黒き剣士
あの事件の後、俺は《黒き剣士》の異名を与えられた。
これほど俺に似合った名前はないだろう。〝死神〟〝神々に嫌われた男〟に相応しい名だ。
あの巨人の正体はまだ分かっていない。ギルドからコードネーム 《ホワイトディザスター》を付けられたその個体。神々の知識にもなかったその巨人は、冒険者の心に闇を落とした。
そしてこの悲劇はまだ、終わらない。
「せあっ……」
四連撃剣技 《エクシア》
技をぶつけたリザードマンを切り裂き、そして次の個体。リザードマンエンペラー。片手長剣にバックラーを持った帝王。
「グルアッ!」
振り下ろされた剣を弾き――。
「……〝リヴァーサルカウンター〟」
俺のオリジナル技。相手の剣を弾き爆音をぶつける 《リバーサル》と空間を切り裂く斬撃〝飛天〟を合わせた技。相手の攻撃の隙。硬直時間を狙って爆音と〝飛天〟をぶつける。
長剣ごと体を吹き飛ばし、竜剣士は灰となる。
「……」
剣を鞘に入れて歩き出す。
道中のモンスターも全て殺し、気が付くとそこは……
「ボスの部屋……」
禍々しい巨大な扉。そこから溢れる黒い気配。
「……」
俺はそこに入った。
ここで死ぬのもアリだと思ったからだ。最後くらい華々しく……一人で散りたい。
「……」
無言で剣を構え、敵を待つ。すると奥から何かが出てきた。それは二足歩行の豚のようなデカブツ。第七十六階層ボスモンスター 《グレフリオ・レッド》
「……」
走り出した俺に反応し、そいつも走り出す。
「ブルルッ!」
片刃の大剣を振り回したそいつに密着し、片手剣六連撃技 《イプシロン》を叩き込む。火花が飛び散り、その直後にまた連撃。
「……アアッ!」
片手剣上位技。十連撃 《プロミネンス》
「……吹っ飛びやがれ」
豚は大きく後ろに吹っ飛んだ。そして俺は更なる攻撃を……。
「グガアアアアア!!」
しかし大豚は大剣を高速で振り回し、反撃を始めた。
「……っ」
(速い……)
図体に対して動きが俊敏だ。
「ぐっ……」
捌ききれずに攻撃をもろに受けてしまう。だけど俺は立ち上がる。自分でも何故立てるのか分からない。
けれど、俺の魂が生きているのなら。
「ワォオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」
俺の剣は動き続ける。死ぬまで……。
まだだ…まだ、終わってねぇ……!
(動け、動き続けろ!こいつを、殺すまで……!未来に……つなげ―――)
「アルタイル!」
「やめて!」
「やめるんだ!」
誰か……喋っている…?
そんなことはどうでもいい……。剣を握れ。命を込めろ……魂を、燃やせ!
「ワオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!」
獣の咆哮。それは既に人のものではなく――――――。
俺の身体から闘気と炎が溢れ出る。神威は持っていない。英雄になる資格のない俺が持つべき武器ではないから……。なのに。
ガッ……。
俺の動きが止まる。何かに掴まれた――?
「何やってんだ師匠……アリス!」
「何って、弟子の馬鹿を止めない師匠が何処にいるんだよ!」
「悲しそうな目、しないで……アナタまで、そうならないで……アナタの目は……輝いていた、あの時のア
ナタの心は……」
「!」
「二人とも、炎が!」
「へっ、こんなのポーションでどうとでもなる……」
「私達を信じて……!」
「……!」
そうだ……身体はとっくに思い出していたんだ。俺は、英雄に!




