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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

恋は盲目

作者: 84

「………こちらこそよろしくお願いします」

目を赤くして笑った陽菜はとても美しかった。

陽菜と出会ったのは颯太が大学2年生のときだった。イベントサークルの中心となり大学生活を謳歌していた2年生の春に陽菜が新入生としてサークルに加入した。

初めて陽菜を見た時に「この子と結婚するな」なぜかそう感じた。その直感は見事に的中し、すぐに意気投合した2人は交際を開始し、社会人になってからも順調に愛を育み、今日に至る。

陽菜は一言で言うと欠点がない。絶世美女というわけでもないが、誰が見ても美人と言われる容姿、国立大学に現役で合格した地頭の良さ、誰とでも分け隔てなく接することができる人当たりの良さも持っていた。そんな完璧さに惹かれると同時に、少しだけ気味悪さも感じていた。

だが、そんな小さな違和感は結婚を阻害するには至らなかった。

結婚して3ヶ月経ったある夜、陽菜が寝室にいないことに気づいた。結婚当初から颯太のいびきのうるさいことや、陽菜が睡眠の質を大切にしていたこともあり、お互いの部屋で別々に寝ていた。

「こんな夜中にコンビニでも行ったのか。」

そう思ったが、何故か夕飯の後洗ったはずの包丁が、水切りスタンドから無くなっていることに気づいた。

嫌な予感がし、慌てて陽菜のスマートフォンをGPSで検索した。すると、家から徒歩20程離れた公園に陽菜のスマートフォンはあった。自転車に飛び乗り、7分程度で公園に到着した。山に近い公園ということもあり、林になっている部分も多く、夜は人気がない。

陽菜のスマートフォンは林の奥の位置を示していた。

おそるおそるGPSが示す場所に近づくと、

「ガザ!ガザ!」と大きな音がしている。

一体何をしているのか…

颯太は草陰に隠れながら近づき、スマートフォンのカメラを起動し、ズームした。

そこには野良猫を包丁で切り刻む陽菜の姿があった。

それからどう帰ったのかあまり覚えていない。




「蓮!ちゃんとお箸持ちなさい!」

あれから6年経ち、子宝にも恵まれ長男が5歳になった。

あの出来事の後、しばらくは陽菜の目を見ることができなかった。だが、それを原因に離婚を提案することも、陽菜のことを心底嫌いになることもできなかった。

あの出来事を夢だったんではないかとまで思えるほど、その後の陽菜は今まで通りだった。

幼稚園に入学式、3ヶ月がたった初夏のある日、陽菜が残業で遅くなり、蓮を幼稚園に迎えに行くことになった。

幼稚園に着くと、蓮は運動場の隅っこで1人で遊んでいた。

脅かしてやろうと背後から近づき、声をかけようとしたとき、蓮の笑い事が聞こえた。

何をしているのだろうと、後ろから手元を覗くと、バッタやカマキリなどの昆虫を石でグチャグチャにしていた。

「あ!パパ!」

と颯太に気づき、振り返った蓮の笑みは陽菜にそっくりだった。


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