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crown taker  作者: 九JACK
俺は中二病じゃないんです、本当に。
3/125

第3話 「何が面白いんですか」

 珍客──佐竹が前に言っていた。俺のところを訪ねてくる客を総称してそう呼ぶんだ、と。あのときはからかわれていることがわかっていたので怒ったが、今は全面的に同意する。今、俺の目の前にいる女の子を珍客以外の何と呼んだらいいのか、わかる人がいたら教えてほしい。

 珍客ポイントその一。初対面なのに俺の名前を知っている。

 珍客ポイントその二。女の子。

 珍客ポイントその三。この子は間違いなく超能力者だ。

「咲原に用か?」

「はい。……あなたは誰です?」

 珍客ポイントその四。俺を知っているのに五十嵐を知らない。学年主席入学者なんて、目立つだろうに。

「それで、あの、込み入った話なので、席を外してもらえませんか?」

「む? 私がいると問題があるのか?」

「秘匿事項なので無関係の人間には話したくないのです」

 秘匿事項、という怪しげな言葉に頭が凍りついた。──しまった、この子も中二か!

「無関係ではないぞ。私はこのcrown taker咲原 唯人を守る定めの下に生まれた[万能な兵士オールマイティラウンダー]だ」

「何をっ、特能者でもないくせに偉そうに!」

「超能力者が偉いのか? それは断じて違うな。能力の有無に関わらず、人は平等だ!」

「あらあら矛盾していますわ! それでは咲原くんをcrown takerと呼んで特別扱いしているあなたは何ですの?」

「crown takerは能力者の呼称だ! それで咲原の身分をどーのこーのと言っているわけではない!!」

「ほうほう、それでは私もcrown takerということになりますねぇ」

「何!?」

 第三者からすれば不毛すぎる論争が、ここで一旦止まった。

「おい、お前もcrown takerだと!? どういうことだ!?」

「あ、えっと、その……」

 五十嵐の優勢に変わる。半田は五十嵐の勢いに飲まれて戸惑い顔だ。おそらく言い過ぎたというのもあって口をつぐんでいるのだろう。

「そのくらいにしてやったら? 五十嵐」

「咲原」

「ここ図書室だし、静かにしないと」

「うむ、そうだな」

「半田も、諦めてここで話しなよ」

「……はい」

 一転してしょんぼりする半田の様子がおかしく思えて、つい笑ってしまった。

「何が面白いんですか」

「いや、何でもない。それで、話って?」

「まず、改めて自己紹介します。私は特能者保護組織[WHAT]に所属しています、半田 美月と申します」

「特能者保護組織?」

「[WHAT]とは面白い名だな」

 半田によると、超能力者=特能者で、秘密裏に組織された非営利組織らしい。特能者の育成、保護を行っているのだという。

「咲原くんの[傀儡王(パペットマスター)]の能力は危険視されているため、咲原くんも命の危険が多いと思うんです。私たちはそういう特能者も保護しています。だから、加わってみませんか?」

 つまり、組織への勧誘ということか。

「私たちに加わってくだされば、能力向上だって望めますし、身の安全だって仲間たちが守ってくれます。どうです?」

 この話を聞いて、俺の中にあったのは多種多様ながらも結果的には一つの感情──恐怖だった。

「ごめん、無理」

 即答。半田がええっ!? と驚きの声を上げる。俺は理由を続けた。

「俺、コミュ障に対人恐怖。人が多いとこ、知らない人と話すの、無理。あと、能力向上は、足りてるから」

「足りてるってどういう……?」

「足りてるったら足りてるんだ!!」

 俺の脳裏に浮かんだ人物に、一瞬背筋に悪寒が走る。

 私の研究を差し置いて、そんなどこの馬の骨ともわからん連中についていくのか。失望したよ。……ん? 押し売りされた? ならばお前には断れまい。それはどこのどいつだ? 私が少々灸を据えてやろう──なんて、あの人が言う姿が何故だろう、明瞭に浮かぶ。

 駄目だ。あの人に会わせちゃいけない。

「か、帰る。もうなんかやだ。うん、帰るよ」

「ちょ、咲原くん!?」

「帰るったら帰るんだ──!!」

 今の俺の声が、今日の図書室の中で一番うるさかったかもしれない……


「五十嵐、どこまでついてくる気だ?」

「うむ、今日はそっちの方に用があるのでな。ついでにお前の家にも寄らせてくれないか?」

「……あの人が許すかなぁ……?」

 俺の保護者は、かなり難儀な人だ。

「そこは私の交渉術の見せどころだろう」

 案外、大丈夫かもしれない。

「ところでお前の家の家族構成はどうなっておるのだ?」

「俺と、叔母さんが一人」

「父母兄弟は?」

「いない。──あそこだ」

 五十嵐の問いをばっさり切り捨てたところで、ちょうど我が家が見えてきた。

 俺の家はすぐにわかる。

 何故なら、白衣の叔母が悠然と家の前で待ち構えているからだ。



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