何時ものように
ヘルメットにペン型カンテラを据え付け、がたつきがないかを確認。
編み上げブーツの紐をくくり直しナイフを太腿に装備。
背嚢を背負い、スコップを持って立ち上がった。
「あら、こんにちは。いつ見ても、不思議な武器ですね?」
受付係の言葉に愛想を返し、侵入確認を受ける。
「確認しました。ではお気をつけて。シーカー」
定型文を背に、私は向かう。
穴蔵へ。
通路の隅を身体を丸めひた歩く。
暗い塹壕を、私のカンテラだけが照らす。
曲がり角だ。
不意に物音。
プローン姿勢になり、カンテラを消す。
耳を澄ませ、目を瞑り視界を慣らす。
私は壁沿いを這う。
角から鏡を覗かせて様子を見る。
居た。
静かに立ち上がり、スコップを構えた。
飛び出しながら大きく振り回したスコップは、奴を深く抉った。
短く持って、突く。
そして柄で殴り付ける。
私は3匹の獲物を仕留めた。
まだ入ったばかりだ。
さっさと進もうじゃないか。
「お疲れさまでした。戦果はどうです?」
受付係に戦果を渡し、換金する。
何時もどおりさ。何も変わらない。
「あぁ、そういえばシーカーに指名依頼がありますよ。受けますか?」
考えておくよ。
「受けてくださるなら、明日の朝にこのカウンターで」
そうかい。じゃあ失礼するよ。今日は疲れたんだ。
小屋に戻り、クソ不味いオートミールを流し込む。
…あぁ、もう、わかってる。
ずいぶん前からね。知ってたさ。
もう、帰れないってね。
死んだんだからね。私は。
死んだんだ。
灰になっていくピエロを見ながら、元の世界を諦めた。
グレイは笑っていたよ。
最後までね。