表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Lake!  作者: ぽこ
1/1

そのよん!

前が良く見えない・・・

動きにくい・・・

何を隠そう俺の全身はアマガエルの着ぐるみに包まれていた。

これだと意味が分からんか。

そうだな、昨日に戻ればこの状況を分かっていただけると思う。

であ、回想スタート

「ついに明日だな、文化祭。」

さっちん先輩が言う。

「でも、俺達良くやりましたよ。正直こんなにいけるとは思っていませんでした」

俺達はこの二週間、気合で練習し続けみんなで合わせられるところまで成長していた。

「これなら本番は大成功間違いなしだよ!サインの練習しなきゃ~」

小雪先輩は浮かれまくっている。

しかしその小雪先輩の成長速度といったらハンパじゃなかった。

俺よりも早く曲マスターしたからな。それに小雪先輩は歌も相当上手かった。

素人の俺が聞く限りではプロと変わらない。もしかしたらこの人は、天才かもしれない。

でも小雪先輩は褒められると調子に乗るので俺は何も言わんがね。

「練習はもう終わりでいいだろー」

疲れた顔でさっちん先輩が言う。

「そうだね、だけど私達にはまだやらなきゃいけないことがあったんだよ」

やらなきゃいけないこと?

「何するんですか?」

「我が軽音部の初ライブのビラ配り!」

確かに宣伝は大事かも。さすが美涼先輩、やる気入ってるな。

「いいですね、やりましょ」

「本当!じゃお願いするねー」

笑顔で美涼先輩が言う。

「え?先輩方は配らないんですか?」

戸惑う俺。

「私達はクラスの出し物があるから・・・」

「ビラ配りの衣装も用意してきました!」

小雪先輩がごそごそとやたらでかい箱を取り出す。

「なんの服なんです?あんまり変なのは嫌なんですけど」

「ジャジャーン!」

箱から姿を現したのはカエルの頭だった。

え・・・・?

続いて下半身が取り出される。

「俺、これ着て配るんですか?」

それはどうみてもアマガエルの着ぐるみだった。

「そうだよ!可愛いでしょー」

「確かにこれは目立っていい宣伝かもな」

あー君先輩が勝手にそんなことを言う。

「じゃ、頑張って」

さっちん先輩は面倒くさそうでカエルなんかどうでもいいようだ。

「ホワイ!てかこんなのドコから持ってきたんですか!?」

「よくぞ訊いてくれた!私が自腹を切ってネット通販で買ったのさー」

胸を張る小雪先輩。

「このこと雪に言ってからまだ4日も経ってないよ・・・よく用意したね」

美涼先輩は呆れかえっている。

「じゃぁ小雪先輩が着ればいいでしょ!」

何でわざわざ俺が着なきゃいけないんだ。

「私もクラスの出し物サボってでもそれ着て配るつもりだったんだよ。でもねー家で着てみたんだけどそれ、重いんだなー私じゃ無理だった」

「そういうことは買う前に考えてくださいよ!」

「てことでおとなしくこれ着てビラ配って~」

「そうだ!あー君先輩が着てください」

涼しい顔して見てるだけなんてずるい。

「へ?別にいいけどー」

あー君先輩がカエルの頭を自分に装着。

「これ、視界マジ悪いな。下はどこだよ」

ハイと美涼先輩が手渡す。あー君先輩が下半身もカエルになりきったと思いきや

「・・・」

カエル着ぐるみはあー君先輩には小さすぎた。

服の上からあー君先輩のたくましい体つきが浮き出ていて凄く気持ち悪い。

「こりゃ、無理だな。まじきもい」

ボソッとさっちん先輩が言う。

「やっぱりふとしくんしかいないんだよ!」

小雪先輩があー君先輩からカエルの頭をもぎとり俺にかぶせる。

続いて手渡された下半身も装着。

「似合う似合う~♪」

小雪先輩が拍手する。

いや、着ぐるみに似合うとか似合わないから。

「本当にこれでビラ配るんですかー?」

「軽音部のために頑張って!」

美涼先輩も止める気はないらしい。

「美涼先輩達も制服でビラ配ってくださいよー」

「無理無理、クラスの出し物はサボると面倒だから」

「私もそれ着れないんじゃリスクを背負ってまでサボる気になれません!」

と小雪先輩。

「あー君先輩は~?」

「俺色々あるから舞台発表直前に行くー」

「・・・」

絶対何にもないと思う。面倒くさいだけだ。てかじゃあなんでさっきカエル着たんだ・・・

この人が考えることはよく分からない。

こうして俺はアマガエルとなってビラを配ることになった。

次の日、土曜日。

俺は朝から若葉高校に向かっていた。

前までは靴下で侵入していたが、めでたく学校側にも承認された俺達2人は上履きを持参するようにしている。

部室前に到着。現在9時半前、こんな時間に来たのは初めてだな。

俺はドアをノックと同時にバックステップ、恐ろしい勢いでドアが開く。

「へいらっしゃい!」

「小雪先輩はたこ焼き屋でもやるんですか?」

「!何で分かったの?」

「いや、挨拶がお店っぽかったのとそのねじりハチマキでなんとなく」

まさか当たるとは。

「先輩方、こんちは」

部室に入る。部屋にはあー君先輩を除いた全員。

「今はおはようじゃないのかー」

さっちん先輩に訂正される。

「・・・おはようございます」

「うむ、おはよう」

「私達そろそろクラスの出し物行っちゃうから、早くカエル着て太一も外出て」

「分かりました」

部屋の隅に緑色の布がはみ出したダンボールが置いてある。

「さぁさぁ、着なさい」

小雪先輩がダンボールを持ってくる。

俺は特に抵抗することも無く着々とアマガエルになった。

「ビラはどこですか?」

声がこもるな。

「これこれ」

さっちん先輩に藁半紙を手渡される。

『軽音部初ライブ!

 みんな来てネ!』

内容少な!枚数多!100枚以上あるぞ。どんだけ配ればいいんだ・・・

「これを校門前あたりで配ればいいですか?」

「うん、頼むね。でも2時には部室に帰って来て。2時半から本番だから」

「そいえばリハとか無いんですか?」

「いらないと思ったから断ったよ」

さっちん先輩が言う。

いらないと思う要素がいったいドコに・・・!

「・・・では配ってきます」

「私達もクラス行くよ!」

美涼先輩に連れられ全員で部室を出る。

以上で回想を終わる。

さて、配り始めたはいいんだが、あまり受け取ってもらえない。

受け取ってもらえない原因はこの着ぐるみだと俺は考えるね。

この着ぐるみ、なんか可愛くないんだよな。薬局のカエルの中国版みたいな。

このままじゃ絶対配りきらないと思う。

2時間は配っただろうか。カエルの着ぐるみを着ながら携帯で時間を確認。

まだ10時40分・・・ずっと立ちっぱなしだし、スゲェ疲れる。

近くの石段に座りながら配ろうか。

そう思ったとき小学生がこちらに歩いてきた。人数は2人。

「あ、カエルだー」

「マジだ、でも顔不細工じゃね?」

着ぐるみのことだと分かっていてもむかつく。

「色もなんか毒々しいし(笑)」

とりあえず藁半紙を渡してみる。

「かる、おと、ぶ?何これ」

「バカだな、かるおんぶだろ」

頭の悪いガキ共だな。

「軽音部だよ」

つい喋ってしまった。

「うわ、カエルしゃべった!中男入ってんぞ」

「殴ってみようぜ」

腹をどつかれる。痛くはないがウザイ。

とりあえずやめてのジェスチャー。

「面白!」

2人がかりでドスドスやられる。

やめてやめてのジェスチャー。

ドスドス。

やめてやめて。

ドスドス。

ボコッ!

「痛ったぁぁ~」

ウザかったので殴ってしまった。

男の子Aは半泣きである。

俺は男の子Bを見た。

「カエル切れてるよ!よっちゃん行こ」

男の子BがAの手を引き逃げていった。

この後もあまり受け取ってもらえない中俺は健気にもビラを配り続けた。

腹が減ったな。

携帯で確認したところ1時頃、なんか買って食うか。食べ物はいくらでも売っているだろう。

どうでもいい事だけどアマガエルが片手で携帯開くのって周りから見たらキモいだろうな。

面倒なのでカエルのまま店を探しに歩く。

ちょうどたこ焼き屋が目に付いた。たこ焼き食うか。

「へいらっしゃい!」

聞き覚えのある声だと思ったら小雪先輩だった。

「あ、ふとしくん!」

大声で言うので周りから注目される。

軽く会釈。

「たこ焼きおまけしてあげよう!ビラ配り頑張ってね~」

お金を払って歩き出す。

校舎らへんで食いたいのだが、頭を外すと夢が壊れるちびっ子もいるだろう。

配慮が出来る俺は一口一口わざわざ片手でカエルの頭を軽く持ち上げ、首の穴から器用にたこ焼きを口に運んでいく。

通りがかった風船を持った幼稚園児くらいの女の子が俺を見て泣き出した。この食い方もまずいか。

たこ焼き1パックでは少々足りなかったもののビラ配り再開。

もう2時になるな。俺は配るのをやめ部室へ向かった。

元の枚数の半分も配れなかったことを付け足しておく。

部室にはまだ誰も来ていなかった。あー君先輩ちゃんと時間通りに来るのか?

アマガエルの着ぐるみを脱ぐ。体が凄く軽い。

今が秋であったことに感謝すべきだろう。夏だったらこのアマガエルは蒸れて仕方なかった。水道で喉を潤し先輩が来るのを待つ。

「おービラ配れた?」

最初に部室に現れたのはさっちん先輩だった。

「半分も配れませんでした。枚数刷りすぎですよ」

わははとさっちん先輩が笑う。

「雪、気合入ってたもんな」

「さっちん先輩は出し物何だったんですか?」

「私?お化け屋敷だよ。井戸から出てくる役ー」

さっちん先輩じゃ小さくて迫力に欠けるのではないかということは黙っておく。

「美涼先輩は?」

「美涼は雪と同じクラスだよ、たこ焼き」

俺が行った時は居なかっただけか。同じクラスだったとは初耳。

「へー」

「太一、この部活楽しい?」

「楽しいですよ、先輩方面白いし」

「面白いのは雪だけだろーでも、よかった」

さっちん先輩の静かな笑顔ってのをはじめて見た気がする。

「やーやー遅れてごめん!」

「太一、ビラの手ごたえはどぉ?」

小雪先輩、美鈴先輩が帰ってきた。

「配れたのは半分くらいです。足が痺れましたー」

「あれだけ刷ったんだから半分も配れれば上出来だよ、お疲れ」

「ふとしくんお疲れ!」

小雪先輩から十六茶を手渡される。

「ありがとうございます」

「あーくんはまだ?」

「まだだね。そろそろじゃね」

とさっちん先輩。

「ちょっと本番前に練習しときましょうか?」

「そだね」

みんなで一通り合わせてはみたがドラムがいないからな・・・

もう2時10分。

「遅れてスマソ」

あー君先輩が来た。

「遅いですよ」

「わりわり、そろそろ移動したほうがいいんじゃね?」

「あー君練習しないで大丈夫ですか?」

「ダイジョブダイジョブー」

「・・・」

沈黙。

「なんで雪がやると普通に流れるのに俺だとシケるんだよ!」

「じゃ行きましょ」

美涼先輩がベースを持って歩き出す。

さぁここは舞台裏、合唱部の発表が終わる。

「次は軽音楽部の発表です。開始までしばらくお待ちください」

そう声が響く。

みんなの準備も整った。

「みんな、がんばろーぜ!」

小雪先輩が言う。

「「「「おー!」」」」


感想お待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ