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crown taker  作者: 九JACK
多種目競技混合体育大会
8/125

第8話 「類は友を呼ぶんだよ」

 半田 美月。黒輝山学園一年四組の女子生徒。俺によく絡んでくる。五十嵐とは会えば口喧嘩という仲。佐竹によれば美人の部類に入るらしいので狙っている男子も少なくないのだとか。俺はいまいちよくわからないけれど。というか、この子に対して好印象が全くない。

 半田 美月は超能力者である。原因はここに起因するのだ。


「ねぇ、咲原くん、ちょっといいですか?」

「俺に平和な昼休みをくれる気はありませんか?」

「なんでいつもつれないんですか……」

 ほぼ日常と化してきた昼休みの会話。半田はわざわざ一組の教室まで毎日足を運び、俺に話しかけにくるのだ。

 野次馬根性全開の佐竹なんかは

「毎日通いづめなんて健気じゃねぇか。ちゃんと相手してやれよな!」

 などとからかってくる。ったく、他人事だと思って調子に乗りやがって! ──いや、他人事だろうけどさ。

 半田が通いつめる理由。

「咲原くん、ちゃんと考えてくれました? 私の組織に入ること」

 彼女は特能者保護組織[WHAT]に所属している超能力者で、[傀儡王(パペットマスター)]という強力な能力を持つ俺を組織へ勧誘しているのだ。

 普通に考えれば、今時[特能者(=超能力者)]とか、[組織]とか言っていたら中二街道まっしぐらだと思われるに決まっている。たとえそれが妄想ではなく、事実だとしても、だ。

 中二病だなんだというのはからかうための格好のネタだ。ただでさえ佐竹に中二と思われているのに、これではクラスメイト全員にまで間違った認識が広まってしまう。

 そんなわけで、この半田の熱心な勧誘は迷惑この上ないのだ。

「っていうかさ、俺、最初からずっと断ってるよね? よく懲りないね」

「ぜひぜひ組織に入ってほしいからですよ!」

 棘を含んだはずの台詞もハイテンションでスルーされてしまう。

「だから、それがなんでだよ?」

「咲原くんはすごい特能の持ち主なのですから、組織に入って特能を磨くべきなんです!!」

「咲原は嫌だと言っているだろう!!」

 脇で見ていた五十嵐が耐え兼ねて割り込む。それはもはや恒例の中二病たちが繰り広げる不毛な論争の始まりを意味していた。

 頭を抱えたくなりながら、にやにやと視線を送ってくる佐竹を見やった。

「なあ、佐竹」

「どうした?」

「どうして俺の周りには中二ばかりが寄るんだろうか?」

 俺の問いにいっそうにやりとして佐竹は答える。

「類は友を呼ぶんだよ」

「どういう意味だよっ!?」

「諦めろって。お前は立派な中二だ」

 爽やかに言うことかよ……と思いつつ、不毛な戦いに目を戻す。

「だからその能力育成については強力なバックアップが既にいるから必要ないと言っているのだ!!」

「[WHAT]以上のバックアップなんてそういません!!」

 頑として譲らない半田の様子に業を煮やした五十嵐が俺にアイコンタクトを送ってくる。

 同調して、言いたいことを把握。ちょっと苦いものがこみあげるが、それで半田を振り切れるなら別にいいか、と頷きを返す。

「納得いかんようだから教えてやろう。咲原のバックアップにはな、佐倉氏という名の科学者がいるのだ」

 伝家の宝刀、知実さん。いや、知実さんが奥の手って──まあ、超能力絡みの世界じゃちょっとした有名人らしいから、退いてくれるかもしれない。

 結構大きめの可能性に希望を抱きながら、半田の反応を見ると

「なっ、佐倉ってまさか、あの佐倉 知実博士!?」

 "あの佐倉 知実"って、他にどんな佐倉 知実がいるんだよ? っていうか博士って……まあ、超能力の研究者だから、間違ってはいないかもしれないけれど。

 ん? っと、待った、この反応、嫌な予感がするのだが。──俺の予測を裏付けるように好奇心をたっぷり瞳に湛えた半田が、ずいっ、と迫り気味に訊いてきた。

「咲原くん、本当ですか!?」

 あー、この質問、絶対に答えない方が俺の望む今後のためにはいいに違いないが、半田がそれを許してくれそうにない。

 仕方なく、溜め息まじりに答えた。

「佐倉 知実は俺の叔母だよ。色々あって、今は保護者やってもらってる」

「ななななな、なんと! 咲原くんはあの佐倉博士の甥御さんでしたか!!」

 半田、キャラ変わってるぞ、と言いたいが、おそらく今は通じないだろう。こんな目を俺は知っている。確か、畏敬の眼差しとかいうやつだ。

「さ、咲原くん、よろしければ、佐倉博士に私を紹介していただけませんか?」

 イエス以外の解答を求めていない質問から逃避するように佐竹を見た。

 案の定、にやついていた。

「お前の叔母さんも、そーいや中二だったよな?」

 返す言葉が見つからない。

 佐竹の次の台詞は俺に止めを刺すのには、充分すぎる一撃だった。

「言ったろ? やっぱ類は友を呼ぶんだって」



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