幸福崩壊
「テツ? アリスさん? これはどういう事かしら?」
ログアウトから十数分後。俺、アリス、ウェスタの三人は母さんに正座させられていた。
「いや、その、これは………」
「お母様………」
「あれ、これってオレのせい?」
「ううん、ウェスタ君のせいじゃないのよ。今は二人に聞いてるの」
母さんからの圧が強くなる。闘気による殺気よりよっぽど怖い…………。
そういう特殊な魔法も沢山見て来たけど、母さん。それを超えるってどうなんですか。
「あの世界で結婚して、子作りしてました………!」
「はい、致しました!」
「よろしい。最初からちゃんと言いなさい。まったく……ウェスタ君……こんなおばあちゃんだけど、よろしくね?」
「……うん、ばあちゃん!」
「ウェスタ」
「どうした? 母さん」
「…………ここで暮らす? その……家族みんなで」
「……いいの?」
「もちろんだ。息子なんだから」
「ああ……ありがとう!」
これで二世帯同居になっちまったなぁ…………。
そして、新しい生活が始まる―――はずだった。
俺達が普通に暮らし、普通に生きるという生活を送れていたのは、正しくこの時まで。
笑っていた瞬間、俺とアリス、ウェスタの足元に黒い穴が発生した。
無論床が抜けたというようなものではない。【次元の穴】だ。
「なんだ……これ‥‥⁉」
「アル!」
徐々に下に引っ張られていく。どこかに、落ちていく。
「テツ、アリスさん! ウェスタ君!」
「クソ……【もう】かよ……親父!」
「⁉」
「今から行くのは【アースリア】だ!」
「? 何を言って―――」
「あの世界じゃない。本当の異世界!」
「異世界………⁉」
ゲームでもない、本当の異世界。それは、本当にあるのか?
「この先、困ったら【ゼウス】を頼るんだ!」
「創造神ゼウス――⁉」
「いいか、絶対に、――……の、神、だけには――――!」
言葉の途中で、ウェスタが穴に取り込まれてしまった。これは、どうしようもないみたいだ。
「アリス!」
「アル‥‥うん、分かってる」
『きっと、また会えるから!』
言葉が重なったのを最後に、景色が暗闇に落ちた。
異世界転生というやつか。もしくは転移か。どちらにせよ、まず優先すべきことはアリス、ウェスタとの合流だ。しかし、身体の感覚がない。
―――俺、どうなってるんだ? お、目があいた。ん? 今、どうやって開けた?
…………知らない場所だ。ボロボロの宿ってところか。アースリアの宿に似てるけど、少し違う…………。あれ、立った。歩いてる…………。
そうだ、身体が勝手に動いているんだ。なんだ、ギルガメッシュに操られでもしたのか?
お、鏡だ。
「ふぁ……まだ眠いなぁ……けど、頑張らなくちゃ」
鏡に映るのは、銀髪碧眼の少年。推定年齢十四歳ほど。
――――――…………誰?
次回からいよいよ物語が動き出します。




