村の仕事1
気持ちよい満腹感を抱きながら村の広場へ向かうと、たくさんの人が集まっていた。
少し視線をずらすと、木で出来た部品と思われる物が山積みされていた。
何だろう?
木材から完成形が全く想像できない。
ただ、すべてを組み合わせるのであれば、かなり巨大なものになりそうだ。
「バルト!! こっちだ!!」
どんなものが出来るかを考えていると、集団の中から俺を呼ぶ声が聞こえた。
呼ばれた方を見ると、大きく手を振っているキールの兄貴が居た。
「兄貴……じゃない、キールさん、おはようございます。」
俺は走り寄って挨拶をした。
「ああ、おはよう。昨日から思ってたけど、言い直した意味が全くないだろ、それ。もういいよ、好きに呼んで……」
諦めの表情だ。
だが、この好意は遠慮無くいただきます。
「じゃあ、キールの兄貴で!!」
周りの人が、キールの兄貴を囃し立ててからかっている。
……楽しい。
うん、からかわれるのが自分じゃないからだな。
「あ゛、おめーが元凶のくせに、ニヤニヤしてんじゃねー」
怒られた。
しかも、こわ!!
もちろん、速攻で謝った。周りの人に笑われたけど、俺は保身を取る!!
「ほらっ」
キールの兄貴が、直径が1メートル位の木で出来た物体を転がしてきた。
形は円形で、外側に小さな桶のようなものがいくつか取り付けてある。
ひとしきり見たけど、さっぱり分からない。
「なにこれ?」
「水車というらしい。見たことなかったか?」
俺は頷いた。
見たこと聞いたこともない。
「これは模型だけど、あそこに置いてある木材で、同じような物を作るんだ」
木材を改めてみると、確かに模型の一部を形作っていた。
つまり、この模型の巨大なものが出来るのか。
だけど、これで何をするのかが全く分からない。
「おっ、分からねーって顔だな」
キールの兄貴が嬉しそうだ。
……なんか、悔しい。
「これは、川の水を村まで引くのに使うんだ」
「えっ、でも」
川から村までは、勾配があって水は流れない。それは、地図で確認していたし、実際に村まで来る際にも実感できた。
だからこそ、水汲みの仕事があると思ったんだし。
「まあ、水車は水を汲むだけで、水は水路を通すんだけどな」
水を汲む?
模型に桶のようなものが着いてるから、これに水が入るのかな?
うーん、イメージが湧かない。
「説明が難しいな。とにかく、見れば分かるさ」
「分かった。どうすればいいの?」
そういえば、手伝いの内容を何も聞いてない。
「取りあえず、材木を川まで持って行くのを手伝ってくれ。組み立ては川の近くでやるから」
なるほど。
ここで組み立てると、運ぶのが大変になるんだろう。かなりの大きさになるみたいだし、重さもそれなりだろう。
俺は皆と一緒に、嬉々として材木を運び始めた。