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英雄開幕 2

「大丈夫」


「えっ……⁉」


アリス、さん……?


つい先日戦い、認められるはずだった女性がそこにいた。

レイピアを右手に、誰よりも強い姿で。


「今、助けるから」


「あ――――――――――」


ありがとう、そこはそう言うところだろう。

だが、喉で声が突っかかった。出てこない、まるで身体が拒否しているかのようだ。


「倒す」


「だ、め……ですっ……」


俺はその、自分よりも細い腕を掴んだ。


「でもっ、その傷じゃ―――」


黙ってろ、最強。


黙っていろ、英雄。


今は、今だけは――――――――――――道化オレの時間。


「……ナイトプレート!」


ああ、往くぞ相棒。ここからは、喜劇の開幕だ。


「さぁさァ、見ているがいい。我が喜劇の結末を。……邪魔はしてくれるなよ?」


「えっ……?」


「闘気解放」


――――――――――――――――――――――――【限界突破】


「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」


『ガァアアアあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!』


俺と鬼は同時に咆哮を上げた。

雄叫びとも言えるそれは、迷宮を震わせる。弱者だとしても、強者を演じよう。

才能がなくとも、無理矢理戦おう。


「オーガよ! 我は貴殿と決着をつけよう! だからこそ、貴殿も全身全霊で答えてくれ。これはオレたちだけの最終決戦だ!」


『グゥ……ァア……』


鬼は大剣を両手で構えた。その瞳は戦いしか捉えていない。


「よろしい、サァ……ハッピーエンドといこうか!」


***


私の眼の前には、オーガがいた。


それも、突然変異した特殊個体。それに、自分よりも若い男の子が挑んでいる。

助けは拒まれた。なら、自分ができるのは見ることだけ。


「アルタイル……アリエル」


以前、彼が試験を受けに来たときにはここまでの気迫はなかった。

精々『見込みのある』程度だったのに。それなのに……彼の声に、動きに―――見入ってしまう。


カリスマとも違う、引き寄せる力。


「……英雄」


人間の、意地と誇り。


「アリス!」


「アリスさん!」


「……ディオン、みんな……」


後ろから聞こえた声は、所属するクランの団長と仲間たち。


「あれは、ダークオーガなのか……⁉」


「うん、そう」


「そうって……あの冒険者を助けないんですか⁉」


「助けようとした……けど」


「……けど?」


こう言うしかない。だって、


「邪魔はするな、って言われた……」


『はぁ⁉』


仲間たちは素っ頓狂な声を上げた。

しかも、顔を思い切りしかめながら。


「邪魔するなって……相手は中層のボスクラスだぞ⁉」


「一人じゃ、勝てない……!」


「……待ってください、あの冒険者……マティリス様が関わるなと言っていた……」


「アルタイル・アリエルか!」


ディオン……団長の声すらも少年には聞こえないのだろう。


彼らは……楽しそうに戦っていた。


「笑ってる……⁉」


「イかれてるよ……」


「だが、強い」


「えぇ……あれで加護なしって嘘ですよね」


少年は、鬼と互角に立ち回っていた。

前に戦った時より、数段強くなっている。アースの流水剣すらも使いこなして。


「速いし正確……だけど」


「力が足りない」


「オーガのパワーには勝てない!」


***


「せぁああああ!!!!」


回転斬り。

しかし、体重や遠心力を乗せたその一撃も防がれた。


一撃で―――――――――――――――吹き飛ばす。


やれ。


英雄剣術、竜帝の構え。


竜技。


竜牙ドラグ……衝撃ブレイカーァアアアアア――――――――――――ッッ!!!!」


『グゥおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお――――――――――――ッッッ⁉」



「嘘……」


「勝っちゃった……」


「黒き、剣士……!」


「アル、タイル……」


アルタイル・アリエル!

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