」


暁は涙目になりながら、ドスドス歩いていってしまった。


「ちょっ!?朧、どうすんのさ?怒らしちまったぞ!?理由も分かんねえし…。何て謝ろう!?」


「おいおい、今の流れから察せないのか?」


何がだよ。どこをどう解釈すりゃいいんだよ。俺が、キョトンとした顔をしていると、


「はぁ…。妹よ、お前は苦労するぞ…。」


何で勝手にあきれてんだ?意味が分かんねえ!面倒くせえええ!




俺たちはリビングに向かう。そういえば、まだ朝食をとっていなかったのだ。リビングには、暁と、眼帯をつけたゴスロリファッションの少女がいた。


「あのさ、あか…。」


「フンッ!」


相当お怒りだな…。仕方ない、ほとぼりが覚めるのを待とう。


「お二人とも、また痴話喧嘩ですか?朝から聞かされる、こっちの身にもなってくださいよ。」


「「ちがうわっ!!」」


このゴスロリは、最上(もがみ) 不知火(しらぬい)。トクソーのメンバーの中でも最年少の、14歳だ。世間一般で言うところの、中2であり、この時期特有の病気のケがある。眼帯といい、時おり言葉遣いに表れるカタカナ言葉といい、見ているこっちが恥ずかしい。


「お二人に、エロースのご加護がありますように。イエーイ、ヒューヒュー!」



こいつの言ってることは、専門的でよくわからん。これらを全部、真顔でやるから、なおさら分からん。


「エロース…。親近感を覚えるなぁ。そやつも、私のように、欲望に忠実だったに違いない。」


「うるさいです。神は、あなたみたいな、俗物とは違います。」


「ほ~う。目上の人間に対して、よくもそのような態度が…。」


朧と不知火は、普段は仲が良いのだが、お互いの趣味に関しては、とことん熱くなるタイプだ。


バキインッ!!!


机が木っ端微塵に粉砕された。

そんなことが出来るのは、怒り狂ったツインテしかいない。


「黙って…。意味、分かる?」


「は、はい…。」


「う、うむ…。」


蛇に睨まれた蛙とはこの事だ。暁は、空手や柔道、その他格闘技を極めた女なのだ。俺と同じ18歳なのに。そんな女が、無表情で脅してきたら、フリー○様やDI○ですらも、喜んで自殺する。この恐怖を2度と味合わなくてよい事を、全細胞が喜びながら。事実、今までに何人かの犯罪者に、この威圧を浴びせてきたが、今は全員鉄格子の中で、ベッドに固定されて生活している。


「殺せ!俺を殺してくれぇっ!」ってね。


俺らは、特殊な訓練を受けているから、ビビるくらいですんでいるが、犯罪者達には、ホントに同情するよ。


「あのぉ~。」


そんな修羅場に、小鹿のようなひ弱さで飛び込んできた、1種の勇者がいた。


「何?」


「ひいっ、ごめんなさいごめんなさい

!」


その勇者の名は、山城(やましろ) (ひびき)。振り向かれただけで、腰を抜かした軟弱そうなメガネ。それも、最近流行りの知的イケメンではなく、未来からやって来た猫型ロボットの出てくる、あの名作の主人公を、ちょっとイケメンにした感じ。身長は170センチぐらいで。ちなみに、俺と朧は180センチ、暁は175センチ、不知火は150センチ。


「何かしら、響?下らない用事だったら…。」


暁の中指が天高くそびえている。


「えと…。阿賀野警視総監からのメールで、睦月君と暁さんに、登庁命令だって。それも今すぐに。」


「はあ!?嘘だろ、嘘だといってくれ!」


こんな怒りモードの、暁と一緒なんて!拝啓、天国の父さん母さん。今から、そっちに逝くかもしれません。


睦月は、最後の審判を待つ人間のごとく、自らの命を、目の前の鬼神に委ねるしかないのであった。



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