セルウス、発進
「ここが、ブリタニア王国………」
この世界の技術力は国によって大きく異なる。とはいえこの国には機械というものまであるらしい。そんなことを考えていえると、バシッと俺の背中が叩かれる。
「よ、アルタイル」
「師匠、それにアリスも」
「他にも 《マティリス・クラン》の人は来てるよ」
「ようこそ。王国へってな」
師匠が笑ったその矢先。
「さっさと歩きなさい!」
まるで言うことを聞かないペットを躾けているようだが。その首輪が付いているのは――人間だ。
「あんた、何を……」
俺が止めようとした時、肩が掴まれる。
「なんで止め……」
「これがこの国のルールだ。俺達が首を突っ込むことじゃない。」
「なっ……」
「……分かってくれ」
「アル」
「ふざけるな……!それが、人が人を踏みにじっていい理由に、それを正当化していい理由には、ならないだろうが!」
「……すまない」
「………それでなんで俺がここに呼ばれたんだ」
「それはすぐ分かる」
「?」
戦争に負けたスレイブ。つまり男『黒種』(ブラック)それを虐げる女『帝王種』(ロード)
そんなことが正当化されていい理由が、あってたまるか。
「よく来たわね、《黒き剣士》」
師匠に案内された王城の女王の間。そこには王座の上にもう一つの椅子……そこに座っていたのが。
「私が 《ロゼラリア》よ」
「あんた、なんで俺を呼んだ」
「それはね、救ってほしいからよ。貴方も知っているでしょう?この国は神の恩恵を受けていない。だから自分達の科学力で守るしかない。そこで現れたのが貴方。恩恵を受けずに恩恵を超えた男。貴方がこの国を救う勇者になるのよ 《黒き剣士》」
「いいだろう。」
「そう、よかったわ」
「ただし、俺が救うのはこの国ではなく、スレイブ達だ」
「……どういうつもりかしら?」
「どうもこうも、愛と平和の女神様が奴隷制度を推進しているって情報を聞いてな?俺は前々からこの国が嫌いだった。人間を扱う権利は、誰も持っちゃいない!」
「……残念ね」
ロゼラリアが手を振ると騎士たちが現れる。王宮のじゃない、《ロゼラリア・クラン》のだ。
「やりなさい」
騎士たちは襲い掛かってくる。
「お前らはすっこんでろ!」
俺の闘気に気圧された騎士たちはバタバタと倒れていく。
「じゃあな。支配と差別の女神さんよ」
そう言って窓から飛び降りる。体術スキルで受け身を取り、ダメージはない。
「……」
先に調べておいて正解だったな。俺が行くべき場所は。
(最前線、北部!)
「……《ソニックアクセル》!」
身体の最高速度を引き出す。
走ったその先にあったのは。
「なんだこれ、扉?」
首都から約三時間。高さ数十Ⅿの、鋼鉄の。
「でかすぎんだろ」
その時スピーカーから
『こちら、北部戦線第一戦団。貴官の所属を名乗れ。』
「こちら冒険者ギルドアースリア支部所属第一級冒険者。アルタイル=アリエル………貴官達を救出に参上した」
『この基地には軍人以外の者は侵入出来ない。それに、本当に僕達を助けてくれるの?』
最後の声は震えていた。恐怖に怯える子供の声。
「ああ、任せろ。」
『この扉は厚さ五Ⅿあるんだよ。壊せるわけがない』
「修行の成果を見せてやるさ」
俺の最近の特訓は神威を抜かずに炎を扱う練習。あの時、豚を倒した時のイメージを。
「フーッ…………」
腰を落とし、どっしりと構え、そして武術の〝掌〟の構えを取る。炎を掌に集めて。
「〝炎掌〟‼」
そこから炎を一点解放。
「ハアアアアアア!」
扉を吹き飛ばす。地面ごと抉り飛ばし跡形もなくなる。
「これでいいだろ?」
『……ありがとう。冒険者』
「……ああ」
中に入るとみんなから剣に興味を持たれた。この国の剣といえばロボットの大剣のみ。人が持つ剣など昔のものになっているらしい。しかも、その大剣を振るうのは大隊長ただ一人という。
「俺は二番隊隊長、レングだ」
「おーい。カイ、エイルを呼んでくれ!」
「はいはーい」
「……」
しばらくすると無表情な少年がやってきた。
「こいつが俺達の大隊長、エイルだ」
「……よろしく」
「ああ」
「ごめんねー無愛想でしょ」
「あはは……」
「本題に入りたい」
エイルと呼ばれた少年は話を切り出す。
「本当に俺達を助けるつもりか?」
「ああ、そうだ」
「…………なら、俺達も動き出すか」
「……?」
「俺達も一週間後に革命を起こすつもりだったのさ」
レングが笑いながら話す。
「あの悪女共の顔面に一発ぶち込まないと気が済まないからな!」
レングの声に周りの少年達もそれに頷く。
「それなら話は早い」
「俺達の戦力は大型が百六○機、小型が八十八機。……そして」
『儂達だ』
半透明の男たちが音もなく現れる。
「あんたたちは……?」
「この人たちは僕たちの先祖。死んだ黒種の人達の魂だよ」
「死んだ……魂……」
「そう、そして俺達黒種には能力がある。……死者を身に宿しそれをトレースする能力〝英霊憑依〟」
「凄い能力だな……」
「神の加護がない俺達の力だ」
「……俺と同じか」
「え?」
「俺にも加護はないんだ」
「それであの力を……⁉」
「どうして俺にこんな力が宿ったのかは分からない。それに俺は二年前、刀を引き抜くまで自分のステータスすら見ようとしてなかった。冒険者になってステータスを見れるようになってもそれを人に見せようとは思えない。ただ、俺は俺だ。神の加護を受けない純粋な俺の力。それはあの女神がいうように、君達への希望になるのかな?」
「……ああ、お前は俺達の希望だ」
「そうだぞ。」
「一緒にあいつらを叩く」
「おう!」
首都からここまで約三時間。この基地から戦士が飛び出す。
「行くぞおおおおおおお!」
俺たちが向かったのは王城の裏側。城壁の警備が最も薄い場所。警備しているのは《ロゼラリア・クラン》と警備兵のみ。この大扉を破壊するのは俺の仕事だ。
「炎術〝炎波〟!」
両手から溢れ出る炎が扉を溶かす。そしてそれを合図に全方位から侵入する。
「一番隊、出る。」
『了解!』
『野郎共!終わらせるぞ!』
『押忍!』
「ああ、決着をつけよう」
これが俺達の革命となる。そしてこれは、神破りとなる。
ガシュン、大きな足音と駆動音。これは俺たちのものでは無い。
「あれは……」
王国の首都防衛兵器。それは 《セルウス》によく似た二足歩行の機体。




