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ニューワールド・ファンタズム  作者: 乙川せつ
第一部-ニューワールド編

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42/212

黒き剣士と剣聖

「…………私と…………デート、しない?」


「……………………えっ?」


俺はたっぷり五秒ほどフリーズした。


もう一度頭を整理しよう。俺はアルタイル=アリエル。《黒き剣士》の称号を持つ、レベル一冒険者。神殺しの異名と、神を恐れさせる色《黒》を押し付けられた剣士。

対して彼女はアリス=フリューレ。《閃光》から《剣聖》へとなったカリスマ。

このアースリア一を争うほどの美貌を持ちながら、レベル七を誇る《マティリス・クラン》のエース。そのレイピアから放たれる剣戟はまさに閃光のよう。そして彼女自身も、光のようだ。


それがどうして…………こうなった。


「……………………駄目?」


(上目使い可愛い…………って、いかんいかん…………カインみたいになるところだった)


あんな大人になってたまるか、そう自制しながら…………。


「ダメじゃ…………ない」


「本当⁉」


(流石に断れないさ…………だけど、どうしようクソッタレェッ!)


二年半ソロをやっていた弊害か、最近女性と話すのがちょっとだけ苦手になってきた。


ちょっとだけだぞ、ちょっとだけ。


「それじゃあ、明日の正午にまたこの公園で!」


上機嫌でその場を去っていく彼女を見ながら、俺は思う。


(…………どうしよう)


「…………とありえず服……」


家に帰っての第一声がそれだった。


実際俺はこの黒いロングコート以外に、以前着ていた父の黒コート、あとは………爺ちゃんの灰色のコートしか持っていない。


そもそも必要なかったので、服屋にすらロクに行っていない。普段着………というか家でしか着ないような服のみ…………。


「ああ、どうしよう…………」


俺は藁にもすがるように、ある喫茶店を訪れた。そこはあいつの行きつけ。


「おっ、アル坊じゃねぇか!久しぶりだな、どうしたんだ、なんか用か?」


「よ、カイン……」


先刻、こいつみたいにはなりたくないと思った男。こいつに頼るしかない。


「……………………なるほどな…………なあ、一ついいか…………」


事情を説明し、俺が意見を待っていると。


「追いかける側の俺が、追いかけられてる奴の思いなんか分かるかぁ!」


「……………………ほぇ?」


「…………すまん、取り乱した。…………で、服がないって話だっけ?」


「お、おう………」


「今言った灰色のローブってのでいいんじゃねぇか?黒よりマシだろ」


「………………そうだなぁ…………確かに、デートで黒はマズいか…………」


俺がそう言うと、カインはうんうんと頷き、耳打ちする。


「それはそうと、お前はどうなんだよ、アリスちゃんのことは」


「はぁ?」


質問の意味が分からず、俺はアリスの印象を語る。


「どうって…………優しくて、慰めてくれて…………頼りになる…………」


「そうじゃなくて、好きなのか、アリスちゃんのこと!」


「好き…………?…………アリスの事が………好き…………、好きなのかもな…………俺」


自分で言っておきながら、心底驚く。まさか自分からこんな言葉が出るとは思っていなかった。


カインは心の中でこう思った。


(うわぁ……無自覚天然かよ……、アリスちゃんは好き好きオーラ全開だけど、こいつは別の意味で危ねぇ

かもな……)


「……………………俺は、アリスが、好き……なんだと思う」


カインは、そんな俺をフッと笑い。


「それでいいじゃねぇか、お前があの子の事を好きだと思ってるならあの子は、きっと答えてくれると思うぜ?」


「カイン……お前、いい奴だよな」


「な、なんだよ、俺はいつも紳士だっての!」


「ああ……紳士、な」


俺達はその後別れ、俺は一人家に帰る。


「……………………寝よう」


ベッドに飛び込み、速攻で寝る。

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