表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

110/191

神と人

「来たか」


「やぁ、久しぶりだね……アード」


「おぉ、これはこれは。《賢者》ディンじゃないか、人気は未だ天井知らずの色男。さぁさぁ、キミはボクに何を見せてくれるんだい?」


「そうだね。……邪神に送るものは一つだろう?」


「あぁ、確かに!」


『死と絶望だ!』


二人の声が響いた瞬間、動き出す黒い影――――、


「アードォオオオオ!」


「おいおい、キミは獣かい? 黒き剣士くん」


「六花をどこにやった⁉」


「いるじゃないか、キミの目の前に」


「は‥‥?」


アルタイルさんの目の前には邪神アードのみ。彼女の姿はない。


「何を、言っている……?」


鍔迫り合いを演じながら戸惑う剣士を邪神は嘲笑った。


「彼女は取り込ませてもらったよ、クククッ。ああ、彼女は本当にキミを愛していた! その想いに嘘はない。ただし、もう不要なゴミ屑だがねぇ!」


「な、あ……ああっ………ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ”ああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ‼」


 長き咆哮の後、剣士は双剣を振るった。

何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も。

しかしその連撃は一本の片手剣に防がれてしまう。


「アード……絶対に、許さない!」


「許さなくて結構、僕は絶対悪であり、混沌だ。一人間が干渉していい存在じゃないんだよ」


「じゃあ、一人じゃなきゃいいのかい?」


その言葉と共に炸裂するのは一振りの短剣。まるで血のような装飾の短剣を握っているのはディン団長。こちらも最高クラスの剣士だ。


「アード、キミが権能を発動させようが僕らには無意味だ。それは分かっているだろう?」


「もう発動しているんだがね…………確かに意味はないだろう……」


「なら、潔く死んだらどうだ?」


「死ぬ? オレが? ハハハ、道化もここまでくると笑えるね。……自惚れるのも大概にしろ、生物風情が」


「――――っ」


 奴の威圧感は正に神のそれ。しかし神々しさは皆無でただ純粋に黒く、怖い。


「そして、キミはいったいいつまで変装しているのかな? オトハナ・アラタくん」


「なっ……⁉」


 そう驚くのはアルタイルさん――――いや、オトハナ・アラタさん。


「何故、お前がそれを――――!」


「彼女の記憶さ、何なら彼女が作ったメニューを全部言ってみようか?」


「……どういうことだい、アルタイル・アリエル君」


ディン団長の問いかけにアラタさんは黙る。しかしすぐに口を開いた。


「今まで秘密にしていて、ごめんなさい。オレが――――勇者なんです」


『⁉』


攻撃隊全体に驚愕が広がり、誰もが黙った。


「………そうか。君が、あの勇者なんだね」


「…………変身」


彼はあの――――本当の姿へと変身した。


「………なるほど、正体を隠していたわけだ」


「…………はい」


「オトハナ・アラタ」


邪神アードが語りかける。優しく、毅然とした声で。


「キミは分かっているのか? その名が、どれだけ重いのかを」


「……何を言っているんだ?」


アラタさんにはその意味が分からないらしい。無論、僕にも分からない。


「その名は、凡そ四十六万人の人間を救った英雄……彼が名乗り続けているものだ」


「英雄?」


アルタイルという名前で聞き覚えがあるのは《剣聖》だけ。他に英雄と呼ばれる人がいただろうか。少なくとも、有名な英雄ではないはずだ。


「まぁ、この世界では知る人は殆どいないだろうね。……たった一人、アリス・フリューレを除いて」


「……そこまで知っているんですね、アード」


アリスさんが前に出る。アードの眼はまったく動かず、彼女だけを見ていた。


「ああ勿論。ボクは神だ。全知全能だ。キミが彼とした冒険も、大罪も、幸福も、全て」


「………じゃあ何故、貴方はアルに拘るの?」


「拘る、か。言い得て妙だね。無論、彼が世界を救える英雄だからさ。そして彼以外の英雄では誰であろうと――――救えない」


「それは、どういう意味?」


「さてね……まったく話過ぎたよ。そろそろ――――死んでくれないかな?」


「…………お断りします」


「そう? なら殺すだけだよ」


混沌支配デウス・エクス・マキナ


紫の結界が形成され、そのタワーを覆う。


「………張りなおしたのか?」


「ああ、念のためにね」


「…………――――――――ッ!」


二刀流上位剣技 《ナイン・ストライク》。九連の斬撃が神を襲う――――、


「ああ、キミでは遅すぎる」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ