私は諦めない。あの人に会うために――――
「巨人‥‥」
(アルも、こんなのと戦ったって言ってたっけ)
その巨人は黒色。
右手に二十Mはあろうかという大剣を握っていた。
六体の巨人は全てが凡そ全長30M程。
「一人で勝たないと、アルに並べない」
彼の強さは圧倒的だ。
その強さに何度も守られた。
そして、彼の背中を追いかけていた。
結婚しても差は埋まらず、黒き剣士は異世界でも最強であり続けた。
どんな世界でも、そう‥‥どんな世界でも。
あの少年の中にいるのなら、早く出てきてほしい。
そうモヤモヤしたこともあった。だけど、黒き剣士はソロであり、孤高であり、唯一無二。
応えてくれるはずだ。きっと…………きっと。
「だから、貴方と並ぶ!」
腰の細剣を抜刀し、巨人目掛けて構える。
この世界では騎士と呼ばれる者達しか扱えない《剣技》。
スキルでもあるこれは、冒険者の生命線だった。
「セァアアアアアアアアアアアアッッ!!!!」
細剣四連撃剣技 《レイン・ファランクス》
跳躍し巨人の胸部に連撃を叩き込む。
四発全てがヒットし、コアを貫いた――――かに見えた。
「うそ…………」
(再生してる…………⁉)
それに今の感触、触れた場所全てがコアのようだった…………。
(まさか、コアは一つではないの? 人造モンスター…………厄介)
「なら、全部砕くまでよ」
細剣八連撃剣技 《ウィニング・ホールペー》
「せいっ!」
最終八撃目をヒットさせ、着地。
確かに気配を砕いたはず。しかし巨人は倒れない。
魔石の気配は確かに七つ…………。
「まさか、まったく同時に…………?」
『ウォガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッ!!!!』
「⁉」
巨人はその右腕の大剣を振り払い、近隣の建物を破壊する。
怪力、だけでは収まらない膂力。
「なんて筋力……恐らくレベル8クラスのポテンシャルがあるわね…………」
(分析、できればいいけれど)
「なかなか難しいわね」
振り下ろしを横のステップで回避し冷静に判断する。
このモンスターは七つの魔石を同時に砕かなければ死なない。
そう仮説を立てた。
(攻撃に怒って興奮しているの? だけど知性のあるタイプではない…………)
「まったく、異世界というのは大変ね」
なら使用するスキルは一つ。
最も得意なあの《剣技》のみ。
「――――――――」
(お願い、アル)
「私に力を貸して下さい」
念じ、力を溜めていく。
「…………ハッ!」
細剣最上位剣技 《コスモスター・レスティング》
同時七連撃。
「せやぁあああああああああっ!」
巨人は今度こそ倒れ、灰となる。
***
「――――祈勇英閃」
同時刻、黒き剣士が灰色の巨人を討伐した。
他の四体の巨人も冒険者たちの尽力で討伐完了。
そしてその眼は邪神へと。
「終わらせるぞ…………アード」