意外と未練は無くなるらしい
純愛って良くない?私ドロドロしてる恋愛とかゾクゾクしちゃって読めないのよね
家に帰り、いつも通り誰もいないリビングのソファに座る。
「はぁ…こっちは初恋が終わったってのに、よくアイツらはそんなヤツの前でイチャつけるな…」
と言いたくもない愚痴を一言。
「くそ…」
嫌な気分だ、イライラとかじゃない、モヤモヤでもない、ただ、俺にはあの人のあの笑顔が脳裏にこびりついて離れない。
叫びたい気持ちを抑える。少なくとも俺にはあんな風にあの人の笑顔は出せない。
ダメだな。思考が落ちる。
「無理なんだよな、何もかも」
まさに脇役に相応しい、主人公なんて拓也に任せとけばいい、愛華さんと付き合うヤツもそりゃ主人公になれるんだろうが、俺には無理なのはもう証明済みだ。きっとあの笑顔を出せるやつもまた物語の主人公なのだろうよ。
この世界のそこら辺に埋もれる学年一の美少女に振られるだけのモブ、主人公の取り巻き程度にしか認知されないタイプのただの…
「くそ…くそくそくそ、俺だってアイツみたいに主人公になりてーよ…でも、何も無い、何もだ…あぁ、疲れちまった、俺に幼なじみみたいなのが居たら、俺もまだ主人公になれたんかな…」
いや、どうせ無理だろう、ひとりっ子で一人暮らしの、あまり裕福じゃないだけのただの一般モブだろうな、幼なじみなんて小説じゃないんだから…いや、仮に居たとしても……
「あんなやつ、幼なじみじゃねーよ」
アイツとは関わってないんだ、幼い頃は仲が良かっただけ、そうだ。腐れ縁すら断ち切れてる。
ひとり虚しくつぶやく
「はぁ…」
そういえば、意外と俺は他人に興味無いのかもしれないな、1回振られた程度でこうも恋愛に興味が無くなるのか、と自分でも驚く。
明るく振る舞うのも1人の時はしなくていい、気が楽だ…っていかんな1人だとどうにも思考が落ちてしまうな…
まったく、鍵持ちのひとりっ子とかだと皆こんな感じなのだろうか…
気分転換に散歩でもするか。
と外に出たはいいが、何かする訳でもなく、月も昇りそうな静かな街を歩く。
「公園…もう誰も居ないな」
不意に通り過ぎた公園で時間を潰そうと公園内に入る。
昼間や夕方はここにも色んな子たちの喧騒に溢れるのだろう。
「役目を終えた奴らは皆静かに散っていくんだ…ってなんだ俺は最近やけに詩的だな…」
振られるとこうなる副作用でもあるのか?
…とそんなことを考えれば、なんだか思考が戻ってきた気がする。
帰ろうかと思ったが、まだ心は帰りたくないようで足を上げようにも力が入らなかった。
それから何分たっただろうか、10分…いや30分は経った気がする、もう月が地面を照らすほどになっていた。
「さて、帰るか…」
重い腰を上げる。
軽く周囲を見渡しつつストレッチをする。走る訳じゃないが先程まで同じ体勢だったのだからほぐす目的だ。
「ん…?」
見慣れた背中を見つける、あれは、よく目で追っていた背中だ、要するに氷姫こと氷川さんである。
「この時間に帰り?」
と思ったがどうやら買い物帰りのようで月明かりに照らされて手元に白い袋が見えた。
偶然とはいえ中々いいものを見たな、と、俺はそのまま帰路に着いた。
偶然彼女の陰にいた見知った男がいた事に俺が気付くことは、幸か不幸か、なかったのだった。
大塚拓也
大塚財閥という、まぁそこそこ名のある財閥の一人息子、金はあるがひけらかさず、金持ちみたいな振る舞いを一切しない、というか別に親が金持ってるだけで俺は金持ちじゃない、と素で言う純粋なイケメン
実際親から金は一般学生の小遣いよりちょっと多め程度にしか貰ってない、家の力があるのが嫌で一人暮らしをしている。
これまた主人公の素質しかない男、美香とのいちゃラブだけは歪みなくバカップル