英雄宣誓
「…………本当ですか?」
次の日の朝、ゼウス様の祠に向かいステイタスの確認をしてもらった。
『ああ、マジじゃ』
その結果は、到底信じられないものだった。
筋力E(一〇一)持久F(五一)体力F(四七)耐久F(二七)敏捷E(一二五)
器用F(四九)精神E(一一〇)
魔法(〇○○)
【スキル】【奴隷恋慕】
【魔術】なし
(―――上昇値、252オーバー…………?)
ほぼ昨日までの倍に等しい数値。ここまで成長したのは、例の【スキル】のせいだろうか。
しかし、これはいくら何でも早すぎる。普通、新人の伸びは最高に良くて五だと職員さんは言っていた
(一週間の伸び幅)。たった、たった一日で…………?
『………シン、何か、何かあっただろ』
「…………っ」
『言ってみぃ』
僕は昨日あったことを全部神様に話した。大都市戦のこと、アルタイルさんのこと、リッカさんと邪神のこと。
『……そのことは、誰にも言うな。【黒き剣士】にもだ』
それは、アルタイルさんの二つ名。
「どうしてですか………?」
『また、戦いが起きてしまう』
「…………!」
僕一人の軽はずみな行動で、アースリアが戦火に巻き込まれる、それは避けなければいけない。
(だけど、だけど…………!)
『辛いだろ、黙ってるのは』
「神、様………」
『儂だって辛い。冒険者にダンジョンを押しつけて……じゃが、その先に希望があることを知っておる。耐えて耐えて耐え抜け。そうすればお前は一本の剣のように、いいや、一人の英雄になる』
「英雄……」
僕が成りたい、たった一つの目標。
【剣皇進雄譚】に出てくる【剣皇ヴァラン】のように。
【暗龍護皇譚】に出てくるギルガメッシュのように。
僕は、この世界の主人公に。
それは、僕には似合わないかもしれない。身勝手な願いかもしれない。
だけど、僕はなりたい。アリアさんのために、アルタイルさんのために。僕自身に誇れる僕になるために。僕は、英雄になる。
「神様、僕は………シン・ホワイトは、英雄になります!」
『誓うか』
「誓います! 僕は、世界全ての英雄になる!」
『そうか……なら、一つアドバイスしてやろう』
「神様……?」
『死にかけるようなことがあったら、身体から何かを放出してみろ』
「何か? ……放出?」
『その時分かる』
「…………分かりました。ありがとうございます!」
――――死にたくはないけど…………
***
――そんなこと言ってたら次の日に早速これかよ!
拝啓ゼウス様。
貴方の言った通りの状況です。今僕は第十階層でスケルトンの集団に襲われています。
剣や盾を持った奴らに普通の攻撃は通用しません。僕はどうすればいいのでしょうか。
「うぁあああああああああああ!」
数体の魔石を砕く。しかし、奴らの数はそれ以上。
「はぁ、はぁ……多い…………死ぬかも…………!」
こんなところで、こんなところで………――――!
「死にたくないっ」
決意と共に呟き、ナイフを逆手に構えた瞬間。僕の前に、勝利の女神が現れた。
「大丈夫」
ランクAの最上級冒険者、アリア・フリューゲル。【マティリス・クラン】の幹部でありエース。
「アリアさん……⁉」
(なんでこんなところに………)
前に会った時もそうだったけど、どうしてこんな上の層にいるのだろう。
普通、Aが潜るのは最前線、八十層くらいだと思うんだけど‥‥。この近くには下に繋がる階段はないし―――。
だけど、そんな考え全てがどうでも良くなった。
「私が、助ける」
そう言ってアリアさんはサーベルでスケルトンを七体程殺す。一振りで…………。
「すごい……」
「シン」
「え」
(名前、覚えて――⁉)
「キミ自身の力で、切り抜けよう」
「僕自身‥‥――――はいっ!」
自分の身体に意識を集中する。イメージは、雷。一刻も早く、敵を殲滅するため。
一刻も早く、この人を超えるため―――!
ずおっ、と身体が震える。何かが溢れてくる。これが、【魔術】?
これを、放出する―――!
「―――いっけええええええええええええええええええええええええええええええっ!」
スケルトン軍団に向けた右手から、紫の雷、【紫電】が発射される。
その電撃はスケルトンの魔石を全て砕き切った。
「本当に、出た……」
「すごいね」
ふとアリアさんの顔を見ると、小さいけど確かな笑みが。
顔が熱くなるのを感じる。また、助けられちゃったなぁ…………。
「ありがとうございました。助けてくれて――」
「違うよ」
「…………?」
「あれは、キミの力で切り抜けたんだよ」
「………僕の…………力」
「【紫電】」
「紫電……?」
―――紫の、電気…………?
「あの魔術の名前、…………嫌だった?」
「い、いえっ、有難く貰います! 僕の魔術は【紫電】です!」
アルタイル・アリエル(星川鉄也)や音花新のようなチートを最初から持っているわけではないですが、この主人公【シン・ホワイト】もれっきとしたヒーローです。
応援、よろしくお願いします。




