相棒、《ナイトプレート》
一話完結の短編です。
三本の剣の中で唯一明かされなかったゲット話。
《ナイトプレート》。
それは黒き剣士の象徴の一つ。
黒い肉厚の刀身を持った片手剣。
その秘話をここに。
それは、僕が冒険者登録をしてすぐのことだった。
ただ、剣を求めて鍛冶屋によった。
それだけだったのに。
「おい! もっといい武器は作れねぇのか!」
「あんたの料金じゃそれが限界だよ、それとも、自分で素材取ってきてくれるのかい?」
「こんの‥‥こちとら武器に命預けてんだぞ‥‥!」
「だからなんだい、ベリアス武具店はサービスなしだぜ?」
客と店主だろうか。
何かもめているようだが。
触らぬ神に祟りなし、僕は武器を見てまわる。
‥‥腕はいいようだ。
素人の目から見てもそれは確か。
だけど‥‥性格に難ありか? あれ‥‥。
「…………だーっ、分かったよ、じゃあこれでどうだ!」
女性店主が一本の剣を指し示す。
「…………おい、まさか…………」
その黒い剣は‥‥漬物石ほどの岩に突き刺さっていた。
(なんだ、あれ‥‥)
「あれを抜けたら値引きしてやるよ」
「…………言ったな?」
冒険者の男はニヤッと笑い、その剣に手を伸ばす。
「冒険者を舐めたな、性悪鍛冶師‥‥!」
男が力を入れて引き抜こうとした。
だが
「なんだこいつ‥‥ビクともしねぇ‥‥⁉」
「その剣は三百年その調子よ」
「三百⁉」
「私が生まれる前に、父の元に勇者が置いていったらしいわ」
「クソがあああああああああああああああああッ!!!!」
大声は消え、疲労した男は壁によりかかる。
欲しい。
僕は、あの剣が欲しい。
「残念だったわね、ま、諦めて借金でもしてくることね」
「あの…」
「ん、いらっしゃい! 初めての人?」
「はい‥‥」
「どんな剣をお求め?」
「それを‥‥」
僕は迷わず、黒い剣を指さした。
「あー‥‥お客さん、それは無理よ、売れる売れないじゃなくて、抜けないから―――――――――」
その言葉が終わる前に、僕は手を伸ばしていた。
「ちょっと⁉」
さぁ、僕と行こう―――――――――――――。
ああ、共に行くぞ。我が永遠の主よ。我が名は―――――――――――――
え?‥‥僕も疲れてるのかな‥‥剣が喋るわけはないのに―――――――――――――けど、
「嘘…………本当に抜いちゃった…………⁉」
僕の手に、《ナイトプレート》があることは、紛れもない事実だ。
「よろしくな、ナイトプレート」
「⁉ あんた…………なんでその剣の名前を…………」
「…………この剣が教えてくれたから」
「…………お客さん、値段の話だけど‥‥」
「あ、そうですよね。おいくらですか?」
女店主は壁に寄りかかっている男がした顔と同じように笑い、
「その剣は無料であげるわ」
「えっ、いいんですか⁉」
「ただし! これからも、ベリアス武具店をよろしく!」
「…………はい!」
◇◇◇
僕が店を出た後。
「ほら、立ちなさいよ」
「ああ‥‥」
「…………気分がいいから、剣、特別サービスしてあげてもいいけど?」
「ほんとか⁉」
「ええ‥‥あの子の瞳を見て思い出したの…………私、ただいい剣を打ちたいだけなのよ」
「お前…………惚れたのか? あの子供に…………」
「なっ‥‥⁉ そ、そんなワケないでしょ! …………こんなおばさん、拾うほど、追い込まれてないでしょうよ、あの子は―――――――――――――」
(――――――――多分あの子は、冒険者どころじゃなく、英雄になるわね)
私は、心で未来を予想した。
(きっとあの子の周りには、可愛い女の子が集まるわね…………そう、とんでもない子たちが‥‥)
◇◇◇
「せああああああっ!」
片手四連撃、《エクシア》。




