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勇者のせいけん

「勇者‥‥俺には重すぎる名だ。勇者とは、真に勇気を宿す者。だから、だからこそ。ここにいるみんなが勇者なんだ!」


「………ならばかかってこい、勇者ども!」


「ああ……そうさてもらうよ」


「終わらせましょう」


「これで、最後です………!」


「想起、解放」


オトハナ・アラタの全力。全てを乗り越えるためのちっぽけな意志の力。


これは彼が持つ唯一の――――【彼だけの力】。


「―――オレは、勇者だ」


  ***


 【黒きけんし】は思考を走らせる。たった一つの目的のために。たった一人の女性の為に。


(――――思い浮かべろ、アイツに勝つ姿を。六花を――――助ける自分を!)


 現実で勝てないなら幻想の中だけでも打ち倒せ。それが出来ないなら死ぬだけだ。


魔法はなし。剣は無効。闘気は無効。残るはスキルのみ。

願いの丈で力を増すスキル【想起】。これで邪神を討つ。それが可能か?


――――否、不可能。ならばどうするか?


――――燃やせ、己を。己自身の炎で――――!


葬炎ヴェーロス


炎をもっと熱く。赤焔から青焔に。蒼炎から、白炎に。


「焔火の魔剣 (グラディウス・フローガ)」


炎を剣へと装填し、その魔剣を顕現させる。あの少年と同じように、異能をつるぎへと。


「これがオレにできる――――全てッ!」


【火焔の聖剣 (フロディス・グラディエーター)】


「ぉおおおおおおおおおおおおおお――――――――ッッ!」


聖火を纏った斬撃は神を襲う。そして――――、


「ぁぁ……やはり人間は美しい」


「…………ッ」


アードは両手に全能力を注ぎ込むことで剣を防いでいた。


しかし、【黒きけんし】は諦めない。この名は、絶対に諦めない――――勇者の名だ!


「う…おおおっ!」


更なる膂力を注ぎ込んだ瞬間、剣が砕けた。二つの力が大きすぎたのだ。人器が耐えられるはずがない。剣がダメなら――――。


(拳だ!)


「――――【火焔の聖拳 (グラディス・グラディエーター】!」

 

***


オレの思い出はあの世界にしかない。


「父さん、母さん」


『新』


オレの時間はあの場所から――――一秒たりとも進んじゃいない。


「六花」


「新くん」


もう一度、あの世界で、お前の飯を食いたい――――!


「音花新」


「…………あなたは………?」


 オレの前に立つのは黒いロングコートを着た、オレではない誰か。


「君と同じ、黒き剣士さ」


「…………オレは偽物です。名前だって、友達から借りたものだし、それにオレは―――強くなんてない」


「嘘をつくな」


「え?」


「強くない? ふざけるなよ、それなら君は何故戦える。何故、神にも抗う!」


「そ、それは、理由があるから………」


「そうじゃない。そうじゃないだろう。お前は何故、剣を執った! 拳を振るう!」


「………ッ」


「お前がお前だからだろ!」


「………!」


「立て、音花新! お前は偽物なんかじゃない。唯一無二の本物で、勇者だ!」


勇者とは、真に勇気を宿す者。

勇者とは、その勇気を見失わない者。

勇者とは、誰かのために勇気を燃やす者。

勇者とは、どんな逆境でも乗り越える者。

勇者とは、大切な人を守るただの人間。


「いってこい新。お前は、お前がやりたいことを――――やるべきことをやるんだ!」


「父さん……」


「いってらっしゃい、新。私たちはここで待ってる。いつまでも、そう‥‥いつまでも」


「母さん………!」


自然と涙が溢れる。精神世界のはずなのに、幻想のはずなのに。

どうして人は心を持つのか。進化の度に強固になるのか。

人は、繋がるために想い続ける。


「新くん」


「六花………」


「待ってます。私はずっと………待ってますから!」


ああ、そういうことか………アード、お前は六花を攫ったわけじゃなかったのか。

六花を守る為に――――敵から、助けるために………!


 ありがとう。


――――いってきます!


***


振り絞れ、己の全てを、拳に乗せろ。


「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!」


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