1stゲーム、スタート
次の日、俺達は時間丁度にダイブした。
「「「ゲート・オープン」」」
また、新世界へと潜っていく。
そこがどんな地獄かは知らない。ただ、誰かにとっては天国かもしれない。
ここは、現実を模した修羅の世界。
ミーティア。
神経接続。
五感の共通認識を確認。
フルダイブ適合率99%。Sランク判定。
脳波の活動率は許容範囲内。ダイバーシステムとの適合を確認。
リンク開始。
これらはコンピューターによる判定だ。
今ではこうやってフルダイブの適正を診断する。
主に反射速度、動体視力、運動神経等を用いるらしい。
この適合診断関係なくみんながダイブできる日が来るといいが。
「…………」
眼を開くと、セットアップステージに立っていた。
前回HFで行ったものとは違い、ここで行うのはアバターネーム入力だけだ。
Altir
この名は俺を表すもう一つの名前。
みんなからは最強の英雄として崇められているが、実際はそんなことはない。
これは、弱者の名前だ。
勇者の血を引き継いだだけの、ただの冒険者。
「俺はまた………行くよ」
ここで留まらないのが、俺の悪いところなんだろう。
だからいつもトラブルに巻き込まれる。
それは、お前と一緒だな。
なぁ、アルタイル・アリエル。
OKボタンをタップすると、視界が白く染まる。
新世界での身体が構築されていく―――。
その時、声が聞こえた。
―――――僕は、何のために戦うの
「えっ――――」
眼を開くと、そこは家の前の道だった。
…………ここが、仮想世界だって?
現実と区別がつかない。
それほどの再現度。ここに、モンスターがいるってのか。
呆気に取られていると、後ろから声を掛けられる。
「アル」
「兄さん」
「アリス‥‥優也…………」
「本当にここがゲームの中なの………?」
「HFで感じた僅かなラグすら感じない‥‥」
「NFと、同等‥‥がっ⁉」
突然、肉体を激痛が襲った。
「どうしたの兄さん⁉」
「アル⁉」
「なんだ、これ‥‥闘気が、何かに反応して‥‥! 抑えられない‥‥!」
初めてのことだ。
同一存在であるギルガメッシュと対峙した時ですら、こんなことはなかった。
「アル‥‥。――!」
「どうしたんですか、アリスさん?」
「なにか、来る‥‥」
「何が――――――?」
爆音。
目の前にあった向かいの家が吹き飛んだ。
もちろん自然の爆発ではない。
そこにいたのは、十mはあろう巨人だった。
灰色の筋肉に白い眼。見ただけでわかる。こいつは、強い。
「こんな時に‥‥!」
「初期武器で敵う相手なのか‥‥⁉」
「やるしかない!」
アリスは腰の細剣を抜刀した。
そして、剣先に風が殺到する。これは、闘気を一点から放つアリスの十八番―――、
「星砕きの流星群(スターロード)!」
剣術の中でもトップクラスの威力を持つ技。
これを独学で身に着けたのだからその才能は異次元だ。
だが、巨人はそれに耐えて見せた。
(どうする‥‥⁉)
剣技?
あるはずがない。
飛天?
剣が壊れる。
炎?
あるはずがない。
王牙天翔?
刀が無い。
竜技?
剣が壊れる。
この緊急時に不明瞭なことをする余裕はない。
クソ、俺の技例外が多すぎるだろ‥‥!
何か、何か無いか‥‥この一瞬を切り抜けられるジョーカーが…………!
極限状態で俺の記憶を刺激したのは、黄金の騎士。
あの振り返った一瞬だけ、エイルに任せ先に進んだ一瞬に見た闘気の使い方―――
闘気があるなら‥‥!
(間に合え…………! 出てこい、俺の戦士!)
「闘気の守護戦士 (オーラ・ガーディアン)!」
俺の背後に闘気で構成された黄金の戦士が出現する。
騎士ではない。むしろ拳で戦う拳闘士だ。
黄金の肉体に白い眼。ぶっつけ本番だが、一度見たことがあるお陰で再現できた。
「いっけぇええええええ!」
脳波による命令で戦士は拳を放った。
アリスがダメージを与えた部分に集中攻撃。
超高速連打。
昔、決闘場で見た戦士の動きをトレースする。
そして最後の一撃は、
「〝重撃〟!」
闘気武術の初歩技。
しかし有り余った闘気が炸裂し、威力は大きくなる。
「ぐっ…………はぁ、はぁ…………!」
戦士はそこで消えてしまった。
(慣れないことはするもんじゃないな。だけど…………)
これでも、巨人は倒れない。
耐久力バケモンか…………。
「ぐっ………」
闘気が出せない。
一瞬に多く使い過ぎた…………。
(もっとだ、もっと俺に闘気をよこせ………ギルガメッシュ!)
俺の想いに応えるかのように、もう一体の戦士が現れた。
しかし、それは俺の闘気によるものではない。
無論アリスでもない。
優也でもない。
それは俺の巨人にそっくりな姿をした、【炎を纏う赤色のガーディアン】だった。
「俺以外に、もう一体の、ガーディアン…………?」
「あれは、いったい…………」
すると、背後から声が聞こえた。
「助けに来たぜ。父さん、母さん」
そこにいたのは、金髪に赤い眼をした青年。
しかしギルガメッシュのような威圧感はまったくない。
むしろ、爽やかな印象を感じる。年齢は16歳といったところか。
というか‥―――――
「父さん⁉」
「母さん⁉」
そして、息子(?)はこう名乗った。
「黒き剣士と剣聖の息子、ウェスタ・アリエル―――只今参上!」
『――‥‥えええええええええええええええええええええええええええええええええええええええっ⁉』
アルタイルとアリスの息子を名乗る謎の少年、ウェスタ。
彼はいったい…………。




