英雄・勇者集結
「おやおや、もう終わってしまったのかい? 少々冒険者を甘く見すぎていたようだ」
「アードさん。この後はどうするのですか?」
「そうだねぇ……囚われのお姫様を救いに来る勇者を叩き潰す…ってところかな」
「…………新くんを止められるのは、神である貴方だけ」
「まったく、勇者というのも不憫だねぇ。愛する人を守る為だけに戦い、巨悪を打ち倒す使命を押し付けられて――――」
「テメェの価値観を押し付けてんじゃねーよ、クソ主神」
邪神に対し吐き捨てたのは彼のクランの団長。
ランクSの冒険者【アルス・ヴァンドル】。現在のアースリアで最強を誇る男だ。
「アルス、何か気に障ったか?」
「………アイツはきっと、本気でテメェを殺しに来る。剣技だけはアンタも無効化出来ねぇんだろ? 油断したら即お陀仏だ。なんせアイツ等の剣には……国民そのものが乗ってるんだからな」
「分かっているさ。油断も慢心もしない。ただ……余裕は見せるも知れないけどね」
「ケッ、相変わらず嫌な神だぜ…………」
「一応オレは主神なんだけどなぁ~…………」
***
そして、現状戦える冒険者たちが集結。総勢二百名の大軍だ。
「いくぞみんな。………頼む、六花を助けたいんだ……力を貸してくれ!」
《黒き剣士》の姿で頭を下げる勇者。それに対し冒険者たちは大きく頷いた。
「ありがとう……みんな!」
「それでは、作戦を説明します。団長、お願いします」
「………皆が知っているはずだ、あの邪神の強さを。だが、だからこそ、この戦いで僕たちが勝つ! 勝たなければならない! ついてこい、英雄ども!」
そう叫ぶのは《マティリス・クラン》団長、【ディン・アルゴノート】。Aランクの英傑。
エルフとドワーフのハーフ、【ワールダー】という唯一無二の種族らしい。
そして彼は近接戦を得意とする者たちを主軸とした部隊を編成。そのなかにはアルタイルさん、アリアさん、アリスさん。そして僕、シン・ホワイトも。
「シン」
「あ、アリアさん?」
「大丈夫? こんな作戦に志願して――――」
「大丈夫ですって。それに僕は援護ですから……。それを言ったらアリアさんの方が」
「うん……それはそうなんだけど………」
「これがアードとの最後の戦いなら、全員で生き残りましょうよ!」
「…………そうだね。頑張ろう!」
「はいっ!」
アリアさんは前衛組と合流。マティリス・クランの高レベル冒険者たちだ。
「アリア、あの少年が気になるのかい?」
「だ、団長。変なこと言わないでください…………」
「まさかアリスに続きアリアもとはね………まったく、みんな大人になっていく」
「あはは………」
「さて、行こうか」