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じじコン~grandfather complex~  作者: 永嶋大輔
本編
5/8

「離せ」


(たくま)は、(あつし)の肩に回された上級生の腕を掴む。


「いってぇな」

「悪いが急いでいる」

「はぁ?」


逞に腕を掴まれた少年は、逞の手を払い睨み付ける。


「何?お前も遊びたいの?相手してやるよ」


上級生達は逞を囲む。しかし、逞は全く表情を変えずに、もう一度、上級生の腕を掴んだ。


「断る」


掴んだ腕を引っ張り、腰を回し、いわゆる柔道の背負い投げのように、上級生を投げ飛ばした。


「てめぇ!」


他の上級生の一人が、逞の胸ぐらを掴んだ。しかし、逞の表情は変わらなかった。


「やりたければやれはいい。だが、俺が大声を出せば、すぐそこの保健室から保険医が来るぞ。いいのか?」


先程、睦達がいた保健室は、昇降口から数メートルしか離れていない。保険医の菖蒲(あやめ)が駆けつけるだろう。


「くそっ」


上級生達は舌打ちをして、帰っていた。


「帰ろう、睦」

「逞、お前、強いんだな」


何も出来なくて、ただ見ているだけだった睦は、逞の背負い投げを見て、目を丸くした。


「強いよ。だから、睦を守れるよ。だから、睦、隠さないで。俺を頼って」


逞は、睦がいじめられていることを知っていた。睦はずっと黙っていて、逞は、それは自分が弱いから、頼りないからだと思っていた。だから強くなる努力をした。睦に頼ってほしいから。


「知ってたのか、俺が、あいつらにいじめられてるの」

「ああ、でも、睦はずっと隠してた。俺が、頼りないから?」

「違う!」


睦は逞の手を掴んだ。



「恥ずかしかったんだ」


自分がいじめの標的になりやすい人間だと睦はわかっていた。

身長も無く、細くて、白い、小柄な女子のような体。幼い顔つき、低くない声。勉強も運動も平均以下。

彼にとって、いじめられていると伝えるのことは、自分のコンプレックスをさらけ出すようなものだった。


「かっこわるい、だろ」

「かっこわるくなんかない!」


逞は、掴まれた手を握り返した。


「努力してるの知ってる。いじめてる奴らに負けないって、頑張ってるの、知ってるから!だから、かっこわるくなんかないよ、だから、頼ってくれ」

「頼ってるよ、たくさん頼ってるっ」

「もっとだよ。もっとだ」


酷いいじめにあっても強く生きていけるのは、逞が、優しくしてくれ、傍にいてくれるから。

逞は、睦にとって祖父の次に大切な人間だった。いじめられてるのを隠してたいたのは、恥ずかしかった、心配をかけたくなかった、そして、逞に何かあったら嫌だから。


「俺は、逞に何も出来ない」

「何もしなくて良いんだ。ただ、一緒に学校行って、時々遊んで、それだけで良いんだ」

「そんなん、得しないじゃん」

「睦、(あきら)さんと、得したいから一緒にいるの?」

「そんなわけないだろ!」

「俺もそれと一緒だよ」


ニコリと笑う逞に、睦は何も言えなかった。


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