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浮雲(ふうん)な私は福幸(ふこう)へと至る  作者: 初摘みミント


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お姉ちゃんへの手紙


好きになってはいけない人を好きになったの。


彼は私にとって特別だった。


こんな無価値な私にも分け隔てなく優しくしてくれる特別な人。


だから、恋をした。


身の程知らずの恋をーーーーー







お姉ちゃんへ


手紙を出すなんて突然のことで驚いたでしょう?

でも、この手紙の内容を知ったら、お姉ちゃんはもっと驚くかもしれない。

いや、怒るかもしれないし、泣いてしまうかもしれない。

何にせよ深く傷付けてしまうことでしょう。

…それだけのことを私はしました。


本当はずっと言わないといけないと思いながら、私に勇気がなくて言えなかったことがあります。

実は私も彼のことが好きです。

お姉ちゃんが彼のことを大切に思っているのは知っているわ。

彼もお姉ちゃんを一番に愛していることも。

私が一番応援しなきゃいけない立場なのに、同じ人を好きになってしまって本当にごめんなさい。


初めて彼への想いを自覚したとき、私は自分で自分を責めるしかなかった。

お姉ちゃんを傷つけたくないという気持ちとどうしても抑えられない気持ちの狭間でずっと苦しかった。

言い訳になんてならないけど、双子の私たちが同じ人を好きになるなんてこれ以上ない悲劇だと思わない?


同じ顔なのに、優しくて笑うと花が咲いたようにまわりを明るくするお姉ちゃんと生まれつき身体が弱くて内気な私。


もう私の身体はそう長くはもたないとお医者様に言われて、私は後悔したくなかったの。

だからと言って、こんな身勝手なことをしていい訳ではないことは分かっているわ。

でも、私はこの子のためにも正直に全てを打ち明けることにしました。


お姉ちゃんが日帰りで旅行に行った日の晩、大雪で帰れなくなった日があったでしょう?

彼と連絡がつながらないからと私に連絡をしたあの日。

彼は仕事仲間と楽しくお酒を飲んできていつもよりとても酔って帰ってきたの。

だから、私はお姉ちゃんと一緒の顔を利用した。

一夜の過ち。

彼は私がお姉ちゃんではないことに気付かなかった。

それもそうよね。

とても酔っていたし、薄暗い二人の愛の巣でお姉ちゃんの服を着た同じ顔の別の女が待ってるなんて思いもしないだろうから。

だから、思い出だけでいい。

私が黙っていれば誰も不幸にはならないと思っていたの。

浅はかだった。

まさか、その時、彼との子を身籠ることになるなんて考えもしなかった。


本当に手におえない自分勝手なひどい妹よね。

本当にごめんなさい。


最後になるけれど、私はお腹に宿ったこの子を見捨てることができなかった。

母親としても失格です。

もし、無事に産むことができれば誰の力もかりず私の手で育てるつもりです。

本当に自分勝手だけれど、それだけは許してくれる?

私に罪はあっても、お腹の中のこの子には罪はないから…。


ーーーーーイリスより




レンは手紙を読み終えると机の上にそのままぱっと投げ置いた。

そして、この前この手紙に興味を示していた部下の彼女を思い出す。


「さて、伝えるべきか伝えぬべきか…」


彼女に今まで集めてもらったガラクタで思いの外、早く修復できた手紙。

最後のほうが涙なのか濡れて掠れてしまっていたが、辛うじて読めるところまでは修復できた。

レンは知っている。

この世界のことを。

全て知っている。

彼女のことを。

彼らのことを。

過去のことを。

そして、自分の存在が何かということをーーーーー

ガラクタの全てが彼に教えてくれる。

腰にかけたガラクタ倉庫の鍵をチャリっと鳴らす。


(彼女には知る権利がある。だが、知る覚悟はあるんだろうか…?)


レンは手紙をなぞった。

そこで、ガチャっと勢いよく扉が開いた。

ここを訪問してくる人間は限られている。


「お疲れ様。レン、今日も回収してきたよ」


今日も達成感で満たされた笑顔の彼女がやってきた。

レンは先程の手紙をくしゃりと掴んでポケットへ放り込む。


「お疲れ様」

「うん!ありがとう。ガラクタの復元はどう?」

「ああ…順調だよ」


そう伝えると彼女は嬉しそうに微笑む。

彼女は笑顔がよく似合う。

…彼女からその笑顔を奪いたくない。


「知らないものは存在しないものと同じってな…」

「何か言った?」

「…いや、ただの独り言さ」


不思議そうな彼女を見て、ポケットの中の“それ”を握り締める。

…彼女が全てを知る日はそう遠くはないだろう。

修復の進みの早さもそう物語っている。

だから、知る日が今日ではない。

ただそれだけだ。

レンは自分に言い訳をするようにタブレットの電源を落とした。



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