第22話 「美人だってさ」
やっとここまで辿り着きました。
ローくん登場です。
黒輝山学園はマイナーな私立校でありながらもランクAの難関校である。すると当然、途中編入の試験も難しいはずなのだが。
どういうわけか、俺、咲原唯人のクラスにその試験を楽々突破した人物が転入してくるらしい。
「転入生は家の事情で今日は午後からだが、仲良くしていきましょう」
「……だってさ」
佐竹が後ろで先生の言葉を継いで言った。
「どう思うよ、咲原?」
「なんで俺に聞くんだよ?」
「そりゃあ、この時期の転入生なんて大抵謎の設定持ってるだろう? 中二のお前の管轄じゃないか」
「俺は中二じゃない……」
このツッコミもだんだん飽きてきた。
俺、咲原唯人は超能力者である。能力は[傀儡王]と呼ばれるもので、対象者の名前を呼び、命令することで従わせることのできるものだ。使いようによっては危険なものとなりうるため、それを恐れる人々から命を狙われている。……という端から見ると中二にしか見えないという状況に実際に陥っているのだが、佐竹はなかなか信じてくれない。
「噂が色々あるんだが、耳寄りなところといえば……その転入生、美人だってさ」
「へぇ、女の子なんだ」
「後ろ姿だけだったらしいけどな。なんと驚くべきことにとっても綺麗な金髪だってさ」
「へぇ……えっ?」
さりげなく流してしまいそうになったが、普通ではあり得ない一言があった気がする。
「金髪?」
「金髪」
「日本人?」
「噂によれば、母親がイギリス人らしいぜ」
「ハーフ?」
「たぶんな」
佐竹はつまらなさそうに続けた。
「でも、通説じゃ母親似よりも父親似の娘の方が美人だってのがあるし。あんま期待できねーな」
「でも通説は通説であって、母親似でも美人な子は美人だろ? ほら、五十嵐といういい例がある」
五十嵐は俺の友人で、才色兼備を絵に描いたような人物だ。このあいだ母親似ということが明らかになった。
「まあ、そうだけどよ……って、お前はやっぱり五十嵐を引き合いに出すのか。ったく、憎たらしいったらありゃしねぇ」
「……や、俺、五十嵐くらいとしか話せないし」
逃げ回り生活のせいで対人恐怖症になってしまった俺は、特定の人物としか会話が成り立たない。
「ま、それはもうとやかく言ったところでどうしようもないからおいとこう。五十嵐みたいに母親似でも美人な子はいるさ。少ないけどな」
「通説に囚われすぎるなって」
「いいか、咲原。通説ってのは高確率で正しいから通説なんだ。ちなみに、母親似の男子ってのも美人になるらしいけどな」
その日の昼休み。転入生が来たので臨時ホームルームが行われた。
クラスのほとんどが浮かれていた。
「では、入ってきてください」
「はい」
先生に答えた声ではまだ少年とも少女とも判別がつかず、扉が開く瞬間をクラスの誰もが息を飲んで見守っていた。
佐竹から聞いたとおり、綺麗な金髪が目に入った。顔立ちは優しげで、美少女という印象。しかし、その転入生は男子制服を着ていた。
「こんにちは。今日からこのクラスでお世話になります、倉伊ロデオといいます。よろしくお願いします」
丁寧な日本語での挨拶に一同ぽかんとする。
「えっと……僕は父親が日本人ということもあって、一応日本語の勉強もしてきたんですけど」
ぽかんとされた方は戸惑いながら捕捉した。
「あーなるほど」
「ハーフって噂は本当だったんだ」
口々に納得した。
佐竹は俺を見て言った。
「お前の方が当たったな」
半ば唖然とした様子のまま続ける。
「母親似でも美人は美人だ」
「いや、お前の通説が当たってたんだよ」
「ん?」
もう一度転入生を見やり、情報を整理してからはっきり告げた。
「母親似の男子は美人だっていう──な」




