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ニューワールド・ファンタズム  作者: 乙川せつ
第一部-ニューワールド編

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43/212

目覚めのキッカケ

夜が明けた。これが運命の日になるとは知らずに。

 今日俺は珍しく早起きした。というか、なかなか寝れなかった。

結局寝ることが出来たのはたった三時間だけ、あとはずっとベッドでゴロゴロしていた。


 柄にもなくドキドキして、待ち合わせ一時間前から公園で待っている。


「………何やってんだろ、俺…………」


アリスは今日も迷宮攻略は休みなのだろう。あいつが攻略を二日連続で休むなんて、天変地異でも起こるんじゃないだろうか。


(なんで…………俺……)


「俺なんか…………」


その時、あのパーティーを思い出す。…………俺が救えなかった、同業者。

第一種危険種に認定された 《ホワイトディザスター》。あの強さは、ボスモンスターに迫るほどだった。階層中盤にいていいモンスターじゃない。

何故アイツがあそこにいたのかは不明。まったくの、〝不明〟。神々でも手がかりすら見つけられない。ロゼラリアの犯行ではないかとの話が出ていたが、いくら神でもあれほどの高ランクモンスターを操れるとは思えない。


「こんな時になに考えてんだ、シャキッとしろ、シャキッと…………」


自分の姿を見下ろす。灰色のローブを着た、みすぼらしい少年。


「……………………笑えるよな」


これからデートする相手は、あのセナに迫るほどの人気を誇る女性にして、最速の冒険者とも呼び声が高い、あのアリス=フリューレなのだから。


「…………《父さん》。あんたの言った通り、人生何があるか分からないみたいだ………は?」


俺は何を………父さんがいつ、そんなことを言った―――――――――?


たっぷり呆けていると、彼女が声をかけてくる。


「アル、お待たせ」


白い帽子をかぶり、白いワンピースを着たアリスの姿は、まさに神が創り出したかのごとぐ、美しかった。


「いや、大丈夫…………そのバスケットは?」


彼女が右手に持つバスケット。…………興味をそそられる。


「じゃーん」


アリスはバスケットの上に被せている布を取り、その中身を俺に見せつける。


「………………ホットドック…………?」


その中にあったのは、美味そうなホットドックと、二つのコップ、そして一つの水筒。


「食べる?」


アリスはホットドックの一つを手に取り、俺の顔の前に差し出す。


「…………ああ、頂きます」


ぱくっ、アリスが持っているホットドックにかぶりつく。


「……………………美味い」


口の中に濃いソースの味が広がる。


どこか、懐かしい味。


「もしかして…………手作りですか…………?」


「そ、…………気に入ってくれたみたいでよかった。…………ココア飲む?」


ホットドックにココア。俺の好みどストライクなんだよなぁ…………偶然か?


「カインさんに聞いたから」


水筒のココアをコップに注ぎながら、アリスが言う。俺は心でも読まれたのかと思った。


「…………なるほどな」


(アイツの前ではホットドックを食べていたし、攻略の時にココア使ったからなぁ……………流石にアイツでも気が付くか…………)


「…………アリス…………」


「?」


一呼吸置き、疑問に思っていることを聞いてみる。


「なんで…………俺を気にかけてくれるんだ?…………言っちゃなんだけど、俺結構な悪名ついてるし……そんな強くない―――――――――――」


「違う!」


アリスが我慢できない、と言わんばかりに頬を膨らませる。


「私は人がアルの事どう思っているかとか、アル自身がどう思っているのかどうでもいいの!私は、アルの事が好きだから、あの時、君の心が輝いて見えたから、私はこうしているの!」


一瞬の間。


「―――アリ、ス…………」


驚いた。心底驚いた。


何に驚いたって?


俺に好きだと言ってくれたアリスに?


無論それには驚いたさ。


…………だけど、俺が一番驚いたのは、


俺の目から、涙が溢れていたことだった。


「……くっ………くっ…………!」


嗚咽が漏れる。我慢。涙を止めようとしても、止まらない。感情が溢れ出た。


「…………アル…………」


アリスは、泣く俺を優しく抱きしめた。俺はアリスの胸の中で少しの間、泣いていた。


数分経っただろうか。


「…………ありがとう。アリス…………俺も、君のことが好きだ」


「…………!」


今度はアリスの目に涙が――――、しかし彼女は強く、その涙を押しとどめた。


だけど、俺たちを隔てる分厚く高い壁が、もう一枚だけ残っている。


「《マティリス・クラン》のみんなを説得しなくちゃだな」


俺がそう言うと、アリスが笑って言う。


「大丈夫、団長が、また決闘で決めようって」


「…………えっ」


どこが大丈夫なんですかと言いかけてしまった。


二年程前、クランへの入団を賭けて決闘を迫られたものだ。


そういえばあの時、なんで一度不合格を出した俺に、入団を迫ったのか、理由を聞いていなかったな。


「…………よし。分かった、リベンジマッチだ」


「…………うん!」


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