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ニューワールド・ファンタズム  作者: 乙川せつ
第三章-邪悪なる正義・英雄宣誓編
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紫の剣士

魔術の中でも成長が爆発的に速い魔術。速度、威力、効果、どれを取ってもトップクラス。


しかし、使い手が未熟すぎる。


どれだけ武器が良くても、それを使いこなせる実力と経験が無ければ無用の長物と化す。

だから、努力するしかない。


「紫電……一閃!」


ナイフに【紫電】を纏わせ、刀身を拡張する。


その一撃はモンスターの首を焼き切り、絶命させた。


「まだ、まだダメだ。こんなものじゃ……」


周りから見れば、僕は狂っているのかもしれない。


数度会っただけの人達の為に命を懸ける。それは、間違っているだろうか。


いいや、絶対に、この選択だけは絶対に、間違いなんかじゃない。


***


「今日も、生きて帰れたぁ」


どっと疲れた足を引きながら宿の道を歩く。もう慣れたその道。


いつもと変わらないはずだった。しかし、何かが違った。


「……⁉」


誰かに、見られてる。


これは敵意とも好意とも言えない。殺意にしては優しく、好意にしては鋭い。


(ストーカー……? いやいや、あるわけないよ。気のせいだって)


そう思い、また足を進めた。これ…………勘違いじゃない。


しかも、疑念に近い。このアースリアで関わっている人は少ない。ギルドのおじさん、アリアさん、アルタイルさん、宿の女将さんくらい…………。


この人たちに何か疑われているのならショックだ。物凄いショック。


近道をしようと、路地に入った瞬間だった。


―――僕の前に金の髪が揺らいだのは―――、


「アリアさん……?」


咄嗟に口からでた人名が違うことを悟る。雰囲気も、気配も似ている。


だけど、何かが決定的に違う。


「君、名前は?」


金髪碧眼の少女はそう聞いてきた。訳が分からぬまま、素直に答える。


「………シン・ホワイト、です」


「……シン。君は、アルタイル・アリエルって剣士、知ってる?」


「Aランクの、無所属冒険者ですよね………?」


「………違う」


「………?」


その意味が分からなかった。違う? 何が違うんだろうか。


アルタイルさんはアルタイルさんだと思うんだけど…………。


「アルは、アルは……あの人なんかじゃない。名前が一緒なだけ」


「く、【黒き剣士】じゃない、アルタイル・アリエルさん………ですか?」


「ううん。アルは【黒き剣士】。……少なくとも、あの世界では」


「あの世界………?」


「ごめん、忘れて。………ねぇ、アル。どうして、答えてくれないの?」


「…………えっ?」


(………僕?)


その時、僕の胸がチクりと痛んだ。どうしてだろう、何故か、とても虚しい。


 レイピアを携えた少女は、無理な笑顔を作った。


「ありがとう。………また会おうね」


「えっ、あ、貴女は…………?」


「――――アリス」


「…………⁉」


(アリスって、アリアさんと同じ、二大美女の一人⁉)


【マティリス・クラン】の主戦力であり、幹部。


……僕、【マティリス・クラン】と何か因縁でもあるのかな…………。


けどまあ、二大美人と会えたのはラッキーだった。言ってることは分からなかったけど。


アルタイルさんが、二人いるのかな。けど‥‥同じ二つ名を持つ冒険者って、いるのかな。


確か二つ名ってギルドと神様たちが決めるらしいけど……ランクアップすらしてない僕には遠い話だ。


「…………」


あの胸の痛みは、なんだったんだろう……。


まるで、自分がその人みたいな感覚があった。そんなはずはないのに。


もしくは、僕の中に、誰かいる?


ないな。それなら知ってるはずだし。


「うーん………ま、いっか」


 考えても分からないことだってあるさ。ジッとしててもどうにもならないよ。


僕は宿に向かって歩き出した。


そして、この夜が平和の終わりになる。




これから投稿ペースが遅くなると思います。

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