クランの誘い
ある日、酒場 《羽の巨人亭》で朝食をとっていると。
「アル」
俺に声をかけたのはアリス。なんか後ろに強そうな人たちがいるんだけど。
「アルタイル君」
アリスさんの後ろにいる騎士が俺の名前を呼ぶ。
「あなたは……」
その騎士が名乗る。
「私は、《マティリス・クラン》の団長、《ディオン=クリンス》だ」
「あの時の…」
前に助けてもらった。《聖騎士》。
「で、そんな方が俺に何か用ですか」
俺の質問にディオンは笑みを浮かべて答える。
「単刀直入に言う、私のクランに入ってくれ」
「え?」
最高峰のクランに俺が……?だが。
「誘ってもらって申し訳ないんですが……お断りします」
「……アル」
アリスは顔を曇らせる。俺は少し心がキツイが。
「何故かね?」
ディオンの問いに俺は笑って答える。
「人との関わりは疲れるんです。冒険者みたいに命をかけて戦う仕事で、大切な仲間や人をつくりたくないんです。傷付きたくないんです。もう、二度と」
《マティリス・クラン》の人達は何かを察したのか、言葉が出なくなる。
「……なら、自分の自由は、自分の剣でつかみたまえ」
「…は?」
「私、ディオン=クリンスは、貴殿、アルタイル=アリエルに決闘を申し込む」
宿の中で驚きの声が上がる。しかしクランメンバーは何も驚いている様子はなかった。アリスに関しては満面の笑みになっている。
「決闘は明日の午後二時、準備してくれたまえ」
「ちょっ」
立ち去るのを止められなかった。
「……どうしよう」
俺は剣を持ち、とある店に出掛けた。《ベリアス鍛冶屋》
「いらっしゃせー!」
扉を開けて店に入ると女性店主 《べリアス》が出迎える。
「あら、アル……今日はどうしたの?」
「急いで装備がいる。用意できてるか?」
「……任せなさい」
ベリアスが裏から大きな木箱を持って来る。
「これが……注文の品よ」
その中には二本の剣が入っていた。一本の剣は《ナイトプレート》。
そしてもう一本は《アイアンブレード》。量産型の剣。
「あんた、ホントにあんな戦法を使うつもりなの?」
「ああ」
「そ……、あんたの戦略も分かるけど、戦いの中でそこまで頭回る?」
「何とかするさ」
「二刀流ねぇ……」
「加護の効果もなしに《新約》を破れるの?」
「……」
そう、この決闘で最も重要な要素、ユニークスキル 《新約》。ディオンがこの街最強――。いや、冒険者最強を誇る理由。攻防一体の剣技。今まで決闘を全勝。しかも一撃も喰らっていないという。大盾とロングソードを自在に操る無敵の存在。そんな規格外には、《規格外》で立ち向かうしかない。店で武器を
受け取り、近くの森で剣を振るう。二刀流十二連撃。大木に切りかかると、木に大きな切れ目が入った。
「…………いけそうだな」
圧倒的な防御力には圧倒的なスピードと火力をぶつける、そんな単純な発想から生まれた戦術。
ただ、これしかないんだ。…………全力を。
俺は徹夜で二刀流を練習。片手剣技も修練を積んだことで熟練度は七○○を超えた。
今まで使ったことのない技も習得して、準備完了。
決闘場に行くと大量の観客が待機していた。ディオンが戦うということで、一目見たいのだろう。俺が待機室で準備していると、アリスが中に入ってきた。
「アル」
「どうした?」
「こんな手段でアルをクランに入れることになるなんてね」
アリスは前々から俺を誘っていた。念願なのだろう。しかし俺も負けるわけにはいかない。切り札の二刀流を使うんだ。ディオンの守りを破れるのは、それしかないんだ。
「俺は負けません」




