鮮血の戦世界
「制限なしでいいわね?」
「ああ」
カードから音声が流れる。
3、2、1、GO!
「悪いが手加減はなしだ」
俺は闘気を解放し、右手のナイトプレートに纏わせる。
「―――――竜牙餐喰!」
竜技の基本技。
単純故に強力な必殺。
「波動剣砲!」
騎士の細剣から放たれる力の波。
それは竜と衝突し、相殺。
《明るい未来》
あの時と同じ光が広がる。
セナの心象転写だ。
《希望》の力は、シズクの集結し、その体を最大強化する。
「マジかよ…………」
これはちょっとキツイかも―――。
仕方ない
俺も、ユニークスキルを使わせてもらう!
英雄之炎・解!
火球生成
左右に3つずつ。
合計6つの火球を生成する。
―――フレイムフルバースト!
火球からそれぞれ熱線を掃射。
その仕組みは二重構造火球の内側で炎を螺旋状に回転させることで外側の炎を打ち破り、指向性を持たせて放つという、制御が難しいシステムになっている。
何故こんなことが出来るかと言うと、《エクリプス》の発動が可能になったからだ。
集中状態と神経伝達速度上昇により発現する状態。
この時、脳が一度に受け入れる情報量の上限が拡大され、瞬間把握能力がおよそ数倍になる。
「そこだ!」
シズクの動く先を予測し、そのルートを先に潰す!
「…………厄介ね…………なら私も」
エクリプス
「なっ…………あいつも…………⁉」
エクリプス発動中は目の色が変化する。
俺なら赤。
奴は…………水色。
「うおおおおッ!!!!」
「せいっ!!!!」
互いの剣戟が衝突する。
火花が止まって見える程、俺達の脳が加速する。
「…………せあっ!」
片手剣四連撃、《エクシア》
――クソッ…………動きにくい…………!
他人の心象領域に侵入した場合、使用者が許可した者以外は、能力を制限される。
やってやる…………!
「弱者が覚悟を決めたのだ、強者に敗れる筋合いはない…………!」
心象転写
「ソード・オア・ザ―――――――」
「させないわよ」
細剣が顔めがけて飛んでくる。
「チィッ…………」
速度で劣るこの状況で詠唱するのは命取りか…………どうする…………。
そうだ。
「力を貸してくれ、返事は聞かない!」
英雄憑依、モデル・カイン!
「飛天残影…………暴風!」
無数に設置した飛天を障壁にする。
「陽炎!」
障壁の穴を埋め、斬撃の繭を創り出す。
「…………ふーっ」
ナイトプレートとベールリオンを地面に突き刺し、両眼を閉じる。
「…………世界は、血肉で出来ている。
大地は肉で、海は赤血。
戦火の炎が広がり、燃える命。
しかし、この世から骸は消えず。
数多の真理は、天空にはなく。
今歩く、この地に印されていた。
血肉を踏み、同胞を乗り越える。
世界の真理は、この体の中。
この地に張り巡らされし願い、それは血肉の穢れを祓う。
ただ、この世に希望があるのなら、願おう。
…………この世界は、無限の希望で出来ていた。」
《無限之希望》
斬撃が消え去り、《あの世界》が顕現する。
血の海、肉の大地。
人類の戦いの世界だ。
「さあ…………行くぞ。騎士団長…………希望への願いは充分か?」
「舐めないで!」
数十m離れた地点から、シズクが疾走してくる。
「…………」
無言で手を払うと、足元の血がナイトプレート、ベールリオンの形をとり、浮遊する。
オリジナルの二本を両手に握り、数十本の模倣品を射出する。
「くっ…………!」
シズクは巧みに模倣品を叩き落としていく。
だが、この世界はただ剣を模倣するだけの世界じゃないぞ!
「英雄…………装填」
その短い詠唱で世界の機能が動き出す。
血肉が仮初の形を成していく。
彼らが生きて経験した人生を蓄積し、彼らの可能性を模倣し、彼らが継承した技を盗作する。
「英雄、顕現」
アリス、ディオン、カイン、クラデオル、エイルの贋作が生成され、それぞれ武器を取った。
「なんて力なの…………⁉」
「大したものじゃないさ。ここにいるのは全て偽物。意識のない贋作だ。だが、その贋作を同時に操作できるぐらいには、戦闘勘はある!」
無限の刀剣を生成、天からそれを降らせる。
今までに見てきた英雄の模倣品。
全てが自力じゃない。
皆の贋作、劣化品。
それが、俺だ。
ギルガメッシュ、お前とは違うんだよ…………だけど!自分を見失うほど、俺は落ちぶれちゃいない!
女神を殺した英雄の面汚し、黒き剣士と呼ばれた俺はただ一人。
―――――俺だ!
「くっ…………まさか一冒険者にこれを使うことになるなんて…………」
そう言ってシズクは、亜空間から一本の剣を取り出す。
「なんだ…………⁉」
黄金の持ち手。深紅の模様が入った紺色の刀身。
―――刺剣みたいだ…………だが、何か…………。
「この剣は、神が鍛えた《神域武装》…………、空間を穿つ波動剣…………元は名も無かったそうだけど、私はこう呼んでいるわ。《断界剣ブラッドエア》」
その名に、記憶が刺激される。
「ああ、そうか…………ゼウスめ、あれを模倣したのか。…………ククッ、神が人間の模倣品をつくるなど、笑いが止まらんわ…………なあ、《クリムゾン・エア》!」
始まりの英雄王が再び、目を覚ます。
すいません。終わりませんでした!




