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トクソー犯罪ファイル001

1話ずつ2作品投稿しております。よろしければ、「行き遅れと死にたがりの恋愛黙示録(アポカリプス)」も、よろしくお願いいたします。

ブロロロロロ

ここはどこだろうか。揺れるトラックの荷台の中で考える。答えはでない。これからどうなるのだろうか。分からない。だが、明るい未来でないことだけは、確かだ。

手錠に猿轡。一生縁の無いと思っていた物が、私の、いや私たちの自由を、人間の権利を、尊厳を、無情にも奪い去ってしまった。

私はとある会社に勤めるしがないOL。帰宅途中に何者かに襲われ、今はこのざま。周りを見渡すと、やはり同じように女性が何人か転がされている。そして、それを見張る下卑た目をした男が二人。忌々しい奴らだが、今の私にはどうすることも出来ない。せいぜい睨み付ける程度だ。それも奴らにとっては、これから行われるお楽しみのスパイスに過ぎない。

ニヤニヤした顔をしながら、私に近づいてくる。強引に私の顎を引き寄せ、猿轡を外す。

「へっへ、いい女だぜ。こっちを睨み付けてやがんのが、またそそるってもんだ。」

「おいおい、いいのか?商品に手ェつけたら、兄貴に怒られちまうぜ。」

「構わねぇよ、どうせクスリ打って、調教してから送り届けるんだ。多少はキズもつく、そうだろう?それに、依頼主は処女でなければいけないなんて、一言も言ってねえじゃねえか。」

「おいっ、私をどうするつもりだ!いったいどこに向かってるんだ!」

汚らわしい話題に耐えられなくなった私は、大声で奴らの会話を遮った。周りの皆も耳を傾けている。奴らの話から大体の想像はつく。だが、否定してほしかったのだ。このトラックが向かう先が、絶望であることを。しかしその願いは、無惨にも砕け散った。

「お前らの事を買いたいってお客様がいてよぉ。お前らは今から、お客様好みに調教されて、一生お客様の奴隷として暮らすのさ!安心しろよ、ハードなプレイにさえ耐えられれば、命だけは助かるからよぉ。」

「あ…あぁ…。いや、いやだぁぁぁ!」

子供のように泣き叫ぶ私。気丈に振る舞っていても、所詮は女。こんなところで純潔を散らすことになるかと思うと、吐き気がする。

「うるっせえな!」

パァン

「ひいっ、痛いっ!」

平手打ちが頬を襲う。

「まずはお前から楽しませてもらうぜ。」

魔の手が体に迫る。触れられたくない、息を吹き掛けられたくない!誰か、誰か助けて!

バァン!!

「おいっ、てめえら後ろの窓の外を見てみろ!」

「あ、兄貴、なんでやすか?今からお楽しみってときに…。」

「いいから早くしやがれ!」

「ええ~?なんだぁ~?」

ブオーン

「何だ、あのバイク?何か、俺たちにぴったり付いてきているような…?」

「さっきからずっとだ!たまたまかと思ったが…。気味が悪い。もしかしたら、サツかもしんねぇ。振り切るぞ!」

ギュオーン!

スピードがどんどん上がっていく。それに合わせて、バイクもスピードを上げていく。しかし、所詮は車とバイク。馬力の差で、どんどん引き離し、やがて見えなくなった。

「ふん、まいたか…。さて、お楽しみの時間なんだったな?俺も混ぜてくれよ。」

「へへっ、どうぞどうぞ。」

「ひ…ひぃ…。」

絶望が更なる絶望を背負って帰ってきた。兄貴と呼ばれた男の容姿は、一言で言うなら最悪。こんな男に抱かれるくらいなら、まだ見ぬ依頼主とやらに抱かれてもいい、そんな風に思ってしまった。

もう…おしまい…。そう思った、ちょうどその時、私たちの知らないところで、奇跡の歯車が回り始めていた。


「待ちやがれ、コラアァァァァァ!!!」

トラックが崖の下に差し掛かった時、崖の上から先ほどまいたバイクが飛び出してきた。そしてバイクの後部に乗っていた、ライダースーツにフルフェイスヘルメットの女性が、バイクの座席を蹴ってトラックの荷台の上に着地した。


ガゴン!!

荷台の天井がへこむ。荷台の中からは外の様子は分からない。中にいる全員が、あわてふためいている。次の瞬間、

バギイン!!

スタッ!

天井に立派な大穴が開き、そこから女性が降り立った。

「ふぅ~。いったた~。全く、睦月のやつぅ、覚えてなさいよね!こんな美少女に、バイクからトラックまで飛び移らせるなんて!」

苛立ちを露にするその女性は、見たところ道具も持っていない。まさか、天井を素手で叩き壊したとでも言うのだろうか。

「何だてめえは!どうやってここに!」

「はあ?決まってんじゃない!バイクから、天井に飛び乗って、天井をこの拳で壊して、今ここにいるのよ。って言うか、私に話しかけないでくれる?あんたみたいな犯罪者と話してたら、こっちが気分悪くなっちゃう。特に、か弱い女性たちを拐う、極悪非道な連中とはね!」

「この!ふざけやがってこのアマ!ぶっ殺してや…へぶっ!?」

「話しかけないでって言ってるわよね?分からないの、このクズ!」

盛大な回し蹴りを食らった男は、顎を押さえてのたうち回っている。あの分だと折れているだろう。

「お、おい待てよ。降参だ。こんなの太刀打ちできる相手じゃねえよ。」

「あら、悪党にしては賢いじゃない。今すぐこの車を止めなさい。人質を解放すれば許してあげなくもないわ。」

「わ、分かった…。おいっ、運転手に止めるように言ってこい。」

「へ、へいっ!」

キキイーッ

トラックは道路の真ん中で止まった。深夜なので、周りは誰もいない。

「大丈夫?怪我はない?」

「あ、あの、あなたは?」

「ああ、ごめんごめん。ヘルメットつけたまんまじゃ、怪しいわよね。」

そう言って彼女はヘルメットを外す。ヘルメットの下の素顔は、私なんかよりよっぽど年下の、可憐な美少女であった。

「ふぅ~、あなたたちはもう自由よ。念のため病院に行った方がいいわ。今、救急車を呼ぶから、外で待ちましょう。」


私たちは久しぶりの外に出る。外は真っ暗だったが、何故だろう、すごく明るく見える。矛盾しているのは分かっている。でも明るい。これが希望というものなのだろうか。

「待ちな、嬢ちゃん。」

誘拐犯たちが近づいてくる。

「何よ、まだ何かする気?次は、確実に命を取るわよ。」

「驚いたぜ、まだガキじゃねーかよ。こんな奴にビビってたのかと思うと…苛立ちが止まらねえぜ!」

ジャカッ!

「あんたたち、自分が何やってるか分かってるの?」

怒気を含んだ声は、年端もいかない少女のそれではなく、歴戦の猛者のものであった。

「うるせえ!どうだ、いくら空手が強くても、近づけなけりゃ意味ねえ!拳銃(こいつ)さえありゃあ、俺たちの勝ちだ!」

「後悔…するわよ?」

「強がるのも大概にしやがれ!」


二人が火花を散らしているとき、はるか50メートル上の崖から、二人を見下ろすものがいた。

「暁の奴、何やってんだよ、さっさと拘束しとけばよかったのに…。」

「過ぎたことは仕方ないです。睦月さんは、バイクで下に降りてください。

私のライフルが火を吹いたら、暁さんに加勢して、作戦開始です。」

「OK。あんまりやり過ぎないようにな。」

ブロロロロロ

「さてさて、今日の風は、北東から秒速2.3メートルってとこですかねー。むふふー、絶好のスナイプ日和です!」

ジャキン!

「ターゲットロック!放て、流星(シューティングスター)一撃(ブレイク)!!」

小柄な少女のライフルから放たれた銃弾は、50メートルという距離や、風などをものともせず、さながら流星のごとく、犯人の拳銃に吸い込まれていった。


バキンッ!

「ってぇ!ああっ、銃が!てめえ、何しやがった!?」

「どうやらあたしの仲間がやってくれたみたいね。それにこの音…。睦月!」

キキイーッ

「よう、暁。助けに来たぜ!」

「助けに来たぜ、じゃないわよ。私だけバイクから飛び降りさせるなんて、あんたあの後一体何してたのよ?」

「ワリイワリイ。追いかけようにも、いかんせんトラックが速くてよー。許してくれ、な?」

「駅前のプリン10個で手打ちにしたげるわ。」

「え!?あれ、1個で500円の超高級なやつ…。」

「文句、あるわけ?」

ゴゴゴという音が似合うほどの、禍々しいオーラを出しながら迫る暁。

「ありません…。」

「分かればいいのよ。ああ、楽しみ!」

「やっかましいわぁ!!いちゃついてんじゃねーぞ、コラ!」

「い、いちゃついてなんかないわよ、バカッ!睦月!あいつ、黙らせるわよ!」

「へーへー、お嬢様の仰せのままに。」

ダッ!

二人の足が同時に地面を蹴る。私に見えたのはそれだけ。

次の瞬間には、犯人たちが地面に転がされていた。

「くおっ…。てめえら、一体何者だぁ…。サツが、暴力振るっていいと思ってんのかぁ…。」

「ああ、俺たちは警察じゃねえよ。俺たちは…」

「「特殊民間委託型犯罪撲滅捜査官、略してトクソー!」」

「あんたたちみたいな、クズを捕まえたり、時には消したりするための、警察の外に作られた特殊部隊よ。その力は、総理大臣をも凌ぐ。さあ、観念しなさい!」

「ちくしょう…。ガクッ」

「これにて一件落着ね!皆、ここで見たことは、綺麗さっぱり忘れなさい。この事が外部に漏れると、あたしたち、この仕事続けらんなくなっちゃうの。」

「場合によっちゃあ、あんたらを消さなきゃならん。分かってくれるな?」

私たちは全員首を縦に振る。しかし、何たる恐ろしい組織に助けられたのだろうか。

ピーポーピーポーピーポー

「救急車も来たみたいだし、俺らはそろそろ退散しようかね。」

「じゃあね、そこで転がってるやつらは、警察呼んだから、そいつらが引き取るわ。また会っても、その時は他人だから、ね?バイバイ!」

ブルルンブロロロロロ

行っちゃった。不思議な人たちだった。ちょっとおっかないけど。人には言えない、一夜の思い出。夢か真か、そんなものはどちらでもいい。

「ありがとう!」

もう、夜明けは近い。


大学受験まで後、4か月程と相成りました。今回は、2作品を1話だけ投稿し、どちらも2話以降を、大学に受かってから投稿を再開しようと思います。私事ではありますが、応援していただけると嬉しいです。早く合格して、続きが書きたいです。

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