天雷、蒼空の怒り
珍しい視点でお送りします。
僕は止めました。ちゃんと、はい。一応3回くらい言いましたけど、テンション高いと周りの声が聞こえなくなるみたいですね。本当に、どうしようかと。
「美香さんが来るまでには止まるよね?」
「知らん」
「…えっと」
愛華も困ってます。そりゃそうだよね、止めようにも止めれない雰囲気だもの。
「俺の言ってること、わかるよね?」
「はい…」
「無理しすぎが良くないことわかるよね」
「はい…」
「俺は休もうって言ったよね?」
「言いました…」
目の前で淡々と的確に注意…している蒼空と、怒られて縮こまってる日菜さん。
「そもそも飯作ってくるって言ったんだから食べる場所必要だよね?みんな合わせて休憩すれば手間減ることわかるよね」
「はい…分かります」
彼の怒り方の意地悪なところは【否定できないこと】
だって全面的に正しいんだもの。肯定しか出来ないから本当に悪いことをした気持ちになる。いや悪いことはしてるんだけどね。
「ほら、早く片付けなさい。美香さん来るんだから、みんなで食べてまた再開するよ」
「はい、ごめんなさい…」
と半分くらい泣きながら言われた通りにする。なんか既視感があるなと思ったら、アレお母さんが子どもに怒るやり方だ。確実にダメージ与えるやつ。
「ちなみに愛華さん、今回は素直だったが、反骨しまくるとどんどん言葉の火力と意地の悪さが上がってくぞ」
「アナタがされたのね」
「そうだ、だからそれ以来逆らわないようにしてる」
「そして何が辛いってご飯は変わらず美味しいんだよね」
「そんなDV彼氏みたいな」
「間違ってはないよー」
と後ろからヌルッと美香さん。そして机にはなぜか既に料理が並び終わっていた。
あれ、さっきまで片付けてなかった?
まぁ蒼空だしいっか。
「申し訳ございませんでした」
「分かればよろしい、次からはご飯抜きだからな」
「有り得んくらい効く脅しじゃん」
「まぁそのおかげで有り得んくらい我々が守るようになってるからな」
「…なるほどね」
愛華、呆れないで欲しいな…周りが美味しそうなものを食べてるのに自分だけ無しとか拷問に等しいから…。
「ほら、お前らもボサっとしてないで、早く食うぞ冷めたらどうすんだ」
「「「「はーい」」」」
いつも通り蒼空の料理は美味しかった。
「わかる?」
「いやだって…」
「だって何?お前は飯より勉強の方が大事って訳か、なら別にもう作らなくていいけど?」
「それは違…」
「うと思うのか?なんだ?休憩を下に見るだけでなく飯も下に見てるのと何が違うんだ?」
「いや、その…」
「そうだよな?飯を準備するって言ってるんだからしっかり片付けはしておくべきだよな?」
「……そうだけど」
「作った側からしてみれば、作ったのに食べる気がないように見えるのも分からないか?」
「…うっ」
「それとも人に料理やらせてお前らは片付けまで俺にさせるのか?俺を家政婦かメイドか何かだと思ってるのか?」
「…思ってません」
「ならわかるよな?」
「…申し訳、ございませんでしたっ!!!」
「よろしい、はい早く片付けろ、すぐ料理が冷める」
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「ねぇ気付いたのだけれど」
「彼は休んでなくない?」
「…そうだね」
「…あぁ前回のってそういう事ね」
「ようやくわかったか」