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新しい靴
靴を新調した。
社会人二年目。
一年目に履いていた革靴は、親父からの贈り物だ。
社会の荒波を乗り越え、道を駆け巡る事ができるようにと丈夫なものを用意してくれた。
真摯に頑張った結果…靴の底はすり減り、ボディには穴が開き、修復できなくなった。
仕事に慣れた事もあり、最近やや…気が抜けてきたようにも思う。
ゆるみ始めた気持ちを引き締めるため、値段の張る革靴を購入した。
履き慣れない靴は、使い勝手が…悪い。
踵を踏むなど言語道断…、毎回靴ベラを使うのが面倒だ。
不満を感じつつ、仕事に精を出す日々。
ある日、いつものように靴に足を入れると…踵がスッと吸い込まれた。
相棒として、俺の足に馴染んだのだろう。
…頼りにしているぞ。




