村での休息2
鳥の鳴き声で、微睡みからの覚醒を促される。
緩慢な動作でベッドから降りると、木の板で閉ざされた窓を両手で開ける。
せき止められていた水が勢い良く流れ出すように、朝日が差し込んできた。
「鳥の鳴き声が響く、さわやかな朝……」
これが小鳥の囀りで、春の日差しならばさわやかな感じなんだろうけど。
辺りからは、コケーと大音量の鳴き声が響く。それも、何十羽、何百羽の大コーラスだ。 それに加え、ジリジリと焼かれるような夏の日差し。
「五月蠅い、暑い、眠い……」
村長さんに仕事がないか聞かないと。
昨日は、色々と精神的ダメージを食らって、それどころじゃなかったし。
これからの予定を考えながら、身支度を調える。
準備が終わって部屋から出ると、村長さんが丁度向かってきていた。
「おはよう」
「おはようございます」
「丁度良かった。朝ご飯の準備が出来たから、一緒に食べよう」
「すいません。お手伝いも何もしないで」
そういえば、夕飯もご馳走になって、なにも手伝ってない。
宿代もいらないと言ってくれてるのに……。
これからは、家のことを手伝わないと。
「そんなことは気にしなくていいよ。それよりも、一緒にご飯を食べてくれると嬉しいな」
村長さんは、今日も柔らかく微笑んでいる。
胸の奥が、ホンワカと暖かくなる。
「はい。是非」
なんだこれ!?
卵がめちゃくちゃ旨い。
「気に入ったようで良かった。朝の五月蠅さを挽回する味だろう?」
手に取ったゆで卵を凝視していると、村長さんが嬉しそうに頷いている。
何だろう?
この、心の中が覗かれたかのような恥ずかしさは……。
間違いないから頷いたけど。
「仕事は今日からで大丈夫かな?」
「はい」
いつの間にか、手から消えていた卵を補充しながら頷く。
あれ?
俺、仕事が欲しいって伝えたっけ?
「昨日、キールから話しを聞いたんだよ。それで、折角だから組み立ても、一緒にやってもらおうと思ってね」
止めどなく溢れてくる歓喜が押さえきれない。単調かつ重労働な水汲みを想定していただけに、喜びもひとしおだ。
キールの兄貴、本当にありがとう!!
「そこまで喜んでくれるなら、きっとキールも嬉しがるよ」
「はい」
でも、組み立てって何を創るんだろう?
そういえば、キールの兄貴も教えてくれなかったしな。
「それは、ギリギリまで秘密にしたいそうだよ」
村長は、子供の小さな悪戯を微笑ましく見ている感じだ。
うーん。気になる。
でも、それよりも……。
俺、さっきから「はい」としか言ってないよね。
何で会話が成立してんのさ!?
「バルト君は素直だからね」
顔だけじゃなく、首まで熱くなったのを感じながら、ひたすらに俯いた。