聖火の炎
二刀流上位剣技 《ナイン・ストライク》。九連の斬撃が神を襲う――――、
「ああ、キミでは遅すぎる」
(殆ど同時の九連撃だぞ⁉ なんつー反応速度……チートかよっ⁉)
「なら、これはどうかしら? ――――――《星砕きの流星群 (スターロード)》!」
「おっ、闘気の圧縮光線か。中々の威力だね」
「片手で防がれても……」
「まぁまぁ、相手が悪いよぉ~?」
「七つ鞘、七閃。――――〝七連光鏡〟」
ディン団長が放つ七本の刀から繰り出される抜刀術。囲うように斬撃は狭まる。
しかしアードには傷一つ付けられない。
「みんな、全力の一撃を同時に叩き込むんだ! バラバラでは殺せないっ!」
『了解!』
「いくぞ、アード!」
二刀流上位剣技 《スターマーク・リオネル》十四連撃。
「終わらせる! 【星砕きの流星撃 (スターストライク)・超星ッ!】
「貴方は、ここで倒す!【暴風之星閃】!」
「死ね、邪神よ。七つ鞘――総填。〝セブンス・レイン〟!」
「覇道の頂き――――〝五光閃〟!」
四人の攻撃が炸裂し、邪神にもダメージが見えてきた。そして僕は僕に出来ることを。
僕が思い浮かべるのは《双天》。
あの斬撃を、あの一撃を撃つ。その為にすることは一つ、溜めること。
なら、装填するしかないだろう。
僕の魔法は、あらゆるスキルや魔法を無効化する。
「【ソニックボルト】」
「なにっ、オレのエリア内で魔法を? まさか、アンチマジックか⁉」
「そうだ。僕があなたに届く一撃を放つ――――そのための魔法だッ!」
「キミは確かFランクの駆け出しだろう?」
「悪いけど、もうEランクだ」
「早いな。だがそれでもオレには届かないよ?」
「届かせる」
「…………やってみな」
《ライジング》に【紫電】を放ちスキルで無理矢理、刀身に押し込む。
そしてそれを集約し収束する。研ぎ澄ませる。【ソニックボルト】を【チャージボルト】に。
(短刀を――――――――長刀に!)
「行きます」
「来いっ!」
「せあああああああああああああああああ――――――――――――――――ッッッ!」
【斬光の霹靂 (ライト・ヴァンハーレ)】
紫の斬撃が神の右腕を吹き飛ばした。
「マジか‥‥本当にやりやがった! オレの腕を吹き飛ばすなんて!」
「シン、どうやって‥‥?」
「わ、分かりません。僕も、無我夢中で‥‥」
「流石、英雄が宿っているだけのことはある!」
「英雄が、宿る?」
「おや、キミも気付いてなかったのかい? 冒険者というのは鈍感だねぇ」
「………?」
「さーて、まぁ。自分で喋ったらどうだい? 黒き剣士。それとも……大切が殺されたら出てくるかな?」
そう言うや否やアードはアリスさんに向かって襲い掛かった。
「きゃっ‥‥!」
目にも止まらない八連撃。それが彼女の身体を傷つけ、抉る。
「くっ‥‥ハァッ!」
「ハハッ、まだまだだねぇ!」
「アリスっ!」
「ちょっとすっこんでってくれるかな⁉」
アードが手を振ると僕たちの身体は地面に伏せた。
力が入らない。何故だ? まるで、麻痺毒でも盛られたみたいに――――。
「あはっ、はははははははははっ!」
「はやっ‥‥」
「元、【閃光】も形無しだね!」
「あ、アリスさん‥‥!」
(やめ、やめっ――――やめろ‥‥!)
「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
咆哮に応えるかのように炎が身体から溢れ出す。何故だろう、温かく優しい感じがする。
「そうだ‥‥もう少し、もう少しだ――――黒き剣士!」