失敗
高速で接近し、奴の心臓を狙う。
「…………」
奴は、《絶対貫通》の効果を持つ刺突を、文字通り相殺した。二つの武器が砕ける。
武器が砕けるには耐久値がゼロになるしかないはず。
しかし俺は輪廻剣を一度たりとも使用したことはない。
「どうして…………」
口から洩れた驚愕に、流川はこう答えた。
「この透明剣の特性は《刀身防御》。刀身に触れた攻撃を防御する。まあ、全く同じ干渉値の効果だった為、どちらとも破壊されたがね…………君の失敗は、予備動作のある《スキル》を使ったことだよ」
「…………………っ!」
俺は焦りのままに、右手にナイトプレート、左手にベールリオンを握った。
(吼えろ、俺の命を賭けて!)
「ワオオオオオオオオオオオオオオオオオオ―――!」
二刀流最上位剣技 《ザ・プロメテウス》。連続二十五回攻撃。
この技を人間に使ったことはない、何故なら必殺としての効果が強すぎるからだ。
二刀流とは最強の攻撃であり、対人型の敵に最も高い威力を発揮する殺人剣……いや、殺神剣というべきか。
しかし、そんな必殺すら……創造者の前では遊戯同然。
「馬鹿なことを…………」
流川は二本の剣を呼び出し、左右の手で握った。
ザ・プロメテウス
まったく同じ技。
今まで頼ってきた己の最強技が自身に牙をむく。
…………また、失敗した。
奴はゲームマスタ―だぞ、《二刀流》を扱えない理由がどこにある。
そして硬直時間は…………防御された方が長い。
「うおああああああああああッ!」
雄叫びと共に放った二十五撃目の左刺突も、完全に合わされた。
硬直。俺が四秒なのに対して、奴は、二秒。…………致命的な差だ。
―――――――ごめん…………ごめんよ、アリス…………
「「うぉおおおおおおおおおおッ!」」
叫んだのは、ディオンと、カイン。
走った二人は、硬直したままの流川に攻撃を繰り出す。
ディオンは《神約》の中でも最強の、盾での殴打技を。
《ガーディアン・ザ・ブレイバー》
カインは手刀の最上位貫通技を。
《アベンジャー》
攻撃は確かに炸裂した。しかし、奴はポリゴンが溢れながらも動き、二人を左右の剣で薙ぎ払った。
「ぐわあああああ!」
「ぐふっ…………!」
(カイン! ディオン!)
何とか二人は無事だった。
しかし、状況は変わらない。
―――――誰か…――――――――
心の中で祈った時、それは現れた。
「がはっ…………」
流川の胸を後ろから、神威が貫いた。
そして俺の目には、神威を握る三人の姿が見えていた。
(爺ちゃん…………!)
《初代勇者》シリウス=コスモスター。
(父さん…………!)
《二代目勇者》シン=アリエル。
(母さん…………!)
二代目勇者パーティーの《聖女》ソフィア=アリエル。
三人は微笑み、頷いた。そして、光となって消えていく――――。
今思えば、三人との思い出はそれ程ない。でも、それでも!
「…………例え、世界が……俺の家族や、アリスが作り物だったとしても! ……俺がみんなと生きたこの思い出は、決して…………〝偽物〟なんかじゃない!」
意味で偽物なんだとしても、俺は、俺だけは…………この世界を本物と呼ぶ。
ここは、俺が生きた世界だ。
本日あと一話を公開し、第一部最終話は、8月18日午前2時に公開致します。
第二部の予定も次回。




