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異常な愛と約束

 僕は今日、陽子ようこの住む「ひまわり農場」の場内で、陽子が見知らぬ男とキスを交わしているところを目撃した。陽子は、僕と子どものころに交わした約束を破ってしまったんだ。

 子どものころ、僕と陽子は幼なじみということもあって、よく遊んでいた。あのときは陽子の家で遊んでいたときだったな。今と変わらず、ひまわりがきれいに咲いていたことをよく覚えている。そこで、僕と陽子はトランプゲームをしたんだ。まぁ、子どもながらに下心はあった。トランプゲームに僕が勝ったら、「大人になったら、一緒にこのひまわり農場に住もう」と宣言した。えらく気の早いプロポーズだったと今は思う。でも、陽子は僕に笑顔で「うん」と言った。僕のプロポーズは正式に受け入れられたんだ。

 約束を破った陽子に罰を与えなくちゃ。代償は、命で償ってもらわないとね。

「ふふっ。許さないよ陽子。そんなことをしたら、悲しんでしまうじゃないか」

 早く寝て、早く起きよう。ちゃんと、罰を受けるところを見てもらわないといけない。


 気持ちのいい朝だ。ひまわり農場のひまわりたちも気持ちよく光合成していることだろう。でも、ごめんね。ちょっと汚い鮮血がかかってしまうかもしれない。

 陽子は、朝からひまわりたちに水をやっている。ひまわりの世話をしている陽子は本当に美しいな。

「やぁ。久しぶりだね」

「あらっ、久しぶりね常暁つねあきさん。こんな朝早くにどうしたの?」

 僕に向けてまぶしい笑顔を向けた。これだけ美しいのに、どうしてこんな悪い子に育ってしまったのか。

「罰を与えに来たんだよ」

「きゃっ! 何をしようと言うの」

 ナイフを見せた途端に顔色を変えた。顔色を変えたいのは僕の方だというのに……

「勝手なことを言うな! 君は、約束を破った。ひまわりの前で交わした約束を、あろうことかひまわりの目の前で破ったんだ」

「な……なんのこと?」

「ひまわりは純粋なんだ。君が約束を破るような子だと知ったら、悲しんでしまうだろう? だから、その罰を与えにきたんだ」

「わ……わけが分からないわ! だれか……だれか!」

 陽子は、どうして悲痛な表情を浮かべているのだろう。だれよりも悲痛な表情を浮かべたいのはひまわりだ。育て親がこんな子だと知ったひまわりに、かけてあげられる言葉も見つからない。


 僕の目の前に、鮮血を流して息絶えた陽子の姿がある。しかし、思った以上に血は飛ぶんだな。ひまわりに少しかかってしまったじゃないか。

「陽子、僕も同じだよ。僕は、君に罰を与えたことで、また新たな罰を生んでしまった」

 ごめんねひまわり。今、拭いてあげるから。今度はいい人に育てられるんだよ。

「うん。やっぱり、ひまわりは赤より黄色の方が美しい」

 陽子、どうしてこうなってしまったんだろうね。僕は本気だったんだよ。本気で、陽子とひまわり農場に住みたかったんだ。ひまわりと陽子は、互いの魅力を高め合えるベストパートナーだと、僕は思っていたからね。なのに……

「さよならひまわり。僕も陽子と同じように、命で償ってくるよ。大丈夫、どこか遠いところで罰を受けるから。もう、君を汚したりなんかしないよ」

 僕は、非情な運命を呪いながらひまわりを見つめた。でも、これは仕方のないことなんだ。僕たちは、ひまわりを悲しませてしまったのだから。

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