切(雪)なる願いに、誰と泣く
ここから重くしていきます
最近は何かと騒がしい家だが本日は誰もおらず…そう俺すらも居ない。
「お久しぶりです、蒼空さん」
「はい、お久しぶりです、美香さんからの届け物はしっかりと頂戴しました」
「ええ、それはもちろん、胸元のネックレスを見れば分かりますよ」
と美香さん宅に来ていた。やはり本格的な器材があるここと家では作れるクオリティが変わる。
「確か、今回はクリスマスケーキでしたよね」
「えぇ、やはり作るなら本格的に行きたくて」
「問題ありませんよ、それより…」
「えぇ、こちらですよね、久々ということもあるのでいつもより多めですが」
レシピを渡す。やはりこういう関係は対等でないと
「…はい、本日も確認しました」
ということでケーキ作りです。1人で
聞いたところ、美香さんサイドは日帰りで旅行、愛華さんサイドはデートとの事。日菜さんに関しては知らん。
「また慣れた手付きですね」
「色々調べてますからね、あ、すみませんコレあります?」
「はい、もちろん」
とテキパキと作業を進める。
「……最近の学校はどうです?」
「会話に困った親戚の会話やめてくださいよ」
「それもそうですが、拓也坊ちゃんの近況が知りたいのも事実です」
「まぁそれもそうですね」
と流れるように会話をしながら作業をする。
「あ、コレ良いやつですね」
「はい、シェフの厳選素材ですからね」
「コレは…まぁいいか」
「変えましょうか?」
「…あぁ変えれるならお願いしてよろしいですか?」
「新米の方が試させろと言って置いたものなので」
交換前提です。そのまま使ってたら新米に笑われましたよ、と手馴れた作業で新しい食材に取り替える。
「舐められたもんですね、俺も」
「えぇ、まったくです」
と笑いつつ、微妙なモノには交換を申し出つつ作業。作業。作業。
「いい形ですね」
「まぁ任せてくださいよ」
「いつプロになってもいいですね」
「さすがにそれは無理ですって、細かいところは本職に及びませんよ」
……。
「あら、手を止めてどうしました?」
「あぁいえ、何も、少しぼーっとしてしまいました」
「ならいいのですけど」
そして数時間が経過し
「出来ましたね、毎度の事ながら素晴らしい出来栄えですね」
「お褒めいただいてありがとうございます」
「記念に撮ります?」
「いえ、大丈夫ですよ、別に俺のためじゃないんで、結局、アイツらが喜んどけばそれだけでいいんス」
「夢のないことを言わないで下さいよ、ほら、ここに立って」
「…はい」
とパシャリ。
「はい、綺麗に撮れました、ではこちらは後で贈りますね」
「はい」
まぁ別にいいか。
手が止まった時、わたしはメイドとして見逃さなかった。
アレは「苦しんでいる目」だろう。何に苦しんでいるのかなんてことは、彼の周りを見ればすぐにでも分かる。
だが、私には、いや、多分私でなくともコレは誰か一人、彼を分かってくれる人にしか対応出来ない。
だから、まぁ、私は褒めて、彼の苦しみを少し和らげることしか出来ないのだ。




