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ニューワールド・ファンタズム  作者: 乙川せつ
第一部-ニューワールド編

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99/212

冒険者

「せいやっ!」


新人冒険者である僕、シン・ホワイトはナイフを振るう。

そこは【奈落迷宮ダンジョン】。魔物の原種、【モンスター】が生まれ、生息している場所。

戦いと金の聖地。世界の中心点であり、神が祝福できた数少ない地。

モンスターの脳天には【魔石】が埋まっており、それを砕くと奴らは死ぬ。

しかし、魔石は多くの使用用途があるため、砕かない方が金になる。

 そのためも、モンスターの胸部を狙って攻撃しているのだ。

ただ、それに見合った強さはないのだが。


「くっ…………」


今戦っているのは『ゴブリン』。ダンジョン一階層にいる最下級の雑魚モンスター。

しかし、一般人では殺されることもある。今戦えているのは、信仰する神様からの祝福【恵印フィリア】のおかげだ。この世界の冒険者や騎士は自分より上の人から力を授かる。

神様の力と言っても万能ではない。ただ能力を補正し、経験したことを実力に還元するという成長の力なのだ。魔法、魔術、スキルの覚醒も促進してくれるらしいけど…………。

僕にはまだまだ縁遠い話だ。僕はまだ最下級のFランク、力なんて早々手に入るものじゃない。

というか…………


(このゴブリン、強い……)


いくらナイフで斬りつけてもダメージは薄皮一枚。

これが僕の実力かよ、と自分に嫌気がさす。しかし、ここは死地。

いくらお金になると言っても死んだら終わり。冒険者は常に死の正面にいるのだ。


「せいっ!」


ナイフで右目を潰し、蹴り飛ばす。これで距離を取った。


「どうすれば………」


(今、僕にできる手段…………)


意を決して、右手に握るナイフを逆手に構えた。

ゴブリンは興奮し、こっちに突撃してきている。それをよく見て、姿勢を低くする。


(来い!)


『キシャシャ!』


一歩、また一歩近付いてくる。そして、僕に攻撃があたる一歩前、僕が距離を詰めた。


「せいやっ!」


ゴブリン自身の速度と体重を利用し、首を刎ねた。

再生が追いつかない緑色の肢体から力が抜けたのを確認し、握るナイフでゴブリンを解体する。

これはいい値で売れそうだ。魔石にも傷がついてないし、爪も異常発達して鋭い。


「四〇○○リルくらいにはなるかなぁ」


期待しながら、僕はダンジョンから脱出した。

ダンジョンの外にある換金所で鑑定してもらい、そのまま換金。


「ゴブリン六体で六○○○リル…いつもよりは稼げたけど、やっぱり一人じゃあこのくらいか」


因みに一日三食(満腹)に必要な額は五○○リル程。そう考えれば気が楽になるかなぁ。

稼ぎのお金を巾着に入れて、トボトボと歩いた先には朽ち果てたボロボロの祠が。


「神様、今日も生きて帰れました」


手を合わせてそういうと、頭の中に声が響いた。


『おぉ、シン。ご苦労じゃった、一人でよくやるものよのぉ』


「僕以外に【ゼウス・クラン】の団員はいませんから」


『すまんのう。儂に事情があるばっかりに』


この気さくなお爺さん――顔は見たことない――が僕の信じる神、ゼウス様。


昔はある程度偉かったらしいけど、今は僕以外の信仰者はいないみたい。

このひょろい身体のせいで【クラン】―――神に【恵印】を刻まれた神の配下(眷属)――に門前払いだった僕を受け入れたひと。祠に祈ったから気に入られたらしいけど。


『やはり自分から恵印を受けたいという者はおらんのぅ』


「成長の恩恵はどこも一緒ですけど、ランク上昇時の加護が違いますからね」


『そうなんじゃよなぁ……だから皆有名な神の元に行くし、知名度のない神はこの有様じゃ』


「ですねぇ……」


僕たちの大きいため息が木霊する。

僕は一人で頑張るしかないないけど、流石に下に行けば行くほど辛くなる。

今、僕だけで潜れるのは第六階層まで。それ以下に進出すれば瞬殺されちゃう。

僕たちの大きいため息が木霊する。

僕は一人で頑張るしかないないけど、流石に下に行けば行くほど辛くなる。

今、僕だけで潜れるのは第六階層まで。それ以下に進出すれば瞬殺されちゃう。


『ステイタスはこんな感じな』


【シン・ホワイト】【神ゼウスの眷属】

筋力F(37)持久F(31)体力F(36)耐久F(16)敏捷E(101)器用F(20)

精神力F(17)魔法F(0)


総合ランク【F】


冒険者になって一か月……僕はかなり成長が早い方らしいけど、それも分からない。

因みに基礎ステータスはS(1000)~F(0)まであって、その合計値でランクが決まる。

だから実力以外でランクが上がることはあり得ない。魔法は0………か。

敏捷だけはEに突入している。僕は逃げ足しか取り柄がないのかな。

その速さで神様が言う【ヒット&アウェイ】を実践してるけど、考えること多すぎだよ。


『そういや、【スキル】。発現したぞ』


「そうですかスキルが……ええええええええええええええええええええええええええっ⁉」


『驚き過ぎじゃね? 引くわー』


マジかよ、という声の神様に僕は声を荒げながら、


「いや驚くでしょ! 僕まだFランクですよ⁉ しかも一か月でって………」


『まぁ、早いはわな。だが、言ったはずだぞ。お前には才能があると』


(それはそうだけど、信じてなかったですよ神様!)


―――………神様を信じないって今考えると罰当たりだな僕!


「そ、それで【スキル】は…………?」


『おぉ、儂に【影響され過ぎた】スキルじゃ』


「影響…………?」


ゼウス様って何の神様なんだろう………もしかして、物凄く強くなれるかも?


『スキルの名は、【奴隷恋慕フォーエバー・ラブ】』


「………え」


(ふぉーえばー…………らぶ?)


なんか、名前だけで分かる。絶対、絶対にまともなスキルじゃない!


『ふむふむ。マジで儂とヘラみてーなスキルじゃあ』


スキル【奴隷恋慕フォーエバー・ラブ

恋をする、される程強くなる。ただし、好きな相手のドSな部分と独占欲を引き出してしまうので要注意。一人だけを思うとより強く力は引き出される。応援を受けることで一時的にステイタス超強化補正。想いの力で強くなる。


「…………」


―――マトモじゃなかった…………!


なんですかこれ、【恋】どうこうはまあ、良くないけどいいとして、ドSを引き出すはヤバい。


神様、自分関係だと思えるって、いったいどんな神生送ってきたんですか……!


『シン、お前……好きな女できたのか』


「いませんよ………多分」


「含みのある言い方じゃなぁ、ハッキリせんかいハッキリと」


 僕だって年頃の男の子だ、憧れの人くらい居るに決まってる。


だけど、これって好きという気持ちなのかな。もしそうなら、僕の初恋。


『どうじゃ、惚れたんか』


「…………はい」


『ほぉ………誰に?』


「…………【二大美人】の片方、です」


『マジか! それは勝ち目のない戦いじゃなぁ!』


「うっ」


『じゃが、最初から負けた戦いなど存在しない』


「神様……?」


『諦めたら試合終了、ンなワケあるか。戦いは終わるまでわからん、それが恋なら尚更じゃ』


「神様!」


 今、初めてありがたみを感じました!


『ただし!』


神様は威厳―というかリアリティ―を見せながら


『女は怖いから気を付けろ!』


「…………はい?」


その時の神様は、実際に経験したかのような雰囲気を纏っていた。




新主人公の名前は【シン・ホワイト】!

アルタイル・アリエルとは違う、英雄になる少年!

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