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crown taker  作者: 九JACK
慌てない慌てない、一休み一休み
95/125

第95話「合唱コンクールって略すと合コンになるよな」

 失明の他にも能力の一時的な使用不可能、精神的摩耗による同調能力の暴走やそれに伴う身体的な暴走により二次災害として怪我をしたり、器物損壊をしたり、拘束具のお世話になったりと、それはまあ散々な目に遭った俺だが、知実さんの適切で賢明な処置もあり、病欠は一週間で済んだ。

 [傀儡王(パペットマスター)]はまだ完全回復に至ってはいないが、目は治ったし、まだ試作段階ではあるが、同調能力を和らげる薬も服用して、精神も安定してきた。学校生活を送るには支障のないくらいまできただろう。

 ということで、一週間振りの学校である。精神錯乱を起こしたため、通院して様子見ということで病欠となっていた。まあ、心配する友達もいないからいいけどな。

「よお、咲原! 無事か?」

 いた。

 小学校の頃からの腐れ縁、名を佐竹明宏。いや、俺はこいつを友達と思っていないし、たぶんこいつも俺を友達だとは思っていないだろうけど、なんだかんだ付き合いが長いのは事実である。

 実際、俺の無事を確認する奇特な人物でもあるわけだし。

「無事だよ。五十嵐も普通にしてるだろ」

「そこで一番に五十嵐の名前出す辺りは相変わらずだな」

 悪いか。

「なんか色々あったみてえだけどな。倉伊とはぎくしゃくしてるし。痴話喧嘩か?」

 野暮なことは聞かないで弁えている辺りも好感が持てる。からかいの色が多いけどな。

 五十嵐と倉伊がぎくしゃくするのは仕方ない。俺ですら二人が異母兄妹だなんて俄には信じ難いのだ。当人同士だと受け入れがたいだろうし、共通の親である五十嵐李王はとんでもないくそ親父ときた。どう接したらいいかわからなくなるだろう。

 佐竹が痴話喧嘩と表現するのは、煽っているのだ、俺を。

 俺が五十嵐のことを好きだと知っているから。

 五十嵐を嫌いなやつは少ないだろうけど、恋愛的な意味で好きなやつって他にどれくらいいるんだろうな……それはいいとして、要は「コクれ」ということなんだろうな。

 残念ながら、今の五十嵐は青春の酸いも甘いも味わっている場合ではないのだ。俺も、視力は回復したけど、万全ってわけじゃないし。

「知らん。まあ、そんなことより……これはなんだ」

 佐竹がものすごくさりげなく俺の机にチラシを置いていた。そこには[黒輝山合唱コンクール]と書いてある。

「見ての通り、合唱コンクールのご案内さ」

「合唱コンクールとは別に、秋に音楽祭あるんだよな、この学校」

「合唱コンクールや音楽祭とは別に文化祭もあるぞ」

 意味がわからないイベントの多さを誇る、それが黒輝山学園である。佐竹はそのイベントの全ての裏方を担当する行事実行委員会に名を連ねている。

 佐竹はチラシをすっとずらして俺にもう一枚の紙を見せる。そこには「合唱部は楽しいよ」の文字が。

 黒輝山は難易度が高い割に入学する生徒を篩にかけるため、全校生徒が少ない。つまり、部活ごとに割ける人数が少ないわけである。

 もはや遠い記憶の気もするが、多種目競技混合体育大会でも陸上部とか運動系の部活が勧誘のビラを配っていた。もちろん俺がそんなものを受け取るわけもない。

 部活なんてするのはほとんど陽キャどもだ。コミュ力おばけの割に俺みたいななるべく人と関わりたくないタイプの空気を読めないへらへらしたやつらの中に重度のコミュ障の俺が進んで入るわけがない。

「咲原は部活入ろうとか思わねえわけ?」

「思ってたら帰宅部なぞやらん」

「だよなあ」

 佐竹は行事実行委員会のため、部活に入れない。というか、入ってもろくに参加できないだろう。それくらい行事実行委員会は忙しいのである。

 黒輝山のやたら多い行事は部活動勧誘の側面がある。だからあんな運動会のようなことをやったにも拘らず、全校野球大会と球技大会が別々にある。

 で、合唱コンクールの話に戻るが、おそらくこれは二、三日前に配られたものだろう。そろそろクラスで話し合いが行われるはずだ。

「今年の課題曲は[白と青と黒と赤と]だそうだ」

「へえ。結構人気曲じゃないっけ」

 [白と青と黒と赤と]とは、民放の十五分アニメで使われたオルゴール版が人気な曲だ。素朴ながらに愛らしい曲調で、癒し系の歌と人気だ。一般社会に疎い俺でも曲名くらいは知っているように。

「さて問題です。アーティストは誰でしょうか」

「俺が知ってると思うか?」

「だよなあ」

 安心するなよ。

「でもこのグループ、最近癒し系童話風ソングで人気なんだぜ。[HITOKATAeyes]っていうんだけど」

 癒し系童話風ソングってなんだ?

 俺がわかりやすく疑問符を浮かべていると、佐竹は携帯端末を操作して画面を見せてきた。

「[HITOKATAeyes]自体は五年くらい前からある女性シンガーグループなんだけど、癒し系の曲が結構あるんだぜ。入眠ソングとしての曲を求めるやつらの間では、オルゴールアレンジもあるから人気でな。ドラマのBGMでも使われたこともあったんだけど、知名度がばーんと上がったのはアニメで使われたときだったな」

 佐竹のプレイリスト欄はほとんど[HITOKATAeyes]で埋まっている。これはもしかしなくとも。

「ファンなのか?」

「いかにも」

 こいつとは腐れ縁だが、こいつの好き嫌いなんて今まで気にしたことがなかった。なんか趣味みたいなのちゃんとあったんだな。

「誠に遺憾なことだが、俺は実行委員会の仕事が忙しくて合コンには出られない」

「……なにて?」

 真面目な考えが吹っ飛ぶ発言が出たな。

 しかし、佐竹は大真面目な顔で言った。[合唱コンクール]の文字列の[唱]と[クール]の部分を手で隠しながら。

「合唱コンクールって略すと合コンになるよな」

「ならねえよ」

 すぱん、と頭を叩いておいた。

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