勇者の一撃
「せやっ!」
二刀流状態ではスキルが使えない。隙を見せない限り、二刀流の単純火力で討伐するしかない。
…………これが、アインハルトが言った「細工」。巨人が片刃の大剣を持ち、振り上げる。
知能のない巨人が大剣を振るえるはずがない。振れるまで調教したのだろう。
「グオオオオオオ!!!」
バックステップで回避するが、風が吹き荒れる。
「こんの……セァアアアアアア!!」
十六連撃を放つが、傷は付かない。硬すぎる。ありがたいことに住人はみんな避難しているようだ。全身全霊でこいつを、倒す!
「頼む。力を貸してくれ!」
俺は二本の剣を見つめる。必ず剣は答えてくれる筈だ。
(行くぞ!)
「せ、あああああ!」
二十連撃。ライトベールも纏っていない、ただの斬撃。しかし俺の魂、いや、《俺達》の魂が乗ったその剣はあまりの速さにライトベールの残像のように光を残す。右、左、右、左、右。交互に振り、同時に振り、突き刺す。脳が焼き切れるかのように、ただ剣を振るう。
巨人の剣を弾き、回避。斬撃。
「お、おおおおおお!!!」
「グルアアアアア!」
三本の剣が衝突し、お互いに吹っ飛ぶ。俺の筋力パラメータでは本来、大剣を弾き返すことなど不可能。俺は今、限界を超えるとともに成長している。
「ガッ!」
巨人は大剣を両手で振り下ろす。
俺はゼオンの戦い方を思い出す。奴の動きを二刀流でトレースする。
「せあっ!」
バックステップで避けた後、巨人の大剣を二刀の剣で地面に叩き付ける。流石に浮き上がったりしないが、奴の体が一瞬硬直する。俺は駆け出し、大剣を走り抜ける。腕を斬り、胸を斬り、首に二刀流同時単発技とでも言うべきものを繰り出す。俺は剣が触れた瞬間に雄叫びを上げた。
「ウ、オ、オオオオオ!!」
「グガアアアアア!!!」
巨人は最後の方向を上げ、死んでいった。
「ハア、ハア……」
俺は慣れた動作で二本の剣を払い、背中の鞘に納める。周囲を見渡しても誰もいない。逃げ切ったのだろうか。カインは救助に間に合ったのか。
「……っ」
俺は《ナイトプレート》を引き抜き、走り出す。
「え?」
ドームを出て、俺を待っていたのは。
「アリス!」
「アル!探したんだよ!中で何が……」
「実は」
俺は全てを説明した。セナに呪いがかけられたこと。アインハルトと名乗る犯罪者クランのトップ。それに敵対するゼオン。その最中セナが攫われたこと。
「なんてこと……」
「会議を行う。来てくれ」
ディオンに案内されたのは元、冒険者ギルドアースリア支部。半壊状態だがまだ使えるそうだ。
「役割分担しよう。私、アリス、アルタイル君の三名で《天使》の奪還を行う。リーフィアは一番隊 《攻撃特化部隊》を率いてその援護。五番隊 《守備部隊》はアースリアの警護」
「了解!」
「分かった」
「早速動こう。そうだ。ギルドマスター。依頼主の情報を洗ってくれ」
「あー、はいはい。任せてよ。俺にはそれしかできそうにないからね」
「頼む」
「各自、配置につけ」
俺は今、《索敵》スキルを発動しセナの捜索にあたっている。
「見つけた!」
「どこだ」
「西門近くの一軒家。なんだ、こいつ……」
「どうした?」
「何かがいる……モンスターか……?」
「仕方ない、行こう」
俺、アリス、ディオンでその家に突撃する。この家では狭すぎて二刀流が使えない。片手剣も突進技が使用不可。通常技で対抗するしかない。俺達がその家に突撃すると中には椅子に縛り付けられたセナと土偶が。そして。
「《喰人》(グール)!」
「やっかいな……」
「けど、やるしかない」
「ギギギギギギ、グルァ!」
喰人とはつまり元人間。死体が動き出し人々を喰らう。特徴は意識消失と
「せあっ!」
「ふんっ!」
「ハア!」
体から生えている触手。しかも硬い。
「アリス、スイッチ!」
「了解!」
片手剣水平二連撃技 《クランタル》。奴の触手を跳ね除け、細剣四連撃技 《アンスト・シンク》。
見事に直撃。しかし、すぐに再生してしまった。これが一番の問題点だ。再生能力を上回る火力をぶつけるしかないのだが。
「ディオン、頼む!」
「任せたまえ」
ディオンが触手を防ぎ、俺は片手剣四連撃技 《エクシア》で四肢を斬り飛ばした。再生したけど。
「これではジリ貧だな……」
シュッ!という音で触手が飛んでくる。片手剣反撃技 《エンター》。
「こんの、野郎!」
片手剣水平斬り 《エンタス》。片手剣刺突技 《シュート》。片手剣六連撃技 《パーティクル》。
スキルを繋げて連続攻撃。再生速度が鈍る。
「今だ!」
「セアアアアアアア!」
「破!」
片手剣上段単発技 《スラスト》。
「ハアアアアアア!」
(イメージしろ……俺が知る最強の一撃を!)
父さんが見せてくれた――擬似
「〝竜牙餐喰〟!」
本来は命を削る秘剣だが、効果まで再現されている訳ではないので勿論俺は何ともない。しかし意志力とでも言うのだろうか。闘気を纏った俺の剣は加速し、家ごとグールを叩き切った。
「今のはまさか、《勇者》の……」
俺は剣を鞘に戻し、家を出る。
「うわぁ……」
やっちった。家を斬っちゃった。弁償だよなぁ。土偶も一緒に斬れたみたいだけど。
「家のことは気にしなくていいよ。元々誰も住んでいなかったし、補填もギルドがやってくれるから」
「ほ、本当ですか……?」
「うん」
「よかったぁ」
事件後、犯罪者クランに依頼したのは貴族階級の婦人だということが判明。その者の判決も出され、刑務所にぶち込まれた。
しかし動機がハッキリしない。最初は『あの女が悪いんだ。あの者が戦争の引き金になる。』とか言っていたのだが、後になると『何も知らない』と本当に忘れたかのように否定しだした。
まるで、操られていたのがいきなり自由になったような……。
これはなにかの始まりなのか……それとも、もう始まっているのか……。




