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なおちゃんとゆっこちゃんの日常

作者: 朗大

久々の投稿です。


「なおちゃんって大人っぽいよねー」


 ゆっこちゃんは私の隣の席で足をぶらぶらさせながらそう言った。私は読んでた本に栞を挟んで机の上に置く。ゆっこちゃんに視線を移す。


「そうかな?」


「ほら! 今のよ、今の! 一つ一つの行動を丁寧! なんか大人の女性ぽくていい!」


「大人のって……まだ六年生だよ?」


 私は自分の事を『大人ぽい』なんて思ったこともなかった。むしろ私は他の人と比べて物事に関心がない、『無知な子供』なのだと思っている。

 私がそう思うようになったきっかけは四年生の時、ゆっこちゃんと一緒に下校しているときのことだ。ゆっこちゃんが『中学に入ったら何部に入りたい?』と聞いてきたのだ。私はそれに対して『何部って?』と返したら『何部って部活動だよ!』と返された。そのとき私は部活も愚か、中学校という場所どういう場所なのかも考えた事がなかった。

 なんならいずれ自分も通うことになるということ自体、頭になかったと思う。

 私ってもしかして人として大切なものが欠けている?


 ゆっこちゃんには本当に感謝している。ゆっこちゃんがいなかったら、きっと私は自分の欠陥に気づかなかっただろう。


 ゆっこちゃんは私と違って活発的で、少し飽きっぽいけど色んな事に興味を持ってて、私にいろいろな事を教えてくれる。少し変わったところもあるけど、明るくて優しい私の唯一の友達。

 私がクラスで浮かないで済んでるのは、ゆっこちゃんのお陰だ。


 私も周りに関心を持つようになりたい。そう思って手始めに本を読むようになったのもその頃からだ。本なら手軽に他人(ストーリー)と触れ合えるから。


「なおちゃんって完全に内向思考型っぽいよねー」


「内向思考型? なにそれ?」


 ゆっこちゃんの唐突な言葉に私は首を傾げる。ゆっこちゃんは少し得意げに答えた。


「ユングって人が考えた性格分けだよー。占いみたいでちょっとおろしいよ!」


 因みに私は外向直感型だよーとゆっこちゃんははにかむ。手軽に性格診断できるサイトがあったからやって見たそうだ。詳しく聞きたかったけど、ゆっこちゃんはそう言うものがあると知っただけで満足したらしく、詳しくは知らなかった。


 私は家に帰ってパソコンを起動させる。プラウザを開いて『ユング 性格分け』で調べて見る。検索上位のサイトを開いてみると幾つかの質問項目が出てきた。私は思った通りに答えて診断ボタンを押す。すると画面に『内向的感覚型』と表示された。

 まず、内向と外向って何だろう? 検索をかけて見る。

 内向は自分の内側に興味関心があるタイプのこと、外向は自分の外側に興味関心があるタイプのこと。なるほど、確かに私は内向でゆっこちゃんは外向だ。いや、私は内外問わずに関心が薄い気がする。でも内向よりではあるかな。

 今度は直感、感覚の項目わ見てみる。

 直感は物事を閃きで捉え、感覚は物事を五感で捉えるらしい。


 ……ちょっと、よくわからない。




 夕ご飯を食べ終え、私はお母さんが洗い物をしている間に、夕方に取り入れてた洗濯物を畳む。私は手を動かしながらキッチンで洗い物をするお母さんの姿を覗いてみる。

 大人であるお母さんなら、もしかしたらわかるかもしれない。

 


「え、直感と感覚の違い?」


「お母さんなら知ってると思って」


 お母さんは洗い物をしながら、うーんと呻きながら考える。私はその姿を洗濯物を畳みながら伺う。


「たぶんだけど、直感と感覚って情報の集め方の違いじゃなかったかしら?」


「情報の集め方?」


「そう、大学の心理学の講義で昔そんな事をやった気がするわね。確か、思考と感情が物事を決定するのに使って、直感と感覚が物事の情報を集めるのに使ってるとか何とか」


「たぶんそれ!」


 私が興奮気味に答えると、私の顔をじっと見る。


「奈緒、あんた心理学に興味あるの?」


「ちょっとゆっこちゃんが話してて……」


「ああ、ゆっこちゃんね、確かあの子、戦国武将に嵌ってなかった?」


「うん、その前ははギリシャ神話だった」


「うーん、あの子の感性がよくわかんないわね」


 でもゆっこちゃんはとても良い子だよ。私は心の中でフォローを入れる。

 お母さんは洗い物を終えると私の隣に座る。


「で、直感と感覚ね。難しいから例え話で説明するわね」


 お母さんは一枚の洗濯物の中から私の服を一枚取り出す。薄い青色のパーカーでチャックとポケットが分かれているのが気に入ってお母さんに買って貰ったやつだ。肌触りも少しスベスベしていて気に入っている。


「奈緒はこれ肌触りで選んでたわよね。肌触り、色、素材とか身体で感じ取れる確かなものが『感覚』。で、直感は……ゆっこちゃんがこの前買ったて家に来て自慢してたやつ、なんだっけ?」


「……ウサミミカチューシャ?」


「そうそう、買ったけど恥ずかしくて付けられないとか言ってたやつ。こんな感じに思いつきや閃きで選ぶのが直感」


「なるほど……」


「ところでこの話って、最近奈緒がネットで色々調べたり本を読んでるのと関係あるのかな?」


 私はギョッとしてお母さんを見る。ばればれだったらしい。

 私は観念して、私の抱いているコンプレックスについて話した。


「なるほどねー。そんな気にする事はないと思うけど」


「でも、少しは周りに関心を持たないといけないなって思ったの。気がついたら周りが知ってて当然みたいな空気になってると、やっぱり嫌だなって」


「ふーん。因みに今はある? 今ならお母さんの知ってる範囲なら答えてあげるわよ」


 お母さんはにっこりと笑う。今なら何でも答えてくれそうだ。


 なにかあったかな?


 そうだお母さんといえば……


「私、お父さん見た事ないんだけど、生きてる?」


「……それ聞いたらお父さん泣くと思うよ」


「え!」


 お父さんは単身赴任でした。


ーー


「へー、なおちゃん家ってお父さん単身赴任だったんだー」


「うん、なんか優しいおじさんがたまに家に泊まりにくるなー、と思ったらそれがお父さんだった」


「あはは、お父さんかわいそー」


 翌日の昼休み。私はゆっこちゃんに昨日の事を話した。ゆっこちゃんは心底面白そうにケラケラと笑う。私としては面白い話をしたつもりはないんだけど。

 それにしても昨日はお母さんと色々喋って楽しかった。そう言えばお母さん自身の話を聞いたのも久しぶりだった。お母さんが大卒と言うのも、今思うと初耳だった。お母さんの事を少し知れて嬉しいと思っている私が心の中にいる事に気づく。

 もしかして私は他人に関心がないんじゃなくて、単に人との触れ合いが少ないだけなのかも。もっと周りと積極的に触れ合えば、もしかしたら自然に、その人の事をもっと知りたくなれるのかも知れない。

 私はゆっこちゃんの顔をじーと見る。ゆっこちゃんはキョトンとした顔で私を見つめ返す。


「ゆっこちゃん、誕生日っていつ?」


「え、なおちゃん、もしかして今年は祝ってくれるの? 嬉しいなぁ」


 私は確かに周りへの関心は薄いかも知れない。けど自分の親しい人くらいは知りたいなと思う。

 うん、そう考えるとやっぱり私は内向だ。そして、誕生日の話から、気がついたら琉球空手の話になってるゆっこちゃんはやっぱり外向なのだろう。

なおちゃん……内向・感覚・思考

ゆっこちゃん……外向・直感・感情


こんなつもりで書きました。

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