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手紙と帰還


オリビア様がフォティリアス領へ行ってしまって20日ほどが経ちました。

初めて出来たお友達に会えない日々が続いて少し寂しく思っていると、3通目のお手紙が届いたという知らせが入ったのです。


わたくしは侍女のハンナが手紙を持ってきてくれると、すぐに封を切って開けました。


『 親愛なるリゼリーへ


いかがお過ごしですか。

王都はもう気温が高くなったのでしょうか。

フォティリアスは避暑地というだけあってとても涼しいです。

日中は気温が高くなり少し暑いですが、それでも日傘があれば外でも過ごしやすいです。

実は、先日初めて海に行きました。

向こう側は深い青色でこちら側はとても綺麗で透き通った青で美しかったです。

是非、リゼリーにも見てほしいです。


夜はバルコニーから満天の星空と星空が反射した海が見えるのです。

本当にフォティリアスはとても美しいところです。

従兄弟たちも皆優しくてわたくしとても楽しいです。

いつか、リゼリーにもご紹介しますね。


あ、そうだ。

今度お忍びで平民街へ行くのです。

次のお手紙はそのときのご様子をお書きします。

それでは、体調に気を付けてよい夏をお過ごしください。


オリビアより』


オリビア様はとても楽しまれているようです。

それにしても、わたくしもフォティリアスへ行ってみたくなりました。

わたくしは絵でしか海を見たことがありません。

本物の太陽に光り輝く海を見てみたいです。

きっと、オリビア様の言う通りとても美しいのでしょう。


3通目の手紙から数日後、4通目の手紙が届きました。

今回もまた楽しそうな内容の手紙です。

お忍びで平民街を訪れるのはとてもワクワクしたということと、市場には素敵なお店がたくさんあったということ。

そして、5日後に帰ってこられるということ。

帰ってきたら渡したいものがあるから時間を開けてほしいということが綴られていました。


わたくしはすぐにお返事を書いてオリビア様に送ってもらいました。

早く、オリビア様にお会いしたいです。



6日後、オリビア様がわたくしの屋敷へ訪ねてこられました。

オリビア様は侍女から包みを受け取るとわたくしに手渡してくださいました。


「リゼリー、開けてみてください」

「はい」


包みを開けると、銀色の糸を編んで作られたレースを使用したリボンの形の髪飾りが入っていました。

とても可愛くてわたくしはすぐにお礼を言って、侍女につけてもらいました。


「オリビア様、どうでしょう」

「わたくしが思った通り、リゼリーにとてもお似合いです」

「オリビア様、ありがとうございます。とても嬉しいです。大切にします」

「気に入っていただけたようで良かったです」


オリビア様は笑ってお茶を飲まれました。

それからしばらくすると侍女がオリビア様に耳打ちをしました。

ハッとしたような顔になってオリビア様はティーカップを置きます。


「リゼリー、わたくしこれから王宮へ行くのです。今日はこれで失礼いたします」

「はい。お土産ありがとうございました。王宮に行く前にわざわざ寄っていただくなんて、お忙しい中本当にありがとうございます」

「忙しいは忙しいですが、わたくしは誰よりも早くリゼリーに会いたかったのです。だから王宮へ行く時間を遅らせていただいたのです」

「オリビア様。わたくしも会いたかったです。お久しぶりに合うことが出来て今日はとても幸せな日でした」


涙目になってオリビア様の方を見ると、オリビア様は微笑んで私を抱きしめてくださりました。

わたくし、オリビア様のお友達になれてとても嬉しいです。

玄関までオリビア様を見送って部屋に戻りました。

本当にわたくしは幸せ者です。




 ✳ ✳ ✳




オリビアとレーベルトがご祖父母の屋敷へ行ってから、いつもの稽古はとても静かになった。

オリビアからは7日に一度ほどの間隔で手紙が届いている。

この前の手紙にはクラヴィスの楽譜が同封されていた。

なんでも、海の波の音を表現した曲で是非私にも波の音を味わってほしいということだった。


今日もその曲を弾こうと、楽譜を置いてクラヴィスの鍵盤を叩く。

本当に美しい曲だ。

オリビアは美しいところにいるのだな。

とても似合うと思う。


ゆったりとした曲調の曲の演奏を終えると、後ろから拍手が聴こえてきた。

驚いて振り返ると兄が手を叩いていた。


「美しい曲だな」

「兄上、いつからそこに」

「ジェラルドが曲を弾き始める少し前だな。いつもは気配に敏感なくせに、今日はどうした?」


確かに、いつもなら誰かが来たらすぐに気付く。

この曲に集中しすぎていたせいかもしれない。


「その楽譜は?」

「オリビアからの手紙に同封されていた物です。波の音を表現した曲だそうです」

「ああ、やはり波か。それにしてもオリビアというと、レーベルトの妹だったな。親しいのか?」

「親友の妹ですから、私にとっても妹同然です」


兄上は納得いかないような顔をして、近くのソファに腰掛けた。

すると、扉が叩かれた。

手紙が届いたらしい。

入るように促して側近から手紙を受け取った。


『 拝啓 ジェラルド殿下


もうすぐ夏が終わりますね。

こちらは朝と夜だけでなく昼間も少し涼しくなってきました。

先日、初めて乗馬をしたのです。

わたくしもお兄様も初めての乗馬だったので最年長の従兄弟であるイングベルトに同乗してもらったのですがとても楽しかったです。


最初は馬の背中は安定しなくて乗りにくいと思っていたのですがイングベルトが寄りかかってもよいというので少し寄りかかるととても楽になりました。

殿下は乗馬をしたことがありますか?

まだないのであれば是非体験してみてください。

きっと気に入られると思います。


それと、お忍びで行った平民街でとても素敵な物を見つけたのです。

あと3日ほどで帰るので帰ったらお渡しに行きますね。

わたくし、平民街に素敵な物が沢山あったので王都へ帰ってからも時々行きたいと思っていたのですが、そうお手紙に書くとお父様もお母様も許可を出してはくださりませんでした。残念です。


けれど、乗馬は王都へ帰っても続ける許可をいただけました。

ルーティングに教えてもらうのです。

殿下も乗馬をする気になったら一緒に練習しましょう。


それでは、4日後の午後に王宮へお邪魔させていただきます。

もし、予定が合わないようでしたらハインレットへ連絡を入れておいてください。


オリビアより』


私は手紙を閉じて兄上の顔を見た。

兄上は笑いを堪えるような顔をしている。


「イングベルト・フォティリアスは婚約していませんでしたか?どうしてオリビアと同乗を?婚約者に対して不誠実では?」

「オリビアって確か7歳だろう?婚約者も幼い従兄弟と同乗したくらいで気にしないと思うが。ジェラルドが気にしすぎだ」


そんなことを言われても、7歳とはいってもオリビアは貴族令嬢だ。

早ければもう婚約をしている年頃だ。

気にしすぎなのだろうか。

そうか、私はオリビアの兄のような存在という立ち位置を取られるのが嫌なんだ。


オリビアがレーベルトと同じように私を思ってくれていることに気が付いて嬉しかったけれど、他の者が同じように思われるのは気に食わないのか。


モヤモヤとした気持ちが一気に晴れた気がした。

兄上は笑って私の方を見て、頭に手を置いた。

その手を軽く払って立ち上がった。

執事のアーサーの方を見た。


「4日後の午後は空けておけ」

「4日後の午後、ですか?その日は確かヘルベンド公爵家のご令嬢からお茶の誘いを受けていた日では」

「予定が入った。日程を改めるように伝えておけ」

「ですが、」

「これは命令だ」

「かしこまりました」



数日後、一季節ぶりにオリビアとレーベルトが王宮へやって来た。

レーベルトは午前中に来ていて剣術の稽古を一緒に行った。

向こうでも稽古をしっかりしていたのか、衰えている様子はなかった。

午後になると、オリビアがやって来た。

何故か、兄上も同席したがって許可を出したがオリビアは少し緊張したように固まっている。


「オリビア、渡したいものとはなんだ?」

「あ、はい。これです」


オリビアは細長い箱を開けて私の前に置いた。

箱の中には、緑に輝く石のついたネックレスが入っていた。

この石は、まさか魔法石?

驚いて兄上の方を見ると、兄上は興味深い物を見るようにじっくりと眺めている。


「オリビア、少し訊ねても良いか?」

「はい」

「これは、フォティリアスの平民街にある市場で売っていたもので間違いはないか?」

「はい。もう力が残っていない魔法石だと、わたくしの侍女が言っておりました。だから、お守りの効果はないのですけれどジェラルド殿下の瞳と同じ色だったのでお渡ししたくて」

「いいや。これは強力なお守りだ。その侍女は知識がなかったのだろう」


兄上の言葉に私もレーベルトもオリビアも首を傾げた。

普通、魔法石はどこにでもあるし作り出すことも出来るそうだ。

宝石に魔力を込めたら魔法石になるし、この王国の地は魔力で満たされているため鉱山などで発掘することも出来る。

この魔法石は後者だ。

そして、魔力がないというのも本当らしい。

ただ、力を使い切ったわけではなく、力を溜めたり反射させたり攻撃を吸収する能力が備わっているとても珍しい魔法石だそうだ。


その話を聞くと、オリビアは目を丸くして魔法石を見ていた。


「そんなすごいものだったのですか。でも、どうしてそんな珍しい物があったのでしょう」

「それは偶然だと思うよ。100万石の内1つしかないものだから貴族でも知っているものは少ないとだろうし、私も研究室へ通っていなければ分からなかったと思う」


オリビアは納得したように頷くと、再度私に箱を寄せた。


「これはオリビアが持っておくべきではないか?」

「いいえ。わたくしが殿下へ贈ったものです。ご迷惑でなければ受け取ってください」

「それなら、ありがたくいただこう」


箱を受け取って、魔法石を見つめた。

オリビアはこの魔法石と私の瞳が似ていると言ったが、私は本当にこんなに輝いた目をしているのだろうか。

オリビアの目にはそう映っているのかもしれないな。

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