歌姫を狙う者たち
俺のカンは当たっていた。満員以上に入っていた。そこの中央のステージには金髪の歌姫。いや、幼さが残った天使というべき女性が歌っている。彼女がセナか。
そして俺はとあることに気付く。ドームの中に暖かい金色の光が漂っていた。俺は試しにその光に触れてみると、過去の記憶がフラッシュバックした。あの時守れなかった者達……彼ら彼女らは俺を恨んでいる
だろう……。なのに記憶の中に現れた六人は笑顔でこっちに手を振っていた。そして彼らの口が動く。
が ん ば れ よ。
だ い じ ょ う ぶ だ。
き に す る な。
あ り が と う。
最後に聞いた少女の言葉に、俺は涙を流した。
…………俺こそ、ありがとう。
涙を拭い、俺は今の状況を確認する。これが歌姫のユニークスキル、《希望》か。
ただ俺には《慈愛》にも感じるよ。そしてこの光の正体は《心象転写》。自身の心を世界の一部にユニークスキルを通して転写する力。つまりこれが、彼女の心か。
これが人気の秘密。いや、これが心を集めない訳がない。
「……」
俺のカン、いやスキルが何かを感知する。俺は単独冒険者としての最低限の能力として基本スキル《索敵》、《気配察知》を習得している。そして、そのどちらもが反応している。俺はスキル精度を限界まで集中させて、一万の人をかき分ける。どこだ。
この気配は殺気。しかも相手の武器は弓、そして狙いは歌姫本人。こんな状況どうすれば……。いや、思い出せ、父さんが言っていたことを。
いいか?アルタイル、これから先困っている人がいたら迷わず助けるんだ。
(助ける……細かい人物は分からない、気配だけじゃ姿まではわからないんだ。なら弓を放った瞬間に投剣スキルで)
俺は腰から二本の投擲針を取り出し、左右の手に一本握る。集中。そして歌姫の顔に向けて矢が放たれる。ここ、投剣スキル 《ショット》
「そこか」
俺は弓が放たれた場所に向けてもう一本の針を投げる。ギャアァァァァ!と弓使いの声が聞こえてその後、歌姫の足元に弓矢が転がる。
「えっ……」
私の目の前に矢が転がった。ライブ中、歌っていた最中にそれは落ちてきた。私を狙ったであろうその凶器は、狙いが外れたのか分からないけど、直撃はしなかった。私は観客席を見つめる。そこには何かを投げた後の体勢をしている黒い人影を見つけた。さっき聞こえた何かがぶつかったような小さな音。恐らく彼が弓の軌道をずらしてくれたのだろう。驚いたが私もプロ。ファンの為に歌わなければ、私は歌い続ける。暗くなった時まで歌っていた。そして今日最後の曲 《君が繋ぐ》を歌い切り、終了。
「ふう……」
私は休憩室にあるベッドに飛び込み。
(助けてくれたあの人、誰なんだろう。黒い人だったなぁ)
俺は彼女を狙った矢をずらした後、妙に疲れて家に帰っていた。冒険者として稼いだお金で買った一軒家だ。大分高かったぞ。その額、一千万リル。普通の量産型の剣が五千リルなのに高すぎだろ。フカフカベッドに座り、自分のステータスプレートに記されたスキルロットを確認する。《片手剣》《索敵》《気配察知》《投剣》《隠蔽》《英雄の炎》《反撃》《闘気》の八つ。
ソロは一人でどんな状況でも対応しなければいけないため、これを使い、生き残らなければいけない。そのために俺は普通の冒険者が四つ程のスキルロットを持っているのに対して、その倍のスキルを習得している。緊急事態には二刀流も使うが基本はこれらのスキルでやり繰りしている。眠気に襲われた俺は、眠った。




