竜の魂
俺はマティリス・クランの前に立っていた。
「でか……」
本拠地が大きすぎる。ここの試験を受けるのか。
中に入るとすぐに説明がされた。試験の内容は試験官相手に一本をとれば合格。ルールは決闘方式。いわゆるデュエル。
「あなたは一番最後です」
三十六人の最後。時間がかかるな。と思っていたその矢先。
「始め!」
最初の試験が始まる。受験者は鎧を装備した騎士。そして相手は《閃光》、《アリス=フリューレ》。それは一瞬だった。そのレイピアの先端は、騎士の顔数センチで止まっていた。
「勝負あり!失格!」
騎士はトボトボと去っていく。他には格闘家、魔法使い、戦士、弓使い等々の新人が全員失格となった。そして僕の番。
「お願いします!」
「うん」
「始め!」
さっきまでの人達と同じ様に、その細剣は顔の前に接近する。しかし
「⁉」
片手剣反撃技 《リバーサル》。爆音と共に剣を弾く。
「防いだ⁉」
咄嗟の反応で防御が間に合った。そして僕は剣を緩めに下段に構える。女剣士は中段に構える。
「アアッ!」
「セイッ!」
その剣撃はぶつかり、お互いに弾かれる。僕は 《エクシア》の構えを取る。そして駆け出す。
空中に飛び上がり、エクシアではなく、上段垂直斬りを発動。 《グランツ》。
「……」
バックステップで躱された。
「誰かに似てると思ったらアースの剣筋にそっくり」
「まあ、教えてもらいましたから」
「やっぱり。それなら少し本気でいくよ」
黄金の髪が揺らぎ、青い瞳が一層光を強める。彼女は突進技を放ってきた。そして僕は受け止めきれずに吹っ飛ぶ。何とか剣を地面に突き刺して体制を整える。
「くっ……」
「―――――諦めたら?」
彼女の何気ない一言。僕の中に何かが走る。
僕は昔から冒険者になりたかった。父と祖父の冒険譚の読み聞かせ。
そして俺は……英雄に憧れた。諦めてたまるか。――これは、俺の物語だ。
「う…………おおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ‼」
身体から闘気が吹き荒れる。
「なに……この圧――」
「来い……〝神威〟!」
ソニックブームを起こしながら扉を通り、廊下を通り、それは俺の前に現れた。
「弱者が覚悟を決めたのだ………強者に敗れる筋合いはない…………行くぞ、第二ラウンドだ」
炎を発動した状態で神威を引き抜く。赤炎を纏い、更に闘気を練る。
「――――――――〝飛剣纏い〟」
刀から溢れ出る炎を刃に集め、そのまま剣技を発動。炎の内側で刀身が水色に輝く。
「う、らあッ!」
片手四連撃 《エクシア》。刀の利点は三つ。速さと切れ味、そして《両手剣技と片手剣技の二つを使用可能》。エクシアを弾かれ、一瞬の硬直の後、俺は両手単発切り上げ《リンクス》を発動。左下から右上に向かって切り上げる。
そして俺は自分でも驚くほど一瞬で納刀した。
自分の意識を無限とも思える世界に広げて――――――――――――。
英雄剣術・気配の極意
《居合領域》
目を閉じて、気配を感じる。集中、集中―――!
ボッ。
俺の世界に、入ってきた。
「セアッ!」
炎を纏った刀身が奔る。
英雄剣術・抜刀の極意 《神速一刀》
刀の特徴は、その切れ味!
「セアアアアアアッ!」
熱で脆くなった量産品の細剣を叩き切り、首に刃を突き付ける。
「勝負あり!勝者、アルタイル=アリエル!」
「……あれ?」
緊張の糸が切れた俺は、地面に倒れてしまった。
これは……夢?
女性に手を引かれて森を歩く……貴方は――――――――!
「……ここは……」
「目が覚めたか」
「アースさん……」
「立てるか?」
「はい……」
「行くぞ」
「……どこに……?」
「主神のところへ」
部屋に入るとそこには女剣士、審判二人、そして主神 《マティリス》。
「来たか。……単刀直入に聞こう。アルタイル・アリエル、君は何者だ」
「質問の意味が分かりません」
「それでは質問を変えよう。君の炎は一体なんだ?」
「それはこの刀の能力ですけど……」
「そうか。それでは結果を発表しよう。不合格だ」
「そうですか……失礼しました」
俺はその部屋を出て、本拠地を出る。その後の部屋では。
「アイナ、彼のステータスは見れたか」
「ああ、見えた」
アイナと呼ばれた審判の女性。
「彼のスキルは三つ。《剣技》。《闘気》。……そして、《英雄之炎》」
「まずは彼の闘気だが、あの威圧感だな」
「うん、気圧されるところだった」
アリスがコクッ、と頷く。
「そしてその総量は想像もつかない。」
「それに彼の炎、あれは武器の能力などではない。確かに刀がトリガーとなっているが発動しているのは彼自身のスキルだ」
「《ユニークスキル》……か」
「それにどっかの誰かさんが教えた剣術」
「うっ……」
(それに、あの魂……)