女騎士「くっ、殺す!!」オーク「おい待て話が違うぞ」
「ブヒヒヒ……まさか王国最強と謳われた騎士団長様がこんな簡単に捕らえられるとはな。実に無様な姿だ、ブッヒッヒ……」
洞窟に作ったオークの根城の最奥。手足を縛られて唇を噛み締める女騎士を見つめ、オレ様は笑いを浮かべた。
束ねられた長い金髪に、陶器のような白い肌。王国の紋章が刻まれた鎧は砕け、その豊満な胸や太ももがあらわになっている。
オークは古くから他種族に種を付け、数を増やしてきた種族。女騎士のその姿は、オレ様を唆るには十分すぎるくらいだった。
抑えられない涎をポタリ、ポタリと地面に落としながら、オレ様は女騎士へ近づいた。
「き、貴様……何をするつもりだ……っ!」
「ブヒヒ……。悪いようにはしねぇさ。ただオレ様の苗床になってもらうだけよ……」
己の相棒を滾らせ、鼻息荒く歩み寄るオレ様を見て、女騎士は唇をより強く噛み、屈辱的に言い放った。
「くっ、殺す!!」
そうそうこのセリフ、このセリフ。
…………ん?
今『殺す!!』って言ったよな!?
同時にブチッ!! という音が反響する。あっ、こいつ手首の縄引き千切りやがった!
「おい待て話が違うぞ! ここは『くっ、殺せ!』ってのがセオリーだぞ!」
「自らの命を捨てるセオリーなど知らん、無くなってしまえ!!」
先祖代々受け継いできた『くっころ』を否定しやがった!
「ってかなんで縄千切れてんだよ! さっきまで大人しく縛られてたのに!」
「火事場の馬鹿力というやつだな」
「能動的に発動していいもんじゃねぇよ!」
自由を得た両手で、当然のように足の縄もブチッ!!
えぇ……怖……。
「さて、どう殺してやろうか」
ボキボキと拳を鳴らす女騎士。胸も脚もさっきと何も変わってないのに、もう立つものも立たない……!
「お、オヤブン! 何事ですか!!」
騒ぎを聞きつけたのか、手下のオークがぞろぞろと駆けつけた。よかった! 縄を軽々ブチ切るやつでも、数で押せば負けるわけない!
「ちょうどよかった! お前ら、こいつを弄んでやれ!」
オレ様が言うと、子分たちは目の色を変えて女騎士に突撃していった。
「一番乗りはオレだぜーーっ!!」
「オイオイあの乳……堪んねぇぜ!!」
「見ろよあのケツ、安産型に違いねぇ!」
あっという間に取り囲まれた女騎士は、今度こそ危機を感じたのだろうか。一歩後退り……。
「貴様らに凌辱されるくらいなら……殺したほうがマシだっ!!」
違う! そこは『死んだほうがマシだ!』だぞ!!
心のなかで突っ込んだ瞬間に、パァンッ! と破裂音。直後、最前線にいた3匹が白目を剥いて倒れていた。
……そういえば、物が音より速く動くと、こんな音がするらしいね。
そして女騎士は千切った縄で上手いこと首を絞めたり、オークをバットにしてなぎ倒したりと、もうやりたい放題。
開いた口が塞がらないって、たぶんこのことだと思う。
子分たちを片付けた女騎士は、両手をパンパンと払い、オレ様の方に鋭い視線を向けた。
「残るはお前だけになったな。さて、殺す!」
「待て待て待て! お前女騎士だろ!? 剣も盾もないのに戦えるのは聞いてないって!」
「はぁ? 騎士がステゴロで戦えないわけないだろう、鍛えてるし」
「それもそうか……」
あーたしかに〜……じゃない! ピンチ! オレ様はとてもピンチ!
一歩、また一歩と『殺す!』オーラを出してこちらに近づいてくる。
もう『死ぬ!』と思ったその時、女騎士は目を見開き、歩みを止めた……!
「な、なんだ……! 身体がっ、熱い……っ!」
顔を紅潮させながら、自らの身を抱きしめ悶える。汗を垂らして甘い息を吐くその姿は、メスと呼ぶのに相応しかった。
何事かと思ったところで、そこに現れたのは、子分の中では小柄なオーク。
「あっ、オヤブン! せっかくだから盛り上げるために催淫の香を焚いたんですけど……一体なんなんですか、これは?」
「説明は後だ! とにかくでかした!」
「は、はぁ……」
ハッハッハ! 形勢逆転! 勝ったな!!
流石にビックリさせられたけど、ここからはセオリー通り、思う存分楽しませてもらおうか!
「び、媚薬とは卑怯な……!」
「ブヒヒ……いくらお前でも、内なる欲には逆らえまい。さぁ、もう『殺す』なんて言えないようにしてやろうか……!」
再び相棒が元気になるのを感じた。これだよ、これ!
さて、どこから味を見てやろうかと舌なめずりしたその瞬間―――
「え?」
ドスン! と、オレ様は押し倒されていた。そして目の前には馬乗りになる女騎士。
ポタリ、ポタリと顔に生温かい液が垂れるのを感じた。
「フフ、フフフ……! そうだな、貴様の言う通り、もう殺すのはやめにして、欲求に従うとするか!!」
変な笑い方をしながら、下半身にすり寄る女騎士。ああ、なんかもう目がイッちゃってる、こいつ!
「おいそこのお前! オレ様がピンチだぞ! 子分として助けろ!」
「いやぁ、オイラの盛り上げは大成功で終わったっぽいので、あとはごゆっくり〜……」
そそくさと逃げていった。
盛り上げすぎだ、バカ!
逃げていくやつには目もくれず、息を荒くする女騎士。
「さぁ、存分に楽しませてもらうとしようか!!」
「おい待て、待てって言ってるだろ! おい入れようとすんな! あ、あぁ……うわああああああああああ!!!!」
それから3日後。
オークよりもオークしてるこの女騎士を相手にしていたオレ様は、すっかりガリガリになっていた。
「も、もうやめてくれないか……? これ以上、出るものもないから……」
人間よりもずっとか細い声を上げたが、そんなのお構いなしと言わんばかりに、女騎士はプライドとか誇りとか捨てた顔をして、自らの欲を満たそうと腰を振る。
そんな姿を見せつけられたオレ様は、力なく呟いた。
「くっ、殺せ……」
―――彼女が自らの子を率いるオーク軍団が大陸全土を支配するのは、それから1年後の話である。
1年後、あらゆる生き物の数が倍増したそうです。
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