炎の心
「みんな……」
(……奥義の前の布石を打つ!)
「……〝灯火〟(ヴェーロス)……!」
右手の人差し指と中指に炎を灯し。それを左手で引っ張ると炎は弓矢の形になる。それを放つと女神に一直線に向かう。レーザーを打ち消しながら進み続ける。
それはまた光の壁に防がれる。
「だよなぁ!」
(なら……)
俺の身体の中で闘気と魔力を練り合わせる。そしてそれをユニークスキル《英雄の炎》に流し込む。炎は体外にも溢れ出て、周りの世界を変えていく―――。
『永久の過去、地獄と呼ばれたこの世界。天世の平和をこの地に堕とす!限りなき炎よ、遥か未来まで続く人類史の起点を今、この時に!………友が死に、妻が死に、親が死に。絶望が波となって押し寄せる地獄は試練。その後に、最高の幸せが待っていると、オレは信じる。夢を持て、剣はここにあるだろう。―――――――この世界は、無限の剣で出来ていた!』
〝心象転写〟
神威を地面に突き刺し、地面から炎が溢れる。そして闘気と魔力が半径一㎢の半円の形になり全てを閉じ込める。
「この炎が俺の領域だ。―――魂剣煉獄!」
ユニークスキルを通して世界を改変する技。〝心象転写〟。《英雄の炎》を使った領域。
「魂剣」
「焔戟」
無数の炎の剣が空中に現れ女神に向かう。
「なに……この力……!」
女神の壁を破り、剣は女神に注がれる。
「来い」
〝転写〟〝草薙の剣〟
師匠の剣を模倣した炎が空中に浮かぶ。それを囲うように炎が筒のようになる。
「放射」
炎の木の葉が中で弾け、筒から〝竜〟が飛び出す。
それを見て師匠が叫んだ。
「知ってるか!この草薙の剣はな、日ノ国の神話で竜から生まれた神殺しの異名を持つ剣だ!」
竜の炎が消えて、中の剣が見える。
「刺突」
更に剣が加速する。その剣はソニックブームを生むほど速くなっていた。しかしその剣は停止。
…………沈黙。
「あぶないわね」
ロゼラリアが手で掴んでいたのだ。音速の炎を。実体のないものを掴んでいた。
「そりゃそうだよな!神だもんなぁ!」
「⁉」
ロゼラリアの近くに人影。あれは……
「エイル……?」
彼はレーザーとは違う光の縄で縛られていた。
「何を……」
次の瞬間、ロゼラリアはエイルにキスする。
「……⁉」
「……ご馳走様」
「あがっ……」
エイルの体に何かが走る。血管一本一本まで把握できる……。
(なんだ……これは……!)
光の縄が解け、エイルの体が自由になる。しかしエイルは、ロゼラリアではなく。
俺達を狙った。
拳銃で建物の上から射撃……。
「なにしてんだ!エイル!」
「………」
エイルの眼に生気はなく、殺意に満ちている。
「ロゼラリアぁああ!何をしたぁああああああ!」
「何って、私の奴隷にしてあげただけよ。……さあ、行きなさい。終わったらたっぷり可愛がってあげる
からね」
「……」
ハンドガンの引き金を引き続け、俺達に死を送る。
その姿は勇者などではなく、死神のそれだった。
「エイルやめろお!」
「目を覚ませえええ‼」
レング達の声も聞こえない。
しかし一瞬、エイルの動きが硬直する。
その頃エイルの精神世界では………。
―――ここは―――暗い――。
―――誰か――。
暗い世界の中。しかし小さな亀裂。そこからこぼれ落ちる一滴の記憶。
九年前。
「お父様!」
「おお、エイルよ……」
そこにはエイルとアーサー。モルドレッド。ジェニファー。そして母、モーガン。
「よいか、エイルよ。お主はこの国の正統後継者として民を導く運命を背負っている。それを努、忘れるでないぞ」
―――アーサー―――?
次の記憶。
「逃げて……アーサー……………………!」
母がアーサーに銃を向ける。しかしアーサーは―――――
「受け止めよう」
「アーサー!」
弾丸がアーサーの心臓を貫く。これがあの記憶。
俺は―――誰だ―――俺は―――
「エイル=ローグ=ペンドラゴン……それがこの子の名前だ」
―――俺は。
王だ。
「う……………」
「何…………?」
エイルの体に赤黒い稲妻が走る。
「エイル!」
「戻ってこい!」
「《ブレイバー》!」
「うおおおおおおお!」
身体が動く。エイルの意思で。
赤黒い稲妻の正体はエイルの闘気。それが覚醒した英雄の血族と空間のエーテル(ブリタニアが発見したこの世界に漂う力の根源)の組み合わせにより体外で暴走していた。しかし今は自身の手足のように動かせる。
「〝根源変異〟〝怪物〟」
「俺はアーサー・ペンドラゴンの息子……エイル・ローグ・ペンドラゴン……この国の王だ!」
エイルの腰の後ろに血液が流れ込み、体外で触手の形になる。
「あれはまるで…………《喰人》……?」
「ロゼラリア……お前のおかげで俺の体の使い方がよくわかった……!」
「……………………そう」
「面白い奴隷だったのに……残念」
ロゼラリアの背後に現れた無数の光球。そしてそれから放たれる裁き。
「さようなら」
一本に集まった強力なレーザー。
それに対し、エイルは腰の四本の触手を向ける。
「ふーっ……」
アーサー………いや、父さん。力を貸してくれ。
(もう父さんはいない……。これからは、俺自身の力で!)
そう、アーサーはロゼラリアの支配により危険分子として消されてしまった。
「はあああああ‼」
触手でレーザーを受け止め、触手を消して全速力で駆け出す。
(イメージしろ!自身の肉体を変えられたんだ、世界を変えることぐらい……それに、手本ならもう見
た!)
「くっ……うぉああああ!」
血液をエーテルと同化。それを形作っていく。
(俺の殺意と、恨み、憎しみ……そして、希望を形に!)
未来を切り開く、希望の光。
「奪命!」
禍々しい片刃の短剣。この国の、復讐の結晶。そして、魔剣と聖剣の二面性を持つ。




